「…は?ネクタイくれるのか?」
「うむ。日頃世話になっておるからその礼じゃ」
ある日の事、仕事から帰ってきた俺にゲゲ郎が満面の笑みを浮かべながら不格好に包装された細長い長方形の箱を渡してきた。中身は分からないがどう見てもプレゼントだと分かり、一瞬誕生日だったか?と考えたが俺の誕生日はまだまだ先だ。他にプレゼントを貰える理由が思い浮かばず首を傾げると段々とゲゲ郎の顔がションボリとしてきた。
「ワシからの贈り物は要らぬのか?ううぅ…折角ワシ自らが頑張って作ったのに…」
「え?ゲゲ郎自ら作ったって…包装だけじゃなくて、中身もか?」
「当たり前じゃ!お主に贈り物をするのにそこら辺の店で買った物なぞ渡せぬっ!」
「そこまで言いきらなくても…。なら、遠慮なく貰うぜ」
「勿論じゃ」
「ここで開けていいか?」
「いいぞ」
ゲゲ郎の許可を貰って包装紙を破らず慎重に剥がして、箱を開けるとそこには白いネクタイが。触ってみると非常に触り心地が良く、光沢のある生地からもしかしてシルクかと思って慌てて箱を閉めた。
「こ、こんな高価なもん受け取れねえよ」
「何故じゃ?それに高価でも何でもないぞ」
「これ、シルクのネクタイじゃねえのか?」
「しるく?」
「…絹で出来たネクタイじゃねえのか?」
「まさか。それは絹ではない」
「そうなのか?なら何の生地で出来てんだ?」
「秘密じゃ」
あぁ、何て愛いのじゃ。珍しそうな目で水木はネクタイとやらを触っておる。
ここ最近水木が着てる服装の者を多く見かけるようになったから人間社会に溶け込んでいる妖怪に聞いたところ、今はスーツというのを着て仕事する男が多いという。そして、最近の女子は男にネクタイを贈るのも多く、その理由は毎日身に付けてくれるからだと。
それだけ聞くと健気そうに聞こえるし実際健気な気持ちでネクタイを贈る者が大半じゃが、中には泥のような執着心を持ってネクタイを贈る者も居るらしい。現に話を聞いた妖怪もこういう執着心は好物だと笑っていた。じゃがワシは人間の気持ちにおぞましさを感じるでもなく、話を聞いた妖怪と同じ気持ちになる訳でもなく、心に残ったのは、『何て素晴らしい考えなのだろう』じゃった。
ワシは水木を好いておる。誰よりも水木を愛していて、誰にも水木を渡す気はない。
じゃが水木は、無愛想に見えて意外と優しい性格をしておるから人間にも妖怪にも好かれておる。このまま水木を放っておいたら何時横からかっさられるか分からぬ。丁度どうすれば水木に知られずに水木はワシのモノじゃと分からせられるか悩んでいたところじゃったからこのタイミングでこのような話を聞けたのはとても有難い。ワシは早速行動に移した。
あぁ水木。そのネクタイ気に入ってくれたかの?
ワシの髪の毛で編まれたネクタイは。
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#父水版ワンドロワンライ 1/20(土)第9回のお題 【ネクタイ / 帯】
初公開日: 2025年08月10日
最終更新日: 2024年01月20日
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