向坂椋は惚れっぽい。
それは現実的な恋愛の話ではなく、物語の中のキャラクターに対して、であるが。
「はあー……今回の『内緒のキッチン~私のヒーローはいつもエプロン姿~』のタカオミくんも素敵だったなあ」
今日の椋は、買ってきたばかりの新刊の主人公にうっとりとしている。
「タカオミくん……部活の寮の料理番で、いつもヒロインのことを美味しい料理で励ましてあげて、危ない時には元ヤンの威力を発揮して助けてあげて、すごく優しいのに時々年上青年の魅力を発揮してきて迫って、でも無理強いはしなくて……はあ、すごくカッコいいなあ。憧れちゃうなあ」
同室の一成がいない部屋で主人公の魅力にどっぷり浸る椋。と、扉がノックされて一成が顔を覗かせた。
「むっくん、新刊読み終わった? おみみがちょーデリシャスなクロワッサンのチョコサンド作ってくれたから、むっくんも食べない?」
「あ、ありがとうカズくん。すぐ行くよ」
椋は笑顔で立ち上がって一成と共に談話室に向かった。そこには、他にも幸や太一、十座や三角もおり、みんなの机の前に焼き立てのチョコを挟んだクロワッサンがたくさん置かれていた。
「お、椋も丁度良かった。今焼きあがったとこだから、良かったら味見してくれ」
「はい! ありがとうございます」
椋もみんなと並んでチョコサンドを頬張る。さくさくの生地に挟まれていたのは生チョコで、口に入れた瞬間とろっと溶ける甘さが堪らなかった。
「んんー! 臣さん、すごく美味しいです」
「はは、良かった。今日はパンをたくさん焼いたから、おやつにもどうかと思って生チョコ板を作って挟んでみたんだ」
「焼き上がりのクロワッサンに生チョコだなんて……すごく贅沢なおやつですね」
心から幸せそうな椋の笑顔に、臣もつられてにっこりと笑う。
「椋がそう言って喜んでくれるのが何より嬉しいよ」
「!」
その臣の言葉に、目を丸くする椋。その台詞は、先程漫画で読んだタカオミのものに非常によく似ていた。
(……思えば、タカオミくんと臣さんて、ちょっと、ううん、かなり似てるかも……!)
寮の料理番で、団員のみんなを美味しい料理で励ましてくれて、元ヤンで、すごく優しい……名前もちょっと似ている。
「…………」
そんなことを思いながら臣を見つめていると、臣が椋の視線に気付いて首を傾げた。
「ん? どうした、椋? おかわりがいるか?」
「あっ! いえっ、なんでもありません!」
慌てて手を振る椋に、向かいに座っていた十座が「椋。おかわりいるなら俺のをやる」と自分の持っていたチョコサンドを椋に差し出した。
「あ、ううん、大丈夫だよ! ありがとう、十ちゃん」
「あはは、十座は優しいな。大丈夫。まだたくさんあるから、2人ともおかわり食べていいぞ」
「ありがとうございます」「うっす。あざす」
臣の笑顔に、やはり椋はタカオミを思い浮かべる。結局そのまま幸以外はみんなおかわりをして、それぞれ用事に戻っていった。キッチンで後片付けをしようとする臣に、椋は手伝いを申し出る。
「いいのか? 料理の後片付けもまとめてやるから、別にいいぞ?」
「いいえ、ボクがやりたいので。お邪魔じゃなければやらせてください」
「それは勿論、俺は助かるよ。ありがとう椋」
「」
「」
「」
「」
「」
「」
「」
「」
「」
「」
「」
「」
「」
「」
「」
「」
「」
「」
「」
「」
「」
「」
「」
「」
「」
「」
「」
「」
カット
Latest / 34:58
カットモードOFF
文字サイズ
向き
チャットコメント通知
【3/6は臣椋の日】向坂椋は惚れっぽい
初公開日: 2024年03月05日
最終更新日: 2024年03月05日
ブックマーク
スキ!
コメント
【3/6は臣椋の日】ということにして笑。
むっくんが不意打ちで臣さんに少女漫画エチュード(?)仕掛けられるお話