OP:DADDYDADDYDO!
ドキッ☆北区開催弓道6人立大会が開始してから、2時間。
確実に殺傷事件が起きるであろうトーナメント形式から離れ、各チームが各チームに喧嘩を売りに行く形式(別名:◎ケモン式「おい、デ◎エルしろよ」)によって執り行われたこの大会は、事前の被害総額をはるかに下回り、うまいことを回っているように見えた。
…少なくとも、現段階では。
なおこの時点で複数回場外乱闘が発生しているが、場外である上に軽傷(当世界比)であるため、正直そこまで問題ではない。
むしろ問題なのはここまでスムーズに事が進んでいる事であり、こりゃあ後半に連れて何かあるな…と、関係者・裏方たちはみな兜の緒を締めなおしていた。
さて、それはさておき。
ここで、場内の廊下にて、ちょっとした事件が起こっていた。
と言っても、そこまでではない。
光源が自販機しかない、暗い廊下の出入口。
会場となっているここ、屋内体育館の光がかろうじて入る区画で、スーツ姿の男ども4人と、スーツ姿の女の子1人が、そろって心配そうに廊下に座り込んでいた。
「…どうしよう、これ」
「どうしようねこれ」
「どうしよう。」
「どうしましょう。」
【…まあ、ほっときゃ復活すんだろ、たぶん…。】
上から順に、細身の男子高校生、眼鏡の男子高校生、色素の薄い男子高校生、女子中学生、成人男性である。
総員がそろいもそろって細やかなところは違うが大体同シリーズのスーツを身にまとっており、そして各員違いはあれどそれぞれ違う弓(大体和弓)を携えている。
約一名、本来ならば建物に立てこもったテロリストを相手取り|面六臂の活躍をするはずの対人封殺用鎮圧兵器を携えているのが気になるが、総員どうやらこの大会に出てきたチームのうちの一人のようで、そんな5人は暗くなった廊下の向こう側に顔を突っ込みながらしゃがみ込み、うんうんとうなっている。
血気盛ん、殺意マシマシ、注意力バリ高の|狂戦士ヴァイキング…そしてそうでなくてもここに集ったのは弓道なんてものをある程度4日で模倣できる、選りすぐりの戦闘系スキルツリー頂点、もしくは戦闘狂、もしくはTAS走者ばかりである。
そんな総員が135人+αも集まってきたとなれば、たとえ隅っこでもその異常性には誰もが気が付きそうなものだが、そこには誰一人として視線を投げなかった。
時折投げかけるものや、心配そうにするものもいたが、それが何ゆえかに気が付いたものは黙って目をそらして席を外し、そうでないものはどこからともなく白黒の男女がやってきて火の粉の飛ばぬところに目撃者を拉致…もとい、避難・保護していたため、結果としては誰一人として、その不穏な黒団子に声をかけるものはいなかった。
とはいえそうなれば、面白がって絶対に声をかけようと光速を超えるのがこの世界の住人である。
各員手の空いている者たちが総出で、なおかつ懇切丁寧に謝罪行脚のようなものを繰り返している間、5人(厳密には4人)はそれに気が付かないまま、もしくは気が付いてもそっと見ないふりをしたまま、目の前の光景に声をかけていた。
ところで、この大会は、冒頭でも陳述した通り、|6《・》人立である。
そのため、もう一人のチームメンバーがいるはずだが、それがこちらである。
その女は、背もたれを廊下の壁にして、ぼんやりとそこに座っていた。
まるでぼやけるかのような存在感。しかしその重さは重厚で、まるでそこに居るだけでこの世のどんなものよりも|重い《・・》。
重厚なその存在感は、しかし半分その価値観を暗闇の中に溶かし込んでおり、本来ならば成人女性(太り気味)でしかない…なおそれでもだいぶでかい…体積を、あたかも半分ほど消し飛ばしたかのようにしていた。
隠喩たとえるのならば、それは死体。
もう少しいうのならば、まるでものになったような人体が、そこにはあった。
ただしそれは死体ではない。
魂が発するはずの波紋も、感情が生み出すはずの|耀カガヤキもないが、それは確かに死体ではなかった。
彼女の名前は■■■■■■。
とある人々からの愛称は■■■。
この大会を主催した■■■であり、それと同時にチーム「特攻野郎Aチーム(なおAとはかぎらない)」の主導、兼大前を担当している女性である。
なおチーム名は彼女が勝手に(そして誰にも相談なく)決めた。
余談だが、先ほどから場外乱闘の仲裁をしているのもこいつである。
「どうしようこれ」
「どうしようね、これ」
「どうしようか。」
「まあほおっておけば解決するでしょう、たぶん。」
【…こいつさあ…】
ゆさゆさと、成人男性が肩に手を置き揺さぶるのをされるがままにしながら。
その女の体は、まるで鉄の塊のように重いまま、だらんとされるがままにされていた。
デフラグ、という行為がある。
いわばメモリの整理手段で、早い話がパソコンにとっての新陳代謝、兼睡眠なわけだが。
これと同じことが、今目の前の女にも言える。
そう。いわばこの女、現在オーバーフローしているのである。
22、5チーム…厳密にいうと23チームがこんごうでおこなっている大会は、そのあまりに型破りな形式とある程度の自由密度により体裁を保っているが、その輝きは未知数だ。
