言い争う声が聞こえてフェイスとジュニアは顔を上げる。それはディノとキースの部屋から漏れてくるもので、二人の言い争う原因はディノが通販で頼んだ大量の段ボールかキースが報告書の提出やセクターのリーダーとしての仕事を忘れていた時に発生するのが殆どでいつものことかとジュニアはゲームへと視線を戻した。
「……ねぇ、なんだかちょっとおかしくない?」
「あ? 何がだよ」
 けれど前者はともかく、後者は頻度が減ってきているし全面的にキースが悪いから声を荒げるやり取りなんて滅多に無い。それに扉が閉まっているというのに声が聞こえてくるほどに二人は何を言い争っているのだろうと不安を覚えたフェイスは、通信を繋げていたゲーム内で短くチャットを飛ばすとログアウトして立ち上がりメンター部屋へと近付いていくのをジュニアも続くようにしてフェイスの後を追う。二人が恋人という関係に収まっているのを知っている故に心の隅で申し訳なさを感じながらも扉はそのままにして中の様子を伺うように耳を立てた。
 よくよく思えばキースとディノが喧嘩をしている姿は見たことがない。説教をして、されてという構図なら何度も目にしているもののお互いを信頼して大切なのだという感情はしっかりと伝わってくるからあまり気にしてはいなかった。だからこそ二人に何かあったのではないかと心配を募らせてしまう。
「……何の話をしてんだ?」
「上手く聞き取れないけど……いつもの感じ、では無さそうだよね」
 近付けば何を話しているのか分かると思ったが、案外聞き取ることが出来ずにフェイスとジュニアも目を合わせて声を潜める。直接言葉にはしないがキースとディノは大好きで大切な仲間だ。いざって時には割り込むべきだろうとアイコンタクトで確認をしていると、部屋の中でキースの声が聞こえた。続いていたやりとりに間が続く。
「そ、そんなこと言うキースなんてき……っ、……好き、だ!!」
「はあっ!?」
「だって嘘でもその場限りの言葉だとしても俺がキースのこと嫌いになれるはずないだろっ!?」
「なんでそこでお前がキレてんだよ!」
 これはディノに加勢するべきか。なんて考えて居た途端響いたのはディノの声。荒げた声での告白に動揺した様子のキースとのやり取りが再び始まっていくのが聞こえてきて気付かぬ内に張りつめていた糸が緩んだようにフェイスとジュニアは息を吐き出した。
「……二人が喧嘩なんてありえないか」
「ディノが喧嘩とか、想像も出来ねーもんな」
「確かに。まだ皆ゲームやってるのかな?」
「そんな時間経ってないしいるんじゃねーの?」
 目を合わせて、どちらからともなく笑いだす。心配して損したというよりも二人が喧嘩なんてありえないかという結論に至ってさっきログアウトしたばかりのゲームへと再び入ることにした。
 暫く経って部屋から出てきた二人はいつもと変わらない様子でピザパーティーがはじまる。これは何のパーティーだ、なんて野暮なことは聞かないことにした。
 
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20220313キスディノドロライk
初公開日: 2022年03月13日
最終更新日: 2022年03月13日
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第48回【お題:喧嘩/試練】