監視してください🫡途中まで書いてるやつはペーストしてます。
【調査ファイル資料:「三召村の伝承」村役場パンフレットより】
 ──むかしむかし、三召湖には水神様がいるといい伝えられていた。
 水神は三召湖の底に住み、村に災いがもたらされた際、湖から這い出て厄災を退けたという。
 村人たちは水神を崇め、感謝して村一番の美しい娘を嫁に出していた。娘はよく働き、水神様にたいそう気に入られたそうな。
 ある年のこと、村にたくさんの鬼が訪れ食べ物や宝や女を奪いにきた。水神は湖の底から這い出て鬼達を追い払った。しかし、その時鬼の一人が娘を攫ってしまい山へ隠した。
 水神様は怒り狂い、ついに湖から飛び出した。水神と鬼は激しく争い、やがてお互いの首を取って事切れてしまった。
 あとに残った娘はひどく悲しみ湖に身を投げてしまったのだ。
 この伝承を元にした祭りが、三召村で行われる水神祭である。
◇◆◇
 車を降りると、初夏の爽やかな風と共にけたたましい蝉時雨が飛び込んできた。むわりとした熱気がロナルドを襲ったが、湖の側だからか、心なしか空気は澄んでいるように思える。
『思ったよりいいところじゃないか』
『ヌヌ〜!』
「あんまりはしゃぐなよ、何があるかわかんねぇんだから」
 ため息をつきつつロナルドは車の積荷を下ろす。毎度のことながら大きなドラルクの棺桶がトランクを圧迫しておりロナルドの荷物は端にぺしゃんこになっていた。舌打ちをしてはしゃいでいる吸血鬼に吠える。
「ちったぁ手伝えよ。ほぼお前のだろ」
『日の下に出たら死んじゃうんだよ。もっとドラドラちゃんを労わって働こうという気はないのかね』
「じゃあ無理して付いてくるこたぁねぇだろ。また[[rb:ご真祖> じいさん]]から妙なもん貰いやがって」
 ロナルドはため息をついて、ドラルクの頭上に広がっている大きなこうもり傘を見た。ぱっと見は普通の黒い日傘なのだが、その下に広がるのは濃く黒い闇に近い影が広がっている。一体どういう仕組みなのか全くわからない。
『日光を完全に百パーセント遮断する日傘だよ。前々から商品化はされていたんだけどね。わたしのような病弱な吸血鬼に対応できるものはまだなかったんだ。でもお祖父様のは「本当に」日光を遮断する。むしろ光を吸収しているのかな?』
「……その傘の内側に塗ってあるやつ、なんかフクマさんがよくまとってる謎のオーラに似てねぇか」
『違う、と思う。たぶん……いや信じたい』
 傘の内側はただの塗料というより黒い「何か」が蠢いているように見える。まぁしかし作ったのはあの「お祖父様」だ。あまり深く考えない方が幸せだろう。
『それで? まずはどうするんだい』
「とりあえず宿に向かって聞き込みだな。ヒナイチの顔写真見せて回るしかない。地道だが」
『あんまり目立つなと言われていたろう、大丈夫かい?』
「仕方ねぇだろ、他に方法がない。部下の方から探すのもありだが……どんなやつだった」
 部下の方の資料は、ドラルクへ渡していた。こうもり傘の下から、えーとと声がもれる。
『ふむ、写真はいかにも真面目そうな青年だったよ。ガタイもかなり良さそうだ。最近、吸血鬼対策課へ異動になった人みたいでね。実力がどれくらいかはわからんな』
「なるほどな。まぁアニキのことだし、ある程度動けるやつを付けてるだろうけど」
『あと声がめちゃくちゃでかいって』
「それ特徴なのか?」
『うん、めちゃくちゃでかいって書いてある。二回ぐらい』
「それしか特徴ねぇのかよ! どんだけでかいんだ」
『資料渡そうか?』
「いや、宿に着いてからゆっくり確認する」
『オーケイ。では宿に向かうか。楽しみだなぁどんなところだろう。避暑地だからやっぱりログハウスとか、リゾート系のホテルとかもいいよね。湖の側でウッドデッキに座って優雅に夕食というのも乙だなぁ。あ、ジャグジーとかある? わたしあれの吹き出すところわざと塞いでぶぶぶぶってさせるの好きなんだよね』
「じゃかしい! そんな高いとこ泊まれるわけねぇだろ! 普通の宿だよ、ふ・つ・う!」
