〇〇博物館には美しい紫色に輝く宝石が展示されている。この宝石は海の底で発見されあまりの美しさから大金持ちの商人からある王室にさえ所有された事がある。そして、そういう美しい宝石ならではの恐ろしいエピソードもあり、それはこの宝石には精霊が宿っているという話だ。
精霊にもし会えたならどんな願い事も叶えてくれるという伝説がありこの紫色の宝石を手に入れた者は皆精霊に会おうと必死にお祈りをしたり謎の儀式を繰り返したという。結論を言えば誰一人精霊に出会えたという人物はおらず、宝石の価値を高める為のエピソードの一つとして現在にまで語り継ぐされている。
博物館で所蔵されている紫色の宝石であるが、ひとたび展示されれば誰しも宝石の美しさに魅了され必ず一人は買収の交渉に持ち出す者が現れる。数日前にもある大金持ちの男性が宝石を買い取りたいと願い出たが、あっさり断られけれども諦めきれない彼は繋がりのある裏組織の人物にコンタクトを取り、今夜その人物は美しき紫色の宝石を手に入れようと動き出した。
「これがあのオッサンが欲しがった紫色の宝石か…。確かにこれは欲しくなるな」
厳重な警備システムで守られていた宝石だが、彼の前ではこのシステムも無意味だとあっさりと宝石を盗み出し、現在彼は依頼人である男性が来るのを待ってる状態だ。彼は依頼人が来るまでの間紫色の宝石をじっくり観察していて、見れば見るほど魅了されていると分かってはいるが目が離せなかった。
「ん〜絶対無理だって分かってるが、一回だけ交渉してみようかな?いや〜あのオッサンなら、これ欲しいって言った時点で殺してきそうだな〜」
ジーッと宝石を見ていると、中心辺りが青みを増しているような感じがして男はより目に近付けて観察するとやはり綺麗な紫色だった筈の宝石が青くなっていて、もしかして体温で変質する宝石だったのかと手を離してしまった。だが、下はアスファルトの地面で、しまったと思った男は手を伸ばすが間に合わず宝石を落としてしまい、粉々に砕け散ってしまった。
「あ、あ…!しまった…どうしよう…?!これは逃げるしか…」
男は逃げようと思ったその時、宝石が落ちた部分が小さく輝き、光が集まりやがて一つになって光が治まると派手な格好をした男性が座り込んでいた。
男の格好は、まるでピエロで、服装や顔もピエロらしく化粧され赤く丸いーまるで先程まで持っていた紫色の宝石みたいなー付け鼻をしている。ピエロの男は一体何が起こったのか分からないようで辺りを見回していて、彼と目が合っても何も言わなかった。一方逃げようとした男は、突然現れたピエロに声は出なかったが心の底から驚き男も男で何も言わずただ無言の時間が流れた。だが、ピエロの男は段々状況を理解してきたようで、突然ハッとした顔をすると徐に立ち上がり逃げようとした男に突然握手を交わした。
「派手に礼を言うぜ!突然シャンクスが現れたかと思ったら何か石を当てられてよ。で、当たったと思えばいきなり眠くなって気付けばここに居たぜ!」
「は、はぁ…」
「…ん?うお!何だあの派手にデケエ建物!それにここ何処だ!?カライバリ島じゃねえのか!?」
「カラ…聞いた事ない島の名前だ」
「嘘だろおい!?な、ならこのバギー様の名前は?お前おれ様知らねえか?四皇のバギー様だぞ!」
「バギー?よんこう??」
「オイオイオイ!本当ここ何処だよ!」
「ここは日本ですが…」
「にほん??どこだ?新世界にあるのか?」
「新世界?」
「待て待て…もしかして…スッゲー田舎の島か?東の海じゃ聞いた事ねえから、それ以外西か北か南か…クッソーシャンクスが居たら問い詰めてやったのに!」
「えっと」
「あーあ。出ちまったか」
「っ!!」
突然強い殺意を感じ男が振り向くと赤い髪に隻腕の男が笑顔を向けながらこちらに向かってきていた。だが、片方しか無い手には人間ー依頼人の大金持ちの男ーを引きずっていて、引きずられているのにピクリとも動かなかった。
一歩でも動いたら殺されると本能的に感じた男は息すら止めて動かなかったが、ピエロの男はズンズン赤髪の男に近づいた。
「テメェシャンクス!よくもおれ様に石当てやがったな!しかも気絶したおれ様をよく分かんねえ所に連れて来やがったな!」
「…ハハハ。お前にしたらそういう認識か。まぁ変に勘づかれるよりかマシか」
「どういう意味だ?」
「知らなくて良い。…さ、もう一回眠っててくれ」
シャンクスと呼ばれた赤髪の男はガラス玉のような透明の石をピエロの男にそっと当てた。するとピエロの男は光に包まれてピエロの男の姿は消え、代わりに透明だった石は青くなっていた。赤髪の男は愛おしそうに石に唇を落とし大事に懐に仕舞い、次に男の方を見た。男を見る目はとても鋭く、どう考えても助からないと察してしまった男は赤髪の男に背を向けて走り出した。
「嫌だ…死にたくない!誰か…!」
だが、重い何かが背中にぶつかり倒れこんでしまった。男は何が当たったのだろうと振り向くと依頼人の男で、生気のないぐったりした顔と間近で目線が合い半ば発狂した叫び声を出しながら無我夢中で暴れて背中から男を退かすが、今度は剣が手を貫き地面に縫い付けられてしまった。
「痛い痛いいたぃぃぃ!!!」
「悪いなぁ。アンタにゃ恨みは無いが…海賊が大事にしてるモン奪おうとしたからな」
「え゛」
「石とはいえバギーに触れたからな。殺されても仕方ねえよな」
そう言って赤髪の男は明るい笑顔を向けたまま剣を男の首目掛けて
『今朝のニュースをお伝えします。昨夜〇〇博物館から美しい紫色の宝石が盗み出されました。警察は窃盗と見て詳しく捜査しています』
『そして、昨夜二人の男性遺体が発見されました。二人は鋭利な刃物で斬られており警察は殺人として捜査しています』
ある海辺で赤髪の男が海の方へ歩きながら青い宝石を手に取って語りかけていた。
「なぁバギー。あれからどれだけ時間経ったんだろうな。もう誰一人俺達の事…いや、俺達の時代を知っている奴ら居ねえや。もう、海賊王だとかワンピースだとかはだーれも知らないんだぜ。信じられるか?…そろそろ俺もそっちに行かせてもらうぜ。またずっと二人で気ままに過ごそうぜ」
赤髪の男がそう言うと大きな波が打ち寄せ男を飲み込み男の姿は消えて紫色の宝石が暫く海を漂いやがて底へと沈んでいった。
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