居間に入ってまず目に留まったのは、テレビを眺める神楽の後頭部だった。
「神楽、沖田くん来てるよ」
「…なんで私に言うアル?」
振り向いて首を傾げた神楽と視線が交わると、沖田は脈拍の調整をする。
「おめーに用があるからだって。…な?」
隣に立つ銀時は、沖田の胸を肘打ちした。
「…これ。渡しにきた」
ギシ、と音を立て、沖田は神楽のもとへ寄る。
隊服のポケットから取り出したのは、大江戸ランドのペアチケットだった。
「…ホワイトデーのお返しってやつ」
「……」
沖田は神楽の顔色をうかがったまま、神楽は口を開けたまま、フリーズしてしまう。
「え…二人揃ってなに固まってんの。…あ〜…オホン!それにしても、全員にこんなお返し出来るなんて税金泥棒は違うな〜!ゲフッ、」
「旦那…妨害すんのかアシストすんのかどっちかにして下せェ」
沖田はすかさず銀時のみぞおちを肘で突き、小声で迫った。
「どう見てもナイスアシストでしょ。沖田くんがモダモダ走ってこないから、天才セッターの俺がトスしてあげたんだ。さっさとアタックしちゃいな」
「…ッ、」
神楽はさっきとは逆の方向に首を傾け、「そっか、全員…」と呟く。
「あ〜…っと。…俺が受け取ったのは、チャイナのチョコだけだから。…そこ勘違いすんなよ」
「!」
神楽の少し驚いた反応を見て、これで察してくれと沖田は強く願った。
「よかったな神楽、楽しんでこいよ。あ、でも沖田くん二人分くれるみたい。太っ腹だねえ。誰と行くか決め…」
「俺」
「…え?」
今日一番の声を張った沖田と、頭にクエスチョンマークを浮かべ続ける神楽。
銀時はヤレヤレと、社長机にもたれかかった。
「…これは俺とお前の分でィ、チャイナ」
沖田は左手で一枚を握り、右手でもう一枚を神楽に突き出す。
「な…なんで?」
今度は、神楽が沖田の出方を試す番。
「…好き」
「…!」
「…だろィ!お前!こういうの!!」
そろそろ引こうと考えていた銀時は、その追撃に大きく転倒した。
「ちょっ…沖田く…」
「ウン」
銀時がヨロヨロと上体を起こした頃、神楽は沖田からチケットを受け取る。
「好き、アルよ。…ゆーえんち」
そう言って、ムフフと目を細めた。
「チャイナ…」
「でも、強いて言うならお菓子で返ってくると思ってたネ」
「…その遊園地の隣に、ス〇パラできたんでィ。そこも連れて行ってやらァ」
「マジでか」
観測不能だった神楽の表情は、どんどん晴れていく。
「…じゃ、今週の日曜」
「分かったアル!」
彼女は押し入れにでもチケットをしまいに行ったのだろう、一旦寝室へと駆けていった。
「…あらら、珍しく耳まで真っ赤だ。一時はどうなるかと思ったけど、頑張ったね沖田くん」
「はあ……ありがとうございます」
沖田は顔を両手で覆い、安堵の溜め息と共に座り込んだ。
たぶんデート編へ続く
ありがとうございました!
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ホワイトデー沖神
初公開日: 2022年03月03日
最終更新日: 2022年03月03日
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ホワイトデー沖神のSS清書ちょっとだけ