お化粧道具を鏡の前に並べて色を確認する。座っている基弦はげんなりとした顔。もう、酷いことするわけじゃないのに。
「司先輩、これは?」
「基弦にお化粧しようと思って。それからお出かけしましょうね」
「……はぁ」
 クリップで髪をよけてメガネを外すと目つきが悪くなった。人相悪いわねえ。
「下地からぜーんぶやってあげる」
 ロードナイト生だからスキンケアは欠かしていないはず。お肌しっとりしているもの。艶の出る下地を縫って粉を叩くだけで十分ね。舞台だとマットな化粧が多いけれどキラキラしたのも似合うと思うのよ。
 アイシャドウは私の目の色。ピンクともパープルともとれる色をアクセントに目尻と、涙袋にも薄く入れていく。……今度地雷系メイクしてみようかしら。稀なら似合いそうだわ。全体には薄いゴールドベージュをかけて、カーキのアイラインを切れ長に引いていく。
「基弦、目を開けて。もう少しピンク入れてもいいかしら」
「ピンク!? ジャックですよ俺」
「なに言ってるの。考えが古いわよ」
 オデコをツンとつついて叱る。そんなつまらないこと言う子にはお仕置きが必要ね。
 マスカラもカーキで合わせて軽く塗るだけ。睫毛長いのね……。ビューラーでもっと上げても良かったかしら。
 眉はいつもより緩やかなカーブで長めに書く。眼鏡の角度とも合わせてるから違和感は無いはず。
 最後にピンクベージュのチークを筆で滑らせて、鏡越しにはいい感じだわ。髪を止めていたクリップを外して軽く櫛削るだけで髪型も元通り。
「どうかしら」
 基弦に眼鏡を掛けて貰って確認させる。驚いたように目を丸くしてるのを見るのは楽しいわ。
「ジャンヌ顔になってるじゃないですか」
「あら、アルジャンヌになって私のパートナーになる?」
「いやいやいや、俺はジャックエースですから」
 軽い冗談を交わしながら基弦を立たせて顔を覗き込む。じーっと見つめていると困った顔で基弦が目を逸らした。
「あの、司先輩なにを?」
「私の目線で一番素敵か確認してるのよ。今日は私の基弦になって貰うんだから」
「ご感想は? ボス」
「満足よ! さあ出かけましょう。新作ケーキが食べたいの」
「エスコートさせて頂きますよ」
 お手をどうぞ、という基弦の手に手を重ねて歩き出す。今日はあなたがどれだけ素敵か、街の人がたくさん知る日になるわね!
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