「おれ、夏休みの宿題はすぐやる方だったんだから」
「おれ、今年は宿題7月中に終わらせるって決めてるんすよ!」
黒板の下の、チョーク受けが鳴った。短くなったチョークを教卓の紙の上に一つずつ退かし、先生は指先を擦り合わせた。
「俺に手伝ってもらって、だろ」
「はい!」
「元気でよろしい」
表にでていたやつを片付けた次は、小さな引き出しを掴む。とっかかりが外れる金属が擦れる音と、中でチョークの転がるカラカラとした音が同時に鳴った。
夏休み前、昇降口前廊下の掲示板にはところ狭しとお知らせが並ぶ。留学、検定、夏休み中のイベント、見学会や説明会といろんなテイストのチラシやポスターが隙間なく貼られた。
その中の、ちょうど俺たちが靴を履いて歩き出す突き当たりにそれはあった。
「『五教科夏季学習会 夏休み始まり〜お盆休みまで 各担当の先生が指定した日に行います。夏課題の相談、受験対策、定期考査解説など』」
「渡会知らねぇの、今年監督課題点検やるってよ」
「うそぉ」
「嘘ぉじゃねぇよ、去年やばかったから、今年夏休み終わる前にやるって」
「一人やってない毎に校庭タイヤ引き五往復追加だと」
「」
「お前くらいだぞ、俺の課題の補習に来るのなんて」
指先の粉が付かないように手首の付け根に頬杖をつく
「おれもびっくりしました、まじでおれしかいねぇ!と思って」
「週一で集めてるワークそのまま出してるだけだからな、理科の課題」
「でも教えてくれるなら得じゃないっすか」
こつ、こつ軽く丸い音がしておれの目の前に白、黄色、の塊が並ぶ。
「『お父さん、お花やさんね』』」
「え、おれがすか」
「やっぱりもうわかんないか〜、ジブリよ」
「あ!わかるっすわかるっす!隣に立つやつでしょ?」
「やめろよ精霊をいちゃいけないものみたいな言い方すんの」
「ワークやらないんですかぁ」
「わからないこともう一度なぞっても無駄なので、教科書から」
「はい」
「渡会が読んでから、私がいくつか質問するので、それがわからなければ解説します」
「はい」
「その章が終わったらその分のワークをやります、期間は四日」
「おお!」
「塚本せんせえ、鉛筆転がしちゃダメ?」
「このご時世に言えないことばが浮かぶぞ渡会」
「雲雀、出掛けるの?」
「補習受けてくる、セラおは?」
「俺は走り込みに行くけど、真面目だね」
「何回かあるの?」
「」
「雲雀も行くでしょ」
「うん」
「」