「ねえねえお兄さん、どこに行くんですか?!」
「私たちもついていっていいですか!?」
「え、えっとな…」
待ち合わせ場所に着いたら、恋人がどえらいことになっていました。
見知らぬ愛情(仮タイトル)
――――現在の状況を整理しよう。
どこにでもいる(????)男子高校生、鳴宮湊は、この度めでたく結ばれた恋人であり師であり愛おしいあこがれの人たる滝川雅貴と、デートの約束をしていた。
それだけでも相応に踊りだしたい状況ではあるが、しかしそれだけに状況は収まらない。
つまり、湊にとってはとてもうれしいことに、白昼堂々、家とは少しだけ離れた都会への小旅行(?)、
過去のトラウマ云々から列車で行く車で行くで一時間程議論が紛糾したが、それは遠い過去の話(約一週間前)である。
因みに決まり手は、小さく上目遣いした雅貴からの「…したくなったらいちゃつけるぞ?」である。
とってつけたようなぶりっ子しぐさに純情無垢でピュアな男子高校生の心臓が寸分たがわずがぶち抜かれたのが敗因だったというほかないが、それはそれとしてこういう状況に相対するたびに、今までの自重自粛の日々は何だったんやという気持ちと貴様さては相当に経験もしくは遊びの機会があったな???
という複雑怪奇な気持に見舞われもまれ相殺し合い最終的に凪いだ海のような心で自宅の天井を眺めるのも一回二回の話ではない。
が、それはまあ、さておき。
そうして、二人は都会へと繰り出した。
車を止め、近くの公園にでも寄ろうかしら、なんて算段をつけながら、湊は見知った駅とは何もかもが違うメガシンカ駅をきょろきょろと見て回る。
車を止めている間は、湊は何もできない。
ついでだから、と飲み物を買って、此処で待ち合わせをする…
予定…
なの、だが。
否、だったのだが。
「お兄さん、すごくかっこいいですね!!!」
「あ、あの、お名前って…」
「すいませんデート!デートしてください私と!!!!!!!」
「は、はは…」
災害に見舞われている被害者を発見した。
間違えた、女子高校生に囲まれている恋人を発見した。
本来であればこのような事象に遭遇し、目の前で美しい恋人が他者に言い寄られるとなれば、嫉妬に駆られて、そうでなくても焦りで、飛び出してしまうこともおかしくない。
分かっている。というか、湊もそうしようとした。
それでもそうしなかったのは、簡潔にいうと理由があったからだ。
もっと言うのであれば―――…
「お兄さんお兄さん!モデルとか興味ありませんか!?」
「電話番号とかは…」
「ベッド行きましょうベッド!!!!!!!!!!!!!」
「は、ははは…」
なにあれこわい。
鳴宮湊は花壇にさっと身を隠した。
女子高校生というのは、男子高校生にとって、一種聖域のようなものだ。
何をすればいいかわからないし、何で喜ぶのかもわからない。判断をミスればつるし上げられて社会的に死ぬし、話そうにも何を話せばいいのかわからない。少なくとも弓の話ではないのは確かだ。
昨今の風潮も相まって、気軽に話しかけられるかと言われれば不承不承首を横に振るほかない。ふがいないが。
とはいえども湊の、ひいては風舞高校弓道部、そしてその周辺にいる女子高校生たちはそんなことはない。
あくまでも全体的に、そういう苦手意識がうっすらとある、というそれだけの話で、それだって苦手というよりは、少しのためらい程度のものだ。
話そうと思えば話せるし、善いことが起これば手放しに祝福できる程度の物。
弓道最優先の人生であまりそういった立場で話すことが無かったというだけで、一応話すこと自体はできるのだ、そういうものだった。
だが目の前の光景はそれらを容易に越していった。
言葉の一つ一つにはきらめきが、呼吸の一つ一つには隠しきれない高揚が、
その目のきらめきには、まるで鼓動の輝きさえ見えるようだった。
それはまさしく、|この世のすべての体現恋する人そのもの。
魂から発されるそのキラキラに叶う現実など何もない。
そんな、漫画やドラマに出てくるような人。
しかし、その輝きが人生を謳歌するためではなく、獲物を捕らえるために全て使われるとなるとシャレになっていない。
その獲物が自らの恋人ならばなおさらにである。
「っていうか三人で遊びませんか!?」
「あの、デッサンモデルとかって…」
「どっちがいいですか!?受け!?攻め!?」
「えっ…と…」
ワア、見てください皆さん。
あんなたじたじなマサさん見たことない。
雅貴は普段よほどのことがない限り…そう、例えば女子生徒にうっかり触れてしまったところを新聞部的なところに見られたり…しない限りは、めったにうろたえない。
厳密には表に出ることがないだけで、うろたえたり惑ったりすることは割とあるのだが、表面上は平静を装える。
そんな彼がこうである。
風舞高校弓道部に共有したら一大事だと蜂を突っついたような騒ぎになるのは目に見えていた。
まあするつもりはないが。
普段ならやるが、今日はデートなのでね。
閑話休題。
それにしても、いったいどうしたものだろうと、湊は頭を働かせた。
発言内容については今は突っ込まない。この非常事態に、割けるリソースはあまりない。
とはいえ無策で突っ込んだらおそらく二人そろってどこかにドナドナされる未来が目に見えているわけで、さてどうしたものだろうか…と、
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こういうやつが見たい① 湊マサ
初公開日: 2023年10月25日
最終更新日: 2023年11月08日
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コメント
ナンパ撃退シチュだけど撃退してないです。よろしくお願いいたします。
ただ覚えた言葉をTPOに合わせて言っていたり、ただ虚栄を貼っているだけならともかく、
全人生を賭けるつもりで行っていると「こちらも抜かねば…無礼というもの…」
作中の女子高校生たちは大体そういう感じです。多分娶っても、人生懸けて幸せにしてくれるはず。多分。