ぶつかるチームが多いなら、それは当然、衝突の量も星の数ほどある。
流れ|が当たっても笑って別れられるチームもいれば、ささやかな方のぶつかり合いで殺し合いになるチームもいる今大会。
余りにも身内ネタのようなノリで盛り上がっては申し訳ないと、ある程度(というか、一種過剰なくらい)体裁を保ち、過剰なほど気を付けてはいるもののそこは普通に|狂戦士ヴァイキング
ムカつけば殺すすれ違えば殺す目と目が合ったら殺す、そもそも何もしなくても殺したくなったら殺す。
犯罪と断罪の地区であり、犯罪者崩れやマフィアも多い(そしてその分取り締まる者も当然多い)この地区には、当たり前のように武術家や軍人崩れもやってくる。
むろん、ただ人|と戦いたい《を殺し合いたい》だけの、狂人のような者たちも。
殴り合ったその手で、数十秒後には握手し、友人になっている。
そして数秒後には殺し合いをしている。
そんな、ある種暴力に非常かつ異常に寛容なこの地区において、衝突は星の数よりも瞬き、そして星よりも早く潰えるものである。
しかし今大会で、そこまでの暴力性は発揮されていない。
そもそもほとんどが北区とはいえ他区からも人が来ている上、数は少数だが他世界からも人が来ているのだ。
そもそも、この大会は、その世界の子供のたっての希望で開催されたという。
この世界の住人に、「子供の夢を粗末にする」はあり得ない。
たとえどれだけの暴力を良心の呵責なく振れようと、たとえどれだけの殺人を心を痛めず行得ようと、ただそれだけは、この世界において最大の禁忌。誰にもできない、最大の最悪だった。
だがそれでも衝突は起こる。
こればっかりはもうしょうがないのである。
心臓が拍動するのと同じくらい、呼吸を肺と腹筋で行うのと同じくらい、この世界でそれはもうしょうがないのである。仕方がない。
だがこの事態の収拾に脳を焦がしている奴がいた。
そう。この女である。
そういうわけで現在、昼休み?なにそれおいしいの?というレベルで嬉々として凶器を凶器として使わないという狂気の沙汰、もとい自分たちにはなかった概念を振り回す参加者たちを横目に、女はとりあえず自分の精神と思考領域の回復を急務としていた。
そういうわけで、この話はいったん冒頭に戻るのである。
「とりあえずおれ、飲み物買ってくるね。」
「ああ、待って■■■。僕も一緒に行くよ。」
「いいよ、すぐそこだし…いや、下手したら死ぬかな…でもいいよ、待ってて。むしろ■■■は|女王そっち見てて、下手したらそっちの方が死にそうだし。」
「こんな|贅肉のぼよんぼよんの人(?)見てても何にも楽しくないよ、ちょっと!」
「■■■、それはいくらなんでもひどすぎるよ。」
「えっ■■■から配慮の指摘が…!?」
「こういうのは「ふくよかな人」っていうのが一番いいんだ。」
「そっちもそっちでどうなの?」
【いいか■■■■、それはそれで傷つく人がいるからそれはそれでやめるんだ、いいか?】
「あなたの指摘を聞く立場ではありません、俺は。」
【なんだこいつ(怒)】
「そんなこと言っている場合ですか?」
場合ではない。
くったりとしているこの女は、データ情報整理と修復で追われている真っ最中な上、現在外部からできることは何もないが、それでも何もしないよりはマシである。
■■■は奥の自販機へ走っていった。暗がりの上この通路の出入り口自体が建物全体で見ても奥まったところにあるため、想像を絶する以上に真っ暗で踏み込むことすら躊躇する。
しかし■■■は一切の躊躇なくその暗闇へ入っていった。
この世界が自分を傷つけることはないと確信しているが故の行動である。
無鉄砲ではない。きちんと論拠がある。
それを誰かに証明することはできないが、おそらくここにいる誰もがそのことを確信していた。
■■■と■■■は言い合いを開始しながら、両の手…ではなく、|スーツの裾をちょっとだけ摘まんでいた。
情報過多オーバードーズで|処理落ち《オーバーフロー》しているのならば、ほんの少しでもたとえ労りでも、情報量は少量にしておいた方がいいだろうという気遣いである。
■■はそんな二人を見ながら、そして決して奥に行った■■■から目を離さず、女の背中をさすっていた。一応、念のため。
■■■は、完全に奥の■■■へ体を向けながらも、その女の精神異常を少しでも和らげられまいかと、さすさす握っていた手をさすっていた。一応、念のため。
女はというと、相も変わらず口からまともではない言葉を高速で吐き出しながら、黒い液体のようになった自身の影をふにうに動かし、後ろの壁になんかしらの処理をしているPCの時のような画面を映し出していた。
なぜ壁に文字列が映るのか、この黒い影は何か、■■は知らない。
が、この世界に自分の(少なくとも、現実での)常識は一切通用しないことがわかりきっている。
少なくとも、この弓道(仮)大会においてそれはもう、いやというほど味わった。
なんだよ簡易滝行セットって。なんだよ|天空神ウーラヌウスって。そしてなんで滝行セットがめっちゃ活躍しているんだよありがたすぎるだろホントマジで。
