「4様とテッドの話(当家よん:アズユール、坊ちゃん:シェントゥ)」
 20221211 星の祝祭テキストライブリクエスト作品1
 ようひさしぶり、お疲れさん。さすが親友、ほんっとううによく頑張ったな
真の紋章について聞きたい? ああ、ここは夢の中みたいなもんだ。うん? そう、まあ、ソウルイーターとつながってるからな。そういうことだってある。300年付き合ってたんだ。お前よりはよっぼどこいつがもたらすあれやこれやには詳しいんだぜ。
ていうか、まさかお前が星を宿すだなんて思いもしなかった。ソウルイーターを託すことだって、断腸の思いだったんだぜ。お前にはグレミオさんやクレオさん、パーンさんもいたし、テオ様だっていたからさ、だからこそ…ああ、そうさ。こいつの性質の悪さをわかっていながら、これからお前やその大切な人たちにどんな運命が降りかかるかわかっていながら俺はおまえにこいつを……って、どつくな! 体がなくなったって、感覚ってものはちゃんとあるんだぞ? ったく、お坊ちゃんがつよくなっちまって…。
 わかってるよ、お前が自分で決めて引き受けてくれたってことも、おれのことを恨んだりなんかもしてないってことはさ。うん? なんで宿星のことを知ってるんだって? そりゃあ、おれだって300年の間には色々あったのさ。このテッド様も星を宿したことがあったんだぜ。へへ、聞いて驚け、150年も前の話だぜ。お前と違って天魁星じゃなかったけど。やっぱり108の星を宿した奴らが集まってた。俺も宿星の一人として大活躍……っていうのはさすがに盛りすぎだな。ああ、色々あったんだよ。あの頃はおれもまだ150才の若造だったから、これでもいろいろと思い悩むこともあったんだぜ?
 けど、宿星ってのはなんなんだろーなあ…。うん、自分が宿してた星がなんて名前だったかなんてとうに忘れちまったけどさ。もう一人の天魁星がどんな奴だったかは話してやれる。俺? 俺のことはいいじゃないか。人間若気の至りってのはあるんだよ…ああ、いつか、機会があったらな。まあ…お前みたいなやつにはあんまり参考にはならないとは思うけどさ。
 そういう意味ではあいつ、アズユールのやつの話のほうが面白いぜ。そう、俺が知ってるもう一人の天魁星。群島諸国の英雄ってやつ。赤月じゃあんまり知られちゃいないみたいだけど、群島諸国連合設立の影の立役者とかなんとか、やっぱりお前みたいになりゆきでリーダーをやる羽目になったとかだったかな。お前と違って何考えてるのか、すっげえわかり憎いやつだったけど…ってそう怒るなって、俺とお前は親友なんだから、考えてることくらいそりゃわかるさ、別にお前がわかりやすい単純馬鹿だなんて言って、…あ、こら蹴りはやめろって!
