悪夢の残滓を引きずることももうなくなっていた。淡々とシーツを剥がし、壁面スクリーンを透過モードに。
透明になった壁面の向こうに広がるのは――漆黒の闇。無限の虚無。宇宙。
ここは[[rb:辺獄 > リンボ]]。
敵対生物「[[rb:悪魔 > トイフェル]]」の侵略圏と人類の生存圏の、その狭間。
天国と地獄の狭間。それがリーチェたち「リンボの騎士」の住む世界だ。
いつからなのかは、誰も知らない。
突如として地球圏に侵攻してきた敵対生物「[[rb:悪魔 > トイフェル]]」。
これに対抗するべく組織されたのが、対[[rb:悪魔 > トイフェル]]機動兵器「ハビット」とそれを駆るパイロットによる戦闘機動部隊だった。
対話不能、正体不明の怪物の群れの侵略を人類軍はかろうじて押し戻し、絶対防衛ラインの無効に追いやるのに十数年をかけた。
その絶対防衛ライン、すなわち天国と地獄の間で戦う騎士たちは、いつしか辺獄を通じて溢れ出ようとする悪魔たちを食い止める聖なる騎士、「リンボの騎士」と呼ばれるようになっていた。
そして、リンボの騎士たちは今日も戦い続ける。
『聖なるかな。聖なるかな。聖なるかな』
サファイア中隊全員が聖句を唱えると同時に戦闘宙域に[[rb:聖灰 > ビブーティ]]が散布され、充満しつつある邪気を押し戻す。
「サファイア1から各機へ。[[rb:使い魔 > ファミリア]]には構うな。敵陣後方のブエル級から落とし指揮系統を破壊する」
『了解!』
リーチェの指示にサファイア3からサファイア6までの全機が応じ、[[rb:楔形陣形 > アローヘッド]]を組む。
――そこに、コールサイン・サファイア2はいない。コールサイン・サファイア1、リーチェの僚機はいない。
[[rb:戦闘薬 > エリクシル]]の作用でも消えない、宇宙の闇よりも深く黒い欠落感。
黒い[[rb:耐圧服 > カソック]]の上から巻いた、赤いリボン。それだけが、かつて同じようにリボンを巻いたたったひとりのパートナーの残り香だった。