「それ、寒くない?」
唐突に投げかけられた疑問の言葉に、わたしはそちらへと目をやった。
視線の先では、沙弥香先輩が呆れたような目をわたしの手元へと注いでいる。
「なんで? 美味しいよ?」
「そりゃそうでしょうけど」
スーパーなアイスを一つ口に運びながら疑問を返すと、納得いかなそうに唸る沙弥香先輩は、羽織ってるカーディガンをより強く巻き付けた。
「あ、暖房まだ強くしたがいい?」
「いや、暖房はむしろこのくらいでいいのだけど。見てると寒くなるのよ、それ」
えぇ。その方が逆に分からないんだけども。
「冬に扇で扇ぐようなものじゃない」
「扇は知らないけど、アイスは冬なら冬の味わいがあるよ」
わたしがそう言っても沙弥香先輩は未だに承服できない様子。
こうなるとわたしもちょっとばかり意地が出てくる。
「はい」
一匙アイスをすくってから沙弥香先輩へと差し出す。
すると沙弥香先輩は一瞬、びくりと体を跳ねさせた。
「一口だけでもいいから食べてみてよ。きっと分かるはずだからさ」
「……分かったわよ」
観念したのか、溜め息を一つ吐いた沙弥香先輩は、まるで嫌いなものでも食べるかのように険しい表情を浮かべながら恐る恐ると近付く。
そうしてぱくり、と一口。
「どう?」
「……あんまり参考にならないわ」
「えー」
まさか同意を得られなかったなんて。がっくりと肩を落としていると、なにか言いかけた沙弥香先輩は、まるでやれやれとばかりに首を振って読書へと戻っていく。
納得いかないのはこっちなんだけどなぁ、とむくれながらわたしはまたアイスを口にした。
そのことに気付き、勢い余って沙弥香先輩に抱き付くのは、それから数分のちになる。