※この物語は|IFストーリー《フィクション》です。
ありとあらゆる全てと一切の関係がありません。
※湊マサです。
「マサさん、ごめんね今日泊まっちゃって。」
「ん、いいぞ。風邪ひかれたらまた病院に行かなきゃだしな?」
「もう、熱出したのなんていつの話だよ!」
「…1,2か月前…?」
「ぐう…」
「ぐうの音が出ちゃったか…。」
冬の信州の雨は骨の髄にしみいるように冷たく、それが小雨でないならなおのこと。
いつもは頼もしい相棒である自転車も、さすがに風雨からは主人のことを守れない。
男子高校生、たくましさと多少の無茶など代名詞でしかないようなものではあれど体調を崩すような事柄に積極的に背中を押すのは先導者の端くれとして見過ごせない。
ということで、夕暮れ、扉を開ける後ろ姿を引き留めたのは雅貴からだった。
幸いというべきではないが、師弟関係と待ち合わせ場所である夜の弓道場との位置関係上、これまでも何回か泊めたことのある我が家だ。
恐らくこれからもちょこちょこ泊まることになるだろう。
褒められたことではないが、今更1回回数が増えたところで問題ないというのが正直な言い分だった。
何よりも、雨に濡れて帰るのは不愉快だろう。
それは湊も同じだったのか、そして親も同じだったのか。
手慣れたように電話の向こうから許可を得て振り返る彼の顔は、心なしかぱっと輝くようだった。
「ほら、そろそろ風呂入ってこい、明日休みだからって自堕落は褒められないぞ~?」
「わかってるよ、もう!子供みたいな扱いやめて!」
「まだまだおこちゃまだろ~?未成年なんだからほれ、甘え蕩けとけ」
「…成人の年齢、18歳に是正されたけど」
「えっ」
そんな犬も食わないような軽い小突き合い。
すこし近すぎるようではあっても、おかしくはない程度の距離感。
その程度でしかないじゃれ合いで、その程度でしかない戯れで、湊は部屋を後にした。
廊下は真っ暗だが、この程度の距離では付けなくても別にいいだろう。
差し込んだ光とともに、背後ではグルメ番組の芸人の爆笑が響いている。
どこにでもある、日常の一ページ。
その背中を、雅貴はにこやかに手を振って見送った。
ぱたん。と。
背後で扉が閉まったことを確認して、念のためカギをかけて、かちかち、としっかり手ごたえがあることを確認して。
それから湊は、ぐしゃりとその場に崩れ落ちた。
「…は、あ、―――――――――――っ…」
手で覆われた顔は耳まで赤く、吐く息はどちらかというと暑さと甘さが際立つ。
カンがいいものならこの吐息の時点で大体のことを察している
「ひょっとしてあの人はおれのこと大好きすぎるのでは…?」
今更です。
「ひょっとして結婚してたのか…???」
違います。
この恋が実ってトンチキ発想しかできなくなった|悲しき生命体男子高校生は、脱衣所の床に座り込みながらやかんが沸騰しそうな温度の頭を抱えた。
いまとなっては床の冷たさだけが味方である。
「ああ”~~~~~~~…好き…」
これが高校生になって初めてのクリスマス(より少し前)に恋人に告白を了承された男子高校生という生命体である。
とはいえ、普段は少しだけ合法的に距離を縮められるようになったというだけで、いつもはたいして距離感の変わらない日々(告白了承前から距離を詰めすぎただけともいう)を送っている、日中はつつましやか(???)な少年である。
今日は告白成就後から初めてのお泊りイベントである。
繰り返す。
今日は、告白後、初めての、お泊りである。
――――――これがどれだけの緊急事態か、おわかりいただけただろうか。
あの人に幻滅されて家とか弓道場とかを出禁になって放り出されてみろおれ死んじゃうぞ!?
一時的であっても死ぬぞ!!!?
それに加えて弓道部でもぎくしゃくするなんてそんなことを望んでなんかいない。
たしかに恋人関係は死ぬほど大事だが、だからと言って師弟関係や仲間関係が大事じゃないなんてそんなことは一mmもないのである。
ようやくつかめた輝かしい|関係性栄光だからってそれ以外を捨てるなんてとんでもない。むしろそれも含めて全部ほしい。
おれは欲張りな人間なのである。
だが、だが、だからと言って。
「今ここで自分が我慢できるかは別の話ッ…!!!」
魂はともかく身体は健全な男子高校生、いとしくて愛している想い人と同じ屋根の下、しかも合意、実績あり。
そんな状況で一度(どころではなく)覚えた甘露の味を我慢しろだなんて無理な話。
パブロフの犬でなくてもよだれダラッダラである。
ああ、もう、
あの力の抜けた柔らかな肢体だとか、なんかもう想像を絶するとしか言いようのないふにふにおっぱいとか、汗さえ甘く見える肌とか、とにかくムチムチボディとか本当に、本当に。
同じ部屋の下で二人きりとか、もう、ほんとう、もう、もう、もう!!!!!!
「持ってくださいおれの理性…いやもたなくていいや、せめて乱暴なことだけはしませんように…。」
こんなところに神仏や母上を召喚したところで渾身の力で目をつむるしかないだろうので、湊はどこにも求められない助けを唱えながら床に這いつくばった。
一番熱いところにだけは絶対に意識を向けないと決めたままで。
「あ~~~~~~~~~~好き…」
お前もか、ブルータス。
襲われることを期待している意地汚い俺を誰か殺してくれ。
そう、実は俺が襲われる側なんですよね。こんなむきむきなのに。こんな筋肉だるまなのに。
それに関してはどうしてそうなったかと周囲に聞きただしたいレベルで相手側の審美眼を疑ってはいるが、同じ系統とまではいかなくてもそれなりに大柄な方である海斗や遼平には全くそんな感情を向けた気配すらないあたり、「そういった」のがタイプというわけでもないらしい。
女子陣は恋バナということで普段の5割増しで口が堅いし、男子陣には話題が話題なのでこんな話を聞くわけにはいかない。下手をしなくともセクハラで一発KOである。
まして大っぴらに聞くわけにはもっといかないわけで。
唯一相談した|人間からは
「恋なんだからそういう物では?」
とアテになるんだかアテにならないんだかよくわからないがやけに真理を突いた言葉しかなかった。
何よりこんな、どこにも女性らしさのない体のどこにそうなるのか理解に苦しむが、湊が自分に劣情をもよおすのだ、という事実はいやというほど目にしている。|的証拠とともに。
「…」
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もう早く付き合っちゃえよって思ったらすでに付き合ってたカンジの湊マサ
初公開日: 2023年10月19日
最終更新日: 2023年11月24日
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コメント
珍しくエッチじゃないほうのやつです。
「「あれ…?ひょっとして、あの人俺のこと大好きすぎるのでは…???」」ってなってる話。
どっからどう見ても両思いなのに本人たちだけが理解していないだけのうだうだも好きだけど
こうやって二人っきりでドキドキしているのも相応に好きです。よろしくお願いいたします。