 アズユールについてだったな。そう、あいつも真の紋章の持ち主でさ。罰の紋章。聞いたことはないか? こいつは周囲の人たちの命をすするが、罰の紋章は逆さ。絶大な力を発揮するけど、その分宿主の命を啜ってくってやつ。宿主が力尽きるとその近くにいる人間に手当たり次第に宿って世界を彷徨う、こいつと似たり寄ったりの呪われた紋章の一つさ。ああ、そうか、お前とあいつと、ちっとも似てないって思ってたけど、こんなくそったれな紋章をおっつけられても、世を儚んだり嘆いたりとかしないし、拗ねていじけたりとか、そんな卑屈っぽさとは、お前ら二人とも縁がないって感じだもんな。…そういうとこかね、天魁星ってのは…ったく、まぶしくって仕方がねえや。
 ……全く恥ずかしい話なんだけどさ。150年前のおれはそれなりにいじけてたわけよ。世を儚んで、運命を恨んで、そんでちょっとばかり、厄介な誘惑に負けて引きこもっててさ。そんな時に、真の紋章をもっているあいつに近づいたんだ。まあ…そうだな、今から思えば負け犬仲間が欲しかったんだな。あの頃は、ちょっとこいつを背負って世界を彷徨うのに疲れてたんだ。なんたって150年もたった一人で逃げ隠れして旅をしてたんだ。ちょっとくらい、心もくじけるってもんだろ? で、そんな俺をかくまってくれた奴がいてさ、そいつが真の紋章を集めてる異世界だかどっかからきたって奴で。紋章の重みを肩代わりしてくれて、時間が止まっちまったみたいな船の中で他人事みたいに世界をながめてりゃいいって、まあ、なんだ、そんな枯れ果てたじいさんみたいな考えに浸ってたんだ。300年も生きた今となっちゃあ、150才なんざまだまだ若造、さっき言ったとおり若気の至りってやつだったんだけどさ。で、その異世界からきた導師ってやつがアズユールの宿してた罰の紋章目当てに、おれをあいつのところに遣わしたって次第さ。
 いやあ、眩しかったね。あいつは何考えてるのかわかんねえ、お前と違って無口な奴だったけど、とにかくまっすぐな奴で、導師のやつの辛気くさい誘惑なんてきっぱりと振り払ってさ。なんか、思い出したんだよ。ああいう眼差しを見たことがあるって。そいつを忘れて、なんでおれはこんな陰気なところで閉じこもってるんだろうって、そう思ってさ。それでそっから出る気になって、あいつの手を取ったんだ。……気を、悪くするなよ? 親友。
 船を出て、霧の中をくぐり抜けて、それでもあいつのいかにも海の男って感じの節張った手は、俺の細っこいこの呪われた手を離しちゃくれなかった。何年ぶりか、ひょっとしたら何十年ぶりかの日差しに目が眩んで、ともすりゃまた部屋にこもりきりになりそうな俺を、こっちの気持ちなんてかまいもせずにあちこちに引っ張り回してさ。……おかげてこっちはすっかり擦れっからしになっちまったって寸法さ。
 ああ、あいつに会わなきゃ、おれは今でもあの船の中でぼんやり世界を眺めてるだけの世捨て人のまんまだったかもな。お前にも会えないまんまで……まあ、いいたかないが、恩人って奴になるのかもな。
 その後はどうなったかって…? アズユールは、…あいつは、紋章の力を使いすぎてた。集った仲間のために、おれたちを守るために。そういうところもお前とあいつは似ているのかもな。群島を脅かしてた異世界のばけもんを倒して、クールークを追い払って……それきりだ。おれはそのあと群島を後にしたから、あいつが罰の紋章がどうなったのかは知らないままになっちまった。
 …そうか、群島に向かうのもいいかもな。本当にきれいな海なんだぜ? そうさ、竜になんか乗らなくても、あたり一面、見渡す限り青い世界なんだ。
 ああ、お前にも見せてやれたらなあ…!
20221211 15:50 投了
「2主くんがフリックさんに聞いてみた。トランの英雄ってどんな人?
(当家坊ちゃん シェントゥ、2主 ミッシェ)
シェントゥについて知りたい…? 
