しんしんと、全てを覆っていく白い雪花。白に色が消え、吸い込まれていく雑踏が好ましかった。記憶にある野山ほど積もっていく速度は早くない。だが人の気配が近くにある、人の手で備えられた自然でも、雪は一様に降っていた。田舎でも都会でも変わらずに空から舞い落ちている。
羽夕は龍游外でも有名な公園に立ち、景色を眺めていた。氷点下まで下がった息は、吐けば白くなる。指先は熱を奪われてかじかむ。周囲の環境に強い羽夕はあえて『そうしていた』。隠すと言う点で似た者同士の、一年に数度の晴れ舞台に併せた敬意ある装いのようなものだった。
眼差しには近しいものに親しみ、ありのままでいようとする自然を慕う気持ちもある。が、最も捉えているのは鉄骨とコンクリートを飲み込み、美しい白銀の化粧を纏う立派な幹と枝を有する巨大な樹木だった。雪が朝から降り続く龍游でも枝葉の緑を絶やさない大木は公園の名の由来となった妖精・风息だったもの、もしくは遺物と呼べるものだ。
いくら枝が絡み合った太く逞しい枝でも、厚くのしかかった雪はいつしか落ちる。その真下で誰かが埋もれてしまう可能性は懸念されていた。被害を出さないためにも早くから周囲を見張り、雪を適度に降ろす必要がある。議題にあがったとき、いち早く挙手し、易々と頷いたのは羽夕だった。
「ならば、此方が」
初雪が降り、本降りを危惧する声があったのは館にいる執行人であれば誰でも知っている。だが、いの一番に名乗りを上げたのが羽夕であったのにはほぼ全員が驚いた。疑問と興味を持つ視線を一身に浴びるのは多少なりとも愉快だった。羽夕は笠飾りを揺らすことなく、声だけで笑った。
「深雪を眺めるのが一興なだけ。好むもの、得意なものが担当するのが通りというもの。必要ならば尚更。何、易いこと」
簡潔で単純明快な理由が逆に意外でもある。確かに羽夕は気温などの外部の変化に強い。