赤い砂を踏みしめて近づいていくごとに、その謎の塔の姿が現れてきた。
これまでどんな本でも見たことがない、「塔」というにあまりにいびつなそのシルエットは、赤く濁ったそらをそこだけ黒いシルエットで切り取っている。
「おーい!」
あんな得体のしれない建物に弟がいるわけがない。それでも、僕の喉からは勝手に弟を呼ぶ声がほとばしった。
黒くそびえ立つその塔のような建物に、僕の声ががらんどうのように響く。やっぱり、こんなところに弟がいるわけがない。
踵を返そうとしたその時、夢でしか聞くことのできない声がかすかに聞こえた。
「っ!」
慌てて振り向いて、塔の真下にまで駆け寄る。
赤い空を突き抜けるようにそびえ立つ塔の、その中ほど。
ぽっかりと外壁に空いた、窓とも言えない開口部。
そこに――弟がいた。