本人がいるんだから、本人と一緒に行動するのが一番じゃないか。…それだけじゃ駄目? 恐れ多くて質問なんかできないって、なんだそりゃ。あいつだって、話をしてみりゃ普通の人間だぜ? 取って食われるわけでもあるまいし……いや、ま、気持ちはわからないでもないが。ああ、まあ食われた方がましなんじゃないかって気持ちになることも、まあ、…あるよな、うん。それは否定しないが……そうだな、そういう覇気とでもいうのか、ちょっと人を寄せ付けない、ただ者じゃないなって雰囲気があるのはよくわかる。ま、ちょっと腹を割って話せば年齢相応の、ごく当たり前の人間だよ。こう、…祭り上げられて、距離を取られるのがしんどいってのは、ミッシェ、お前にだってわからないわけじゃ、ないだろう? そう構えたりしないで、本音のまんまぶつかってみるのが一番いいと思うぜ。
 とはいえ、聞きにくいって気持ちもわからん訳じゃない。ここらじゃ特に、テオ将軍を倒した話が強調されてるし、そんな話、本人にはとても聞けやしないよな。どんな戦いだったのか、あいつがどんなふうにみんなを率いたのか……おれの話だって一方的なものだが、それでもあの時一緒に戦った人間じゃなきゃ伝えられないこともある。あいつの人となりがどんなものかは、お前自身が直接あいつと付き合って知っていくしかないが、世間で言われてる英雄なんて言葉で変な先入観を持った目で見られてもな。いいさ、英雄としてじゃないあいつ、シェントゥ・マクドールがどんな奴なのか、たいした参考にはならないとは思うけど、少し話をしようじゃないか。
しかし改めてあいつについて話せといわれると妙に緊張するもんだが…どこから話したもんかな……ああ、そうだよ。あいつが解放軍のリーダーだ。あいつの前にリーダーをつとめていたのがオデッサさ。思うところはなかったか、って? 彼女の死後、その遺志を継いできっちりリーダーとしての責務を全うしてのけた奴相手に思うところも何も……なかったわけじゃ、勿論ない。でも、そんなちっぽけなことにこだわってたら、それこそ彼女に笑われるどころの話じゃない。年下のガキに嫉妬して、自分の成すべきことを放り出しちまうなんて、それこそあいつに顔向けなんか出来やしないからな。
まあ、おれのことはどうでもいい。シェントゥの話だしな。まあ、今の話でもわかるだろうが、あいつのそういうところ…なんと言ったらいいのかな、オデッサから託されたものをまっすぐに受け取った上で、あいつ自身が自分で未来を選び取る、そんな周囲の人間が思わず背筋を伸ばしちまうようなところがあるよな。品行方正でいなきゃならないとか、そういうわけじゃない。解放軍はとてもじゃないがお上品な組織って訳じゃなかったし、あいつ自身も山賊やら湖賊やらの柄の悪…いや、癖のある連中とやけに気が合ってもいたし、まあ、いろいろあくどい手も使わざるも得なかったからな。シュウのやり口なんざ、マッシュに比べたらかわいいもんだぜ。偽印づくりだの、お医者先生の拐かしだの……その手のろくでもない手口に、あいつめ、目を輝かせてたりさ。まあ、なんだ、付き人がいるような坊ちゃん育ちだが、性根のところは結構な悪ガキだぜ、あれは。もっとも、それでいながら野卑に染まるってわけじゃない。泣く子も黙る山賊湖賊の野郎どもが飲むわ打つわの乱痴気騒ぎを繰り広げている中でも平気な顔でちんちろりんで金を巻き上げておきながら、時間になるとさらっと立ち上がって涼しい顔で勝ち逃げ、なんてこともあったっけ。それじゃあぼくはこの辺で、お前たちも適当なところにしておけよ、なんてしゃあしゃあと言ってのけてさ。そんな言動が当たり前だと思わせる風格、なんてものも持ち合わせてる。オデッサにもそういったところはあったけど、ああいうのがやっぱり器が大きいっていうんだろうな。…っと、本人には言うなよ? 特におれが言ってただなんてのは、絶対ここだけの話にしといてくれ。
 ……ああ、わかったよ。ったくお前も随分人が悪くなったな? 黙って置く代わりにもっといろんな話を聞かせろって、ああ、いや褒めてるんだぜ? そういう強かさってのは大事さ。シェントゥの奴は、あいつは育ちが育ちってのもあって、そういう交渉には長けてはいるがお前はその点、むしろ相手に対してどこか遠慮するようなところもあったから、そのくらいの方がちょうどいい。
 そうだな、おれから見たシェントゥのやつか……最初は、特にあいつ個人に対してはどう、とも思わなかったな。ビクトールの奴が無理矢理連れてきてさ。そりゃ敵対する帝国側の大将軍のご子息さまだ。警戒をしなかったわけじゃないが、見た目は付き人に守られたお坊ちゃんだし、あれでビクトールやオデッサの人を見る目は信頼してたしな。少なくともオデッサの信頼を裏切るような奴じゃないってのは、おれだって感じてた。まあ坊ちゃん育ちの奴があんな地下のアジトでの生活に不平不満を言わずに過ごせるわけがない、なんてことも最初は考えたがそれはおれのあなどりだったな。文句を言うどころか、進んで自分から日常の用を片してくれてさ。付き人のほうがおろおろして後をついて回ってて。
…後で聞いたら、軍を率いる者は下々の仕事も熟知してなきゃならないってんで、親父さんや棍の師匠に一通りの下っ端仕事は仕込まれたって話でさ。まあ慣れた仕事ってわけじゃなかったが、匿ってもらう以上は相応の仕事は分担しないと、だなんて殊勝なことも言ってたっけ。思えばあの頃のあいつはまだ素直だったんだよな…っと、これも絶対に言うなよ?
