探偵の不足は、すなわち世界規模の不可能犯罪の爆発的増加を招いた。探偵が犯罪組織に殺される、しかしその殺人事件のさまざまな謎を解き明かせる探偵がいない、だから事件は解決せず手口は判明せず、犯人も捕まらない。だから犯罪者はますます増加していく。組織的犯罪はもとより、個人での犯罪も従来とは比べ物にならないくらい増加したが、犯罪という金庫をこじ開けるための技能を持つ唯一の職業である探偵は、もはや不在となりつつあった。
事件の謎を解明してくれる探偵の圧倒的不足によって、世界中で不可能犯罪が横行……正確に言えば、従来なら不可能犯罪になどなるべくもなかった稚拙な仕掛けの犯罪すらも不可能犯罪として処理されるようになったのだ。
今や世界中には、あらゆる場所に不可能犯罪という名の未処理の謎が転がっている。
「またか……」
もはや怒りとともに机を殴る覇気はとっくに失われていた。警部にできることは、もはや力なくため息を吐くことだけ。
自分の残りの人生は、誰にも謎が解けない不可能犯罪に関するレポートに埋もれてしまうのではないか。警部は半ば本気でそう思う。
今まで、名だたる犯罪の謎を解き明かし、数々の事件を解決に導いてきた探偵たち。そのほとんどが犯罪者たちに殺され、あるいは探偵を止めていった。