『え〜! 嘘でしょ! めっちゃ楽しみにしてたのに。やっとあのうさぎ小屋から出て来れたのにあんまりだよ』
『ヌンヌ!』
「うさぎ小屋いうな! 個人事務所持つのってめっちゃすごいんだからな! うさぎ小屋じゃねぇからな!」
 ぶーぶー文句を垂れるドラルクを無理やり歩かせ、ロナルドは駐車場から村を見下ろした。車を停められるのは、少し登ったこの場所しかないのだ。このまま上に上がっていけば最近建てられた別荘郡につく。しかし、ロナルドたちの目的地である村はその下にあった。ここからは徒歩でしか入ることができない。
 村は湖の部分だけ丸く切り取られたような形をしていた。周りには民家がポツポツと建ち、田んぼと畑が整列している。広場のような場所ではがやがやと、何か台のようなものを組み立てているのが見えた。紅白の飾りが見えるので、あれが例の「祭り」の準備なのだろう。
 ふと、視線を外すと村のはずれに紅い鳥居が建っているのがわかった。元々は鮮やかな色だったのだろうが、長年の雨風にさらされてほとんど色が抜け落ちている。目を凝らすと、木々でわかりにくいが、少し上に神社のようなものがあるのがわかった。脳裏に「水神」の言葉が浮かぶ。ヒヨシから預かった関係資料の中にその記載があった。迫り来る鬼と闘い、相討ちとなった水神──それを祭っているのがあの神社なのだろうか。
『見てロナルドくん、夏祭りだ! いいなぁ屋台とか出るのかな』
 村のことを真剣に考えて物思いに耽っていたロナルドとは反対に、ドラルクは実に能天気な声を出す。
「小さい村だからなぁ。でも何軒かそれっぽいのがあるし、出るんじゃないか」
『いいねぇいいねぇ。わたし絶対ヨーヨー釣りやりたい』
『ヌヌンヌン』
『ジョンは屋台飯か。確かに売ってるのはインスタントの焼きそばと変わらないはずなのに、なぜだが美味しく感じるんだよな〜』
「お前は食べられないだろ」
『こういうのは雰囲気だよ雰囲気! わかってないな、若造は』
「へいへい」
 荷物をまとめ、ドラルクの棺桶を背負って歩き出したところでロナルドの足が止まる。
『どうした』
「いや、なんか」
 首の後ろにねっとりとした嫌な感覚がある。こういうのは何度か覚えがある。
「誰かに見られているような気がして」
『ヌ……』
 ジョンの耳がぴくん、と動いた。
 駐車場はアスファルトで固められているが、周囲は木々に囲まれており見晴らしが悪い。この中で誰か潜み、隠れていても見つけるのは難しいだろう。
 ざわり、と木々が風に吹かれて音を立てる。強い日差しに照らされて動いた濃い影が、ロナルドの爪先を触った。
『気のせいだろう。それより早く行こう。お祖父様の日傘は最強だが、万能というわけじゃないんだ。早く冷房に当たらないと暑すぎて溶ける……』
「おいおい、ここで砂になっても絶対ぇ運ばねぇからな。砂袋って意外と重いからな」
『その筋肉は何のために鍛えているのかね、まったく』
「お前らみたいな吸血鬼を退治するためですけどぉぉ!???」
『ギャーー!!! 綺麗な右ストレートスナァァァ!』
『ヌ゛ー!? ヌヌヌヌヌン、ヌヌイ!』
「ごめん! ごめんなぁジョン。じゃあ砂はボストンバックに入れて後でサンドバッグにしようなぁ」
『ヌ゛ー!?????』
 哀れなマジロが必死に抵抗するも、大好きなご主人はバックの中へ綺麗に詰められてしまった。
 結果的に荷物を増やすことになってしまったロナルドは、少し息を切らしながら道をくだった。退治人といえど、暑い中で重い荷物を背負って歩くのはかなり体力を削られる。
 アスファルトから山道になり、かろうじて読める看板を頼りにやっとの思いで村にたどり着いた。入り口には「三召村」と、木の板に墨で書かれた粗末な看板があり道が伸びている。周りには民家と商店のようなものも見えた。
「ここで合ってる……のかな」
『ヌ〜』
「ひとまず水飲みたいな、自販機とかあればいいけど」
『ヌヌイ』
 ジョンも山道を下ってきたのが疲れたのか『ヌッヘヌッヘ』と犬のような息をしている。ジョンが熱中症になってはまずい。
「あのぅ」
