「ようやくここまで来たね……」
わたしは思わずそう溜め息を吐いた。
「お疲れ様、侑」
さしもの燈子も疲労の色を残しつつも、わたしの肩をぽんと叩いて労う。
しかしながら、わたしたちが半ば項垂れているのは目的地ではなく、途上にあるパーキングエリアだった。
「ゴールデンウィークの渋滞舐めてた……」
そう。わたしたちは黄金週間を楽しむべく出発したはずだった。
確かに毎年ニュースで混雑の様相が報道されてるのは覚えてた。けども若さ故の楽観とも言うべきか、「まぁ大丈夫だろう」と軽いノリで高速に乗り上げたわたしたちを待っていたのが、普段の快適さが欠片も残っていない、不動の道だった。
もちろん余裕を持って出ていたのだけど、もはや当初の予定からは余裕でオーバーしている。この分だと着いたらそのままチェックインして布団にダイブするのは目に見えていた。
やっぱり途中で下道通った方がよかっただろうか。
高速出口が見える度、どれほど悩んだことか。結局は出口近辺で降りる車が渋滞しているのを見て、下の混み具合に絶望して直進を選び続けたのだけど。
そも、このパーキングとて車を停めるのにどれだけ時間がかかったことか。
「ほら、少し休んでこうよ」
燈子の気遣いにわたしはもう一度嘆息を零してから車を降りる。できるだけゆっくり休みたいとはいえ、後続が待っている中ではそう甘えてもいられまい。
真っ先にお手洗いに寄ってから構内に入る。とりあえず長期戦に備えて間食を買っておいてから、腹拵えに食堂へと足を踏み入れた。
「あ」
不意に燈子が声を上げる。釣られて見れば、そこにはレトロな雰囲気漂う自動販売の食品機があった。
「へぇ、こんなのがあるんだ」
「結構ない?」
「私は見たことないなぁ」
燈子は物珍しそうにしげしげとそれを見つめる。
そんなに珍しい物だろうか。わたしは日帰りの家族旅行で見る機会はそれなりにあったけどなぁ。
好奇心に目を輝かせていた燈子は、やがてその場で財布を取り出す。
「私これにしよっと」
「あんまり期待しない方がいいよ」
一応程度に言ってみると、燈子は子供のように笑った。
「いーのいーの。それも振り返った時に楽しかったことになるんだから」
燈子はそんな風に嘯きながらチャリチャリと硬貨を投入して、カレーのボタンを押した。
機械が動き、準備され始めると、燈子は「侑は?」と言わんばかりに見つめてくる。
……全く。相変わらずなんだから。
それに乗ってしまう辺り、わたしも燈子に似たのかもしれない。
同じようにお金を入れたわたしは、ラーメンのボタンをピッと押した。
結局味はやっぱり想像通りではあったけれど、燈子の言った通り、何度も話題に上がる思い出話になったことは確かだった。