なので、■■■■は突っ込まない。
突っ込んだら、それを曲解した奴(最も多いのは女)によって、もっとおぞましいものがお出しされると知っているが故の行動である。
三人衆はそもそも突っ込む理由がない。右から順に、知らんこっちゃ、なんのこっちゃ、別の常識である。
■■■に至ってはそんなものはない。
なので、とりあえず■■■■は、その女の背中を―――鉛のように固くなり、銅のようにもたれ、水銀のように融けたその輪郭を―――撫でさすることのみに努めた。
壁に高速で流れゆく文字列には、「残り4分13秒」と、白文字に黒背景のデザインで書いてあった。
「見て■■■、■■■、■■■さん、■■さん、瓶詰のミカンジュースがあった。」
「「【なんで????】」」
「あらまあ。」
ふふふ、とのんきに女子中学生が笑う。
実はこの子が一番強いんだろうな、と■■は思った。
和弓ではない弓が横行する弓道大会というのもどう何だろう、とは思われるだろうが、和弓の生産が追い付かなかったのだ、赦せ佐助。
誰だよ佐助、とは思ったものだが、しかしそれを踏まえたうえで見た目の前の空間は、ひとえに圧巻の一言だった。
自チームの落に思った「何に使うんだこんなデカいやつ」という驚きと新鮮さが、目の前の世界には当たり前のように広がっている。
和弓typeの変形弓もあれば、一見してハンマーにしか見えないような超巨大・超分厚い弓…弓?、アーチェリーなどで使うような西洋弓から、何をどうしてそうなっているんだ?というようなわけのわからないものまで、千差万別様々な光景が、異様な雰囲気を持たずに広がっている。
のが、なんだか不思議に思えた。
無理もない。
ここに集うものは皆、大なり小なり|自らでもって他者を侵す《戦いの》プロだ。
誰もかれもが正当な、もしくは違法な、異形な、異常な体の動かし方を知る中で、そんな物々しい者たちがみんな、同じ手段、同じ形式、同じたいはいで動いているというのに、何一つとして埋没する個性がない。
みんながみんな、違う形と色に輝いている。
しかしそれらは別に、ただ個性的であるというだけではない。
同じ方向、同じ目的。手段、方法は違えども、狙う先は一つ。
もっと楽しく。もっと美しく。
無駄でしかない|過程娯楽に賞賛あれ、払うべき|敬意あいの先に愛あれ。
そして、願わくば。
この手で世界を鏖殺せんことを!!!!!!!!!!
【………】
■■は率直に言って本気で引いた。
かの女もそうだが、なぜこの世界の住人たちは愛と殺意を同時に矛盾なく成り立たせられるのだろう。
大口を開け、餌を飲み込もうとする鯉の大群に怖気が走る。
この世界、やっぱすごく怖い。
できるだけ距離を取らないとまずいなと、しみじみ思う■■だった。
それはさておき。
ところで、もうかれこれ二時間以上みんな引いているんだが、大丈夫なのか???
そんなことは許されない。信じられない。
そういう言葉が余波を生み、世界をゆがませる。
それは望むところではなかった。
どんな形であろうと、どんなに原型が無かろうと、出来ればそれは踏まえたうえでそれでも触れてほしかったし、
どんな形が、どんな理由があろうと、そうしてここにいてくれることは、どんなにだれが言おうとも、貴重な話なのだ。
そも、この弓道の大会開催が決まったのは4日前ということを忘れてはならない。
最初から弓道の弓の字しか知らないような存在たちが、たったの4日でここまで積み上げたというのなら、それは感嘆すべきことだ。異常ではあれど、その愛と努力には敬意を示すべきだろう。
向こうが示したのと、同様に。
こちらもあちらに、敬愛を示すべきだ。
それはわかっている。わかっている、のだけれど。
それはそれとして。
【素直に認めたくな~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!!!】
という感情が、■■の心9割を占めゐていた。
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向き
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ドキッ☆北区開催弓道6人立大会☆番外編
初公開日: 2023年06月12日
最終更新日: 2023年10月01日
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コメント
何やってんだお前。っていう話です。
未知の世界でIBUNNKAコミュニケーション、ただし時々間違える、みたいなっ☆
お前を■■してる。
どこにでもある、二次創作。
ロマネスカ
エッチじゃない話
本当なんです信じてください。
ロマネスカ
「「ユビキリヤ。」」
出演COEIROINK/ユビキリヤ CoeFontSTUDIO/ユビキリヤ
ロマネスカ
すばらしい旅
すべての人間が旅をするSF。旅によって人は自由になり、旅によって人を愛せる。
トチ