 ジョンのために影を作って休ませていると声がかかった。目の前に男性が立っている。メガネをかけた、背の高い中年の男だ。彼はロナルド達を少し微笑んで見ていた。
 一瞬ロナルドがぎょっとしたのは、彼が突然声をかけてきたからではなく服装が変わっていたからだ。
 浅葱色の袴に、白い着物を着ている。自然に囲まれた村なので、狐に化かされたような奇妙な気持ちになった。固まってしまったロナルドを気遣うように「あのぅ」ともう一度男性は繰り返す。
「もしや観光の方でしょうか」
「え? あ、はい」
「ログハウスの受付は上でやっていますよ。道に迷われたのですか」
「いやその俺たちはここの村に泊まる予定で」
『ヌヌ』
「おや、そうでしたか。ではあなた達も『水神祭』を見にきた方なのですね」
 [[rb:あなた達も> ・・・・・]]とは、と聞こうとした時男性の視線が足元へと下がり「おやおや」と声を上げる。
「かわいらしいペットですね。でも可哀想に、このままだと熱中症になってしまいますよ。建物の中に入った方がいい」
「あ、すみません。ほらジョン大丈夫か」
『ヌッヘ、ヌッヘ』
「水を飲ませた方がいいかな。よろしければこれをどうぞ、先ほど汲んできたばかりなので新鮮ですよ」
 男性は袖からペットボトルを二本取り出した。ラベルも何も貼っていない、透明な水が入っている。太陽に照らせてキラキラと光っており表面に細かい水滴がついているので冷たいことがわかる。
 男性は一本をジョンに渡した。ジョンはヌヒャヒャと、言いながらあっという間に飲み干す。よほど美味しかったらしい。よかったと安堵していると、男性はキャップを外してロナルドにも手渡した。
「どうぞ、あなたもお飲みになった方がいい」
「すいません、本当にありがとうございます」
 これは幸運だった。こんなに暑い時に冷たい水をごくごく飲むことができれば、天国のような心地がするだろう。ロナルドが受け取ろうと手を伸ばした時、手のボストンバックの口がジジと開いた。
『あ゛ー! カバンの中地獄すぎる! まるでサウナだよ、本当に最悪!』
 ドラルクがバックから勢いよく飛び出す。しかし飛び出したはいいものの、すぐ日光にやられてスナァァとなる。その拍子にペットボトルがロナルドの手を離れ、ドラルクへと突き刺さった。
「あ」
『ひぇ! 冷たい、しかし恵みの水か? あぁぁぁ、地面の土と混じって意識が飛ぶ〜』
『ヌ゛ヌ! ヌヌ゛ー!!』
「なにやってんだよドラ公。おら、傘だぞ」
 日差しを遮ると、するするとドラルクは元に戻った。『あ゛づい゛〜』と、びしょびしょになった頭で叫ぶ。
『まったく、最近は吸血鬼虐待が過ぎるんじゃないのかい? 出るとこに出たら負けるぞ君』
「その前にてめぇをねじ伏せるから安心しろ」
『ヌヌ……』
「すみません、さっきの水を無駄にしちゃって」
 男性は固まっていた首を動かしてやっと「は、はい」と言った。
『先ほどの恵みの水は貴方からでしたか。なかなかいいお水でしたな』
「は、はぁ……」
「びびってんだろやめろ。あの、すいません。こいつ吸血鬼で、すぐ死ぬんですけどすぐ再生するんで。びっくりさせちゃって申し訳ないです」
『そうだぞ若造、もっと謝れ』
「生意気な口きいてるのはここかぁ?」
『イヤァーー! 顎をぐってするな、ぐって! ジョンガード!』
『ヌ゛ー!』
「ちっ、ジョンを使いやがって」
『ところで貴方、とても奇妙な格好をしておりますがどうしてですか。コスプレ?』
 そんな訳ねぇだろ、とドラルクをこづくと男性はにこりと笑顔を浮かべた。笑うと目尻に皺が寄る。
「私はこの村で神主をしておりまして、[[rb:加賀池> かがち]]と申します」
「神主」
『では、』
カット
Latest / 48:13
カットモードOFF
文字サイズ
向き
チャットコメント通知
2.吸血鬼退治人は鬼姫を攫え
初公開日: 2023年08月14日
最終更新日: 2023年08月14日
ブックマーク
スキ!
コメント
監視してください!!!!気まぐれに始まり気まぐれに終わる