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「よろしくお願いします」
膝を曲げて腰を低く、重心はやや前に。片足を引いて、踵を少しだけ浮かせる。受けの姿勢。構えをとると、綺麗な一礼を済ませたチェンは軽く、それでいて素早く踏み込んで私との距離を詰める。──右、正面。──左手の甲で最大インパクトをずらして弾くと、当然のように体を捻って今度は左。──肘打ち、にしては角度が甘い。右腕で肘より先の腕を受けて続け様の裏拳を首を倒して躱す。そのまま彼女の二の腕を掴み、踏ん張りがあまり効いていないように見える足をトンと突けば簡単に爪先が浮いた。
「受け身の練習です」
チェンの体幹ではそこまで派手に飛ばないだろうが、力任せに何とかしてみるか。浮かせた踵を地につけて、勢い良く手を下に引く。思い切り視界を揺らして、さてどうすると次を待てば、チェンは勢いを殺さずに足を浮かせて一回転。受け身の練習だと言ったのにこれでは反撃の練習になってしまうな。腕を引っ張られる形になった私は素早く腕を逆に回して引き抜いて仕切り直しかと距離を取ろうとすれば、今度はチェンの尾が腕に巻きついて離さない。
「尾はずるいですね」
「なんとでも言え」
バランスを崩した私の体をまるで木のようにするりと登り、首に足をかける。後ろ手にその足を掴んで上に無理矢理持ち上げれば、チェンはようやく距離を取った。
「次はこっちで」
「分かってるさ」
私は両腕を体の前に、彼女は片手を前、もう片方を体につけるように構えを取る。一つ息を吐いて始まるトンと軽い音の踏み込みは、音とは比べ物にならない重さの打撃となって私の腕に襲いかかった。右、右、左と、右足。右のフェイント──肘、受けて、回して左の踵。
軽やかに打ってくるわりには随分と骨に響く打撃だ。剣も射撃も、素手もいけるとはな。学生時代のオールAは伊達ではないらしい。それに今までの研鑽も加わるとなるとそれはもう──、
「全くもって、素晴らしいことだ、なっ!」
「ぐっ!?」
「どうしたんです。さっきもやりましたよ、これ」
「ちっ」
彼女の拳が私に当たるよりも早く私の拳の方を彼女の拳に当てる。要は拳同士をぶつけただけなのだが、中途半端なインパクトは相手にダメージを与えるどころか自身の腕を痛めることになる。闇雲に分かりやすい攻撃だけではいけない、との意味だが伝わったのだろうか。
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suit
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初公開日:
2023年01月16日
最終更新日:
2023年01月16日
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👹🐉 眠くなるまでちょっとだけ チャット欄はご自由にお使いください
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