大晦日の夜、鬼太郎を寝かせた水木とゲゲ郎は年越しそばを食べながら今年を振り返っていた。
「…それにしても、やっぱり一番今でも思うのはまさか妖怪とその赤子と暮らす事になるなんてな」
 
今年の夏、水木とゲゲ郎は出会った。ゲゲ郎はその時妻を探していて様々な困難を乗り越えてゲゲ郎と妻は再会、その後水木の協力もあってゲゲ郎と妻の岩子は人里離れた場所で暮らしていたが、捕まっていた間の体力を十分回復していない状態で鬼太郎を出産したせいで出産後そのまま岩子は儚くなった。
ゲゲ郎から妻が子を産むと聞かされ水木はお産には立ち会わなかったが、外で子どもが産まれるのを待っていた。
この時産声が聞こえてホッとしたが間もなく「岩子!岩子!」とゲゲ郎の鬼気迫る声が聞こえて、もしやと思って水木はお産部屋に入るとやり遂げたと誇らしげに笑って目を閉じる岩子、それに泣きながら岩子の手を握るゲゲ郎を見て全てを察した。
その後、子ども-鬼太郎-が眠ったのを見計らってゲゲ郎と水木は岩子の墓を作り岩子を埋めた。そして憔悴しきったゲゲ郎を置いて帰るのも忍びないと、水木は落ち着くまで家に来るかと聞いて現在に至る。
未だにゲゲ郎は岩子を想って泣く事があるが、家に来た当初は鬼太郎の世話すら出来ない程嘆き悲しんでいて、この時は見かねた水木が右も左も分からない状態ながら鬼太郎の世話をしてた事を思うとだいぶ回復してきたと思う。
水木はそれを思い出し揶揄うように言うとゲゲ郎は唇を尖らせた。
「仕方ないじゃろう。妻を喪ったばかりじゃったのだから」
「それでも赤子の世話を疎かにしちゃダメだろ。あの時もし俺が居なかったら下手したら鬼太郎も喪ってたかもしれねえぞ」
「なんじゃと!?」
「冗談だよ冗談。…半分は」
「水木!?」
「ふぁ…そろそろ寝るか。朝日見るんだろ」
「おお、そうじゃな。あまりワシらが遅くまで起きていて鬼太郎まで起きてしもうたらイカンからの」
水木とゲゲ郎が布団に入り少しすると水木から寝息が聞こえてきた。大晦日とはいえ水木は今日も出勤していて、水木曰く年末のこの時期は特に忙しいそうで、現に水木はいつもより遅く帰ってきた。
一方ゲゲ郎は、水木に合わせて布団に入り目を閉じていたが水木が寝たと察すると目を開けた。
「…やはり、お主らは水木を連れて逝きたいのか」
水木は気付いていないが、水木は例の村の村人の霊が取り憑いている。ゲゲ郎は最初から気付いていたが始めはただの霊だからと無視していたが段々と悪霊になり、今日になってほんの一部だが妖怪化している霊もいてこれ以上はマズイとゲゲ郎は霊に声を掛けたのだ。
「…」
「そうじゃな。水木の魂はワシらからすると極上じゃ。食わずとも、傍にいるだけで心から満たされ力も満たされる」
「…」
「だから連れていきたいと?水木がいればあの世でも幸せに過ごせそうじゃと」
「…!」
「駄目に決まっておろう。水木はワシのモノじゃ。魂は当然のこと彼奴の【人としての】時間をもワシのモノ。お主らが勝手に水木を【人として】殺すな」
「…!」
水木に取り憑く無数の霊はゲゲ郎から逃げようとするが、掴まれてしまった。ゲゲ郎は組紐に念を込めると組紐は霊を縛り付けた。
「…!」
「成仏しようとするな。そうやって逃げようとしても無駄じゃ。…お主らはここで去ね」
「…!!!」
命乞いするが組紐は容赦なく霊を締め付け、最期は霊の中心から強い光が溢れ光が収まると綺麗さっぱり全て消えていった。光は眠っていた水木にも感じたようで小さく呻き声を出しながら半目を開けた。
「…ん?さっき光らなかったか?」
「車の光ではないか?」
「そうか?」
「ほれ、まだ起きるには早すぎる。眠れ」
「ん〜」
水木は鬼太郎の布団を掛け直し自身も掛け直すとまたすぐ眠った。ゲゲ郎はそっと布団から抜け出しこっそり水木の煙草を一本取ると火を付けた。
「人間の文化はよく分からぬが、死んだら線香をあげるのじゃろう。線香は無いが煙草ならあるからこれで良かろう」
ゲゲ郎は夜空に向かって煙草の煙を吐き出した。
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2023年12月30日第6回父水ワンドロ【年越しそば】
初公開日: 2023年12月30日
最終更新日: 2023年12月30日
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2023年12月30日第6回父水ワンドロ【年越しそば】が出来るまで