部屋の方から何やら声が聞こえてくる。ディノが自分のスペースでパソコンに向かっていることはよくあることだけれど、大抵はネットショッピングを見ているのとは違いゲーム画面が映し出されていた。
「何してんだ?」
「あ、おかえりキース」
「ただいま、ディノ」
 覗き込んで分かるのはよくやっているゲームの一つだった。スマホでやっていることの方が多い印象で、やはりパソコンでゲームをしているだなんて珍しい。突然『キースパイセン、おっかえり~!』なんて声が聞こえて目を丸くして辺りを見渡すが、部屋の中にはディノとオレ以外の姿はない。
「グレイくんとビリーくん主催でオンラインゲームの配信してるんだ」
「なるほどなぁ」
 電子音になっていたとはいえ、ビリーの声だったというのはすぐに分かる。小さく『こ、こんばんは……』と聞こえた気がしたのはグレイということなのだろう。よく見れば画面上にはディノが動かしているキャラとは別の人物たちと共同で探索している最中のようで、帰宅しての挨拶は既に終わりディノもビリーもグレイもゲームに関する話題へと戻っていってしまう。同じゲームを一緒に進めることに、わざわざ自室で通話を選ぶ必要というのはよく分からない。それでも楽しそうに後輩とゲームをしている姿というのは今まで見ることのできなかったものだ。
 オレ自身もディノに言われるままゲームへと手を出したこともあったが、進行方向に動くことすらできず長続きなどしたことない。機敏な動きで進んでいくキャラクター達に関心を持ちつつ、楽しそうにゲームをしているディノをもっと間近で見てみたいという気持ちが勝っていく。昔は隣で座ったり寝っ転がった状態が常だったが、今は一日の疲れを癒すためにもと別の姿勢を思い浮かべる。
「ディノ」
「どうした?」
 つい小声で名前を呼ぶ。同じように答えたディノは意識を半分ほどこちらに向けているというのは分かるが、残りはゲームに囚われたまま。そのことに少しだけ物足りなさがあるけれど都合が良いとディノの後ろで胡坐をかき、ふわりとディノの全身を脳力で包んだ。
「え、えええっ!?」
「気にしねぇでゲームに集中しろ~」
 不意の事態に響く声が煩く眉間に皺が寄る。宙に浮かせたディノをオレの足の上で腰を降ろさせ、あたたかい体を背後からぎゅっと抱きしめた。相変わらずあったけぇの。肩口に顎を乗せて擦り寄ると言葉に表し難い感情が湧き上がってきて心が満たされる。この体勢だとディノの表情を見ることが出来ないのだけが残念だが、楽しそうな空気を間近で感じることが出来る。そう思っていたのにピタリとコントローラーを動かす指も止めてしまい何ごとかと僅かに顔を上げた。
『ねぇねぇキースパイセン』
「あ? なんだよビリー」
『今生配信中でネ。声だけじゃなくてやってる姿も動画で映してるんだよ』
「……は?」
 再びパソコン画面へと向けると隅の方でグレイとビリー、そして文字が勢いよく下から上へと流れて行っているのを目にして全身が固くなる。配信ってカメラも使うものなのか。てっきり声だけだと思い込んでいての行動は、リアルタイムで視聴者へと流れて行っているという訳で、つまり。
「き、キース。その、流石にこの状態は……」
「…………わりぃ」
 急激に熱くなっていく体に、顔は血の気が引いたような感覚だ。パッとディノを開放して部屋を出ると、しまった扉を背もたれにしてその場でしゃがみ込む。
「アハ。明日のパトロールは二人で一緒に行動してよ」
 頭上から振ってくる面白いものを見ているかのような声に、差し出されたスマホの画面を見る。そこにはエリチャンに送られてくる反応の数々。情報がというよりも行動がはやすぎねぇか。ファンの対応とブラッドの説教、どっちが面倒じゃねぇのかと天秤にはかりながらため息をついた。
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20220305キスディノドロライ
初公開日: 2022年03月05日
最終更新日: 2022年03月05日
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