珍しく休日が重なった斎藤と立香は、大型ショッピングモールへと買い物に来ていた。
昼食を摂った後に日用品と食料品の買い物を済ませて二人で荷物を持ちながらブラブラと歩いている時、立香の足が止まる。
斎藤は数歩先で止まって振り返った。
「立香ちゃん?」
ぼうっと立香が眺めているのはブティックショップのショーウィンドウに飾られている洋服。
立香につられて斎藤も洋服を見た。
あぁ、コレ着た立香ちゃん絶対可愛いだろうなぁ。と思いながら「買う?」と訊ねる。
「うっ」
衝撃を受けたような立香の声。立香の視線は洋服の下に置かれている値札に向いていた。
「……おぉ」
斎藤も思わず声を上げる程の値段だった。
「服にこの値段は……流石に……ね」
眉を下げて言う立香に、斎藤は提案した。
「試着だけでもさせてもらったら?」
「えっ?」
「僕もこの服着てる立香ちゃん見てみたいし」
その言葉に立香は少し頬を染める。そして、小さく頷いた。
店員に話をして立香は試着室へと連れられた。
試着室へと入っていった立香を確認した斎藤は店内にいたもう一人の店員に話しかけた。
「サイズはいかがでしょうか」
「あ、はい。問題ないです」
姿見に映る自分を見た立香は、まるで自分が自分ではないかのように思えた。
気に入った服を着ているからか、表情もいつもより明るく見えた。
そこで「失礼します」と二重カーテンを抜けて入って来た店員。その店員は立香の試着を手伝っていた店員に耳打ちをした。耳打ちをされた店員は頬の筋肉を緩めた後「どうぞお連れ様にご覧になってもらいましょう」とカーテンを開けた。
靴を履き、斎藤の元へ向かう立香。
「はじめちゃん」
「おぉ、凄い似合ってるよ、立香ちゃん」
立香は耳も紅くした。
「お客様、本日のお召し物をこちらにお入れ致しました」
「えっ?」
店員に差し出された紙袋。その中には、立香が先程まで着ていた服が入っていた。
「じゃあ帰ろうか、立香ちゃん」
そう言う斎藤に立香は困惑する。
「待って、この服……!」
「お支払いはお連れ様が済ませておりますので」
満面の笑みで店員は立香に言った。
「はじめ、ちゃん……」
「そういうことだから」
立香の腰に手を宛て彼女をエスコートするように店を出る。後ろからは「ありがとうございます。またどうぞお越しくださいませ」と重なる声が聞こえた。