 まあ出会った頃の印象ってのはそんな感じか。結構やるじゃないか、坊ちゃん育ちだと思っていたがなかなかどうして。しかしこの先どうしたもんか…、って程度だった。その程度だったんだが…でもな、何故かあいつがオデッサの遺志を継いだって聞いたときには……勿論衝撃は受けたさ。でも不思議なことに、…なんでだろうな、おれは、ああ良かった、これであいつの遺志を生かしていけるって、どこかで胸をなで下ろしたような気持ちになった。本当に、我ながらひどい話だと思うが…まあ、それはあいつとは関係のない話だな。
 シェントゥ・マクドールって人間と、だからちゃんと向かい合ったのはあいつがオデッサに代って解放軍のリーダーとして立ってからってことになる。さっきも言ったとおり、おれ自身はあいつに思うところはなかったし、あったとすればむしろビクトールの奴に対してで…まあ、それもまた別の話だ。世間じゃ色々言われてるし、そう仕向けたってのもあるが、おれに関しちゃ、一番大事だったのはとにかくオデッサの遺志を生かし続けることだけだったからな。その一点の利害さえ一致すりゃ、あとはどれだけ効率的にうまく役割を演じてのけるかどうか、だ。
 その点あいつは役者としても一流だった。見事に、本当に見事に解放軍の首領の役割を演じきった。望まれた英雄の姿を、そりゃあ、もう…嫌になるほど、完璧にな。
 あいつのすごいところはさ、その演出さえも自分自身の意思だったってとこだ。うん、軍師殿の筋書きはあったさ。でも勿論いいなりってわけじゃない。おれも…まあ、その片棒を担いでいた訳だが、あいつはちゃんと自分の意思で、あの戦いを勝ち抜くには自分がどんな役割を演じるべきか、そしてそのためには何を犠牲にしなければならないのか…全部わかった上で、そいつを全部自分の選択だって言ってのけて見せたんだ。
 正直、敵うわけがないって思っちまった。笑えるだろ、いくら帝国ではすでに成人を迎えた年齢だったとはいえ、あの頃のあいつはまだ子どもといっていい…今のお前より一つか二つ年上なだけのひよっこだったんだぜ? そんな子どもが、…いや、子どもだったからなのかもしれないな。オデッサが指し示した理想と現実をまっすぐに受け止めて、帝国の不正義に憤って…そうだ、あいつはおれにだって矜恃ってものがあると、怒りを殺しきれない眼差しを向けてきてた。汚名を被らせるのが気に食わない、それを笑って引き受けるお前がもっともっと気に入らない、だったか。そんなことをまともにあの顔で言われてみろ。ああ、こいつがリーダーだ、って、そんなふうに胸に落ちるに決まっているじゃないか。
 ああ、だからってそう構えるな。あくまでおれにとっては、の話なんだから。今のあいつはそんな責任だの責務だのを放り出して、自分が思った通りに勝手気ままに動いてる。お前に手を貸そうと決めたのだってあいつ自身が決めたことだし、誰かに何かを強制されることをよしとなんてしない奴だよ。だから遠慮なく、聞きたいことがあったら聞いてみるといい。シェントゥのやつ、結構お前のことは気に入ってるみたいだからな。下手に顔色なんて伺わないで、そのまま真っ正直に当たってみろよ。あいつも、その方が喜ぶだろうからさ。
 
 
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祝祭2 即興SS
初公開日: 2022年12月11日
最終更新日: 2025年07月20日
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