薄暗い夜の帳が部屋に降りつつあった。
 灯りを点ける気にもならない。
 わたしは制服のまま、ベッドの上で、ただただ反芻していた
 ――なんであんなこと言っちゃったんだろう……。
 頭の中はずっと、零れてしまった感情と、指の隙間から届いた言葉と俯いた顔が繰り返されてる。
 だけど心の中は、心の臓は、あれからずっと重く濁ってて、動いてくれない。
 だからわたしは、ぼんやりとその光景を見続けていた。
 ……あたまがはたらかない。
 そんな自分の状態を把握できるだけの理性と冷静さは残っていた。残ってはいたけど、それは物の役にも立たなかった。
 不思議だ。あれはきっと、ずっと言いたかった言葉だ。なのに今のわたしにその言葉の意味する気持ちが残っていない。
 本当にそんな気持ちがあったのか、分からなくなってしまった。掌に掬った水が、指の間から零れ落ちてしまったみたいだ。
 あの言葉は、嘘だったんだろうか。
 それなら言わなきゃよかった。明日もあの人と会うのに、どんな顔をすればいいんだろう。
 ほんの数時間前に戻って欲しい。今ならきっと、あんなことを言わないで済むから。
 それがどれほど馬鹿馬鹿しい考えか分かってる。それでも考えずにはいられなかった。
 もう昨日までの関係ではいられないだろうから。
 ……好き、だったのかなぁ。
 ぼんやりとした思いが、何度目かも分からない映像の再生に遮られる。
 そうしてわたしはまた、最初の疑問に戻るのだった。
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やが君ワンライ55
初公開日: 2022年06月13日
最終更新日: 2022年06月13日
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お題 梅雨or時間