拗れて縺れて千切れる前に
スカートの丈は長め。これだけは譲らなかった。
罰ゲームとはいえ、コスプレをするのなら完璧をめざしたい。中途半端な仮装で笑われるぐらいなら、完璧な道化になって魅せつけてやる。
意気込みだけは熱く、空回っているかもしれないが後悔はない。──…例えそれが、不本意な屈辱の女装で、しかもひらひらフリフリ多めのメイドコスだったとしても。
「──…ッ、よし!」
気合を入れ直して、蹴破る勢いでドアを開ける。思いっきりドアを開けたというのに、部屋の主は寝汚く布団の中でまるまって眠り続けている。
眠っているのなら、逆に好都合だ。
さっきとは打って変わって、物音を立てないよう高いヒールの靴を脱ぎ捨て、ゆっくり、物音を立てないよう注意しながらベッドへ近付く。床を滑る、タイツの感触がつるっとしていて不思議だ。
脛毛は剃った。生足か、短く白い靴下だと思っていたのに、用意されていたのは予想外のタイツだった。せめてニーハイソックスだろ。……いや、ガードルには男のロマンがあるので否定はしない。タイツを履くので意味のない犠牲だったが、脛毛があろうがなかろうが己の価値が変わるわけではないので痛くも痒くもない、……たぶん。男として、大切な何かを失ってしまった気がするけれど。
ヘッドドレスは拒否。エクステなどで髪を伸ばせると他のメイド達が騒いでいたが、さすがに俺じゃなくなりそうなので、化粧も断固拒否した。
白いシャツに黒いクラシカルなスカートはミニスカートではなくロング。ふわっと歩くたびに揺れ動くこのスカートの中には夢が詰まっている。歩きにくいけど、夢のために我慢だ。
「……」
ガシッと、歩きにくさを軽減するためにスカートをわし掴む。夢が丸見えかもしれないが、履いている高杉には夢も何もあったもんじゃない。すべてを終わらすため、一歩、また一歩、銀時が眠っているベッドへと近付く。
「…………くすぅ…」
布団の隙間から見える寝顔は可愛い。寝息も犯罪級に可愛いすぎる。罵詈雑言しか吐かない口と同じとは思えない。眠っている銀時なら、ずっと眺めていられるのに。
──ふわり。高杉はベッドに躊躇なく乗り上がると、銀時に跨るよう腰を下ろす。膝立ちの状態なので銀時に力は掛かっておらず、身動きが取れないぐらいで高杉の存在には未だ気付くまい。
「……人の気も知らないで、呑気に寝やがって」
幸せそうに眠り続けている、ほんのり赤い唇にキスをひとつ。
隙間に舌を入れなかったのは、高杉なりの優しさだ。
「オハヨウゴザイマス、ゴシュジンサマ」
誰にも聞こえないよう、銀時の耳元で囁いてやる。
執事改め、銀時専属メイドになった高杉の逆襲はこれから始まるのだから。