始まりの話をしよう。
どこにでもある、世界の果ての話を。
――――その少年は、鳴宮湊と呼ばれていた。
■。
鳴宮湊にとって、世界とは白いものだった。
その白い世界に、急遽一筋灯った音。
弓の弦が鳴らすその音は、本来魔よけであり、厄除けであり、そして誰かの幸せを祈るものだった。
だからというわけではないが、その時彼の世界に、初めて、自分以外の物が灯ったのだ。
産声のように。
それだけでも湊にとっては快挙だったが、ここで、もう一つの物が灯る。
それはしいて言うのならば、|灯なんていう、生易しいものではなかった。
―――――――――星。否、月。
月があった。
砕けて欠けた、不完全な、月。
しい、と静かに人差指を唇に当て、
そっと瞳を笑みのかたちにして見せる。
それは確かに親愛的なジェスチャーであったはずなのに、そのはずなのに。
だが、それに、ぞっとするような心地を覚えた。
目の中の陰りに、夜よりずっと重い青色。
まさしくただしく、「一目ぼれ」だった。
あの青色が、いい。
あの色、欲しい。
そう魔性が渇望したのに堕落に陥らなかったのは、ひとえに運がよかったというほかない。
もう少しいうのであれば、これが恋だというのなら、目の前にある音は愛だった。
ひゅうううううと花火の音が舞い、的を殺すその寸前。
退魔の音が響くごとに、それに釘付けになっていった。
退魔のシンボルには複数個の理由がある。
曰く、「数えてしまうから」「ぶつかってしまうから」等等。
それになぞらえてたとえるのであれば、今回の場合はつまり、愛してしまうからだ。
愛さずにはいられない。道を外そうと、そうでなかろうと。
――――――その日、少年は運命に出遭った。
どこにでもあるような、しかしどこにもない。この世界のどこかの、自分の運命に。
それ以外はすべてどうでもいいって胸を張れるほどに言える、大事な自分の運命に――――――――
逆か。
その日、”弓”は出遇ってしまった。
己を運命と呼ぶ|もの《魔性》に、出会ってしまった。
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