「なんだと……」
「聞き返すなよ。
 聞こえてんだろ?」
 幽鬼のように立ち上がる一護。
 その姿は、どこか以前に戦った少年を思い出させるようで、少し不気味だった。
「それとも、信じられねぇだけか?」
 重ねる言葉は、朽木白哉の眼をもってしても、嘯いているようには見えない。
「二度も三度も言わせねぇぞ……。
 俺の言葉は信じられなくても」
 だが、頭がそれを否定する。
「てめぇの眼なら信じられるだろ!
 朽木白哉!」
 己の眼なら信じられるだと?
「しっかり見とけよ。
 こいつが俺の、卍解だ」
 馬鹿なことを言うな。
「おおおおおおおおおおおおお!」
 死神として頂点を極めたものにのみ許される、斬魄刀戦術の最終奥義。
 死神として他と隔絶した超然たる霊圧を生まれ持つ四大貴族といえど、そこに至ることができるのは、数世代に一人。
 それを発現できたものは、一つの例外もなく、尸魂界の歴史に永遠にその名を刻まれる。
 だが、こいつはなんだ。
 こいつは、ルキアの力を喰らって死神になった。
 貴族どころか、元来死神ですらない。
 それが何故、卍解などと容易く口にする?
 それが何故、こんな霊圧を放っている?
「卍 解」
 突如として、高まった霊圧は嵐を呼ぶ。
 近くにいた白哉とて例外ではない。
 その霊圧の嵐は吹き荒れ、徐々に終息を始める。
 しかしそれは同時に収束され、嵐は一つにまとまっていく。
 土煙は晴れ、白哉の眼に写ったのは、黒崎一護。
 しかしその姿は、死覇装とも違った服装に身を包み、先ほどまでの大きな刀から、通常サイズの黒刀を持っていた。
「天鎖斬月」
「なんだ……それは……」
 朽木白哉としての感想は、その一言。
 一目見ただけでは判断できない、その形
「そんな小さなものが、卍解、だと?」
 そして同時に押し寄せてくる、絶望感に似た何か。
「ただの、斬魄刀ではないか」
 そう、これは、
「なるほど、極刑といい、卍解といい、貴様は余程我々の誇りを踏み躙るのを好むと見える……」
 失望、だ。
「ならばその身に刻んでやろう!
 誇りを汚すということが、どういう報いを受けるのかということをな!!!」
 荒れ狂う千本桜景義。
 これは、白哉の感情に反応して、荒れ狂っていた。
 踏み躙られた誇り、依然として目の前に立ち竦む黒崎一護。
 そんな彼に、白哉は怒っていた。
 ゾッ
 そして次の瞬間、朽木白哉は死んでいた。
 否、殺される手前で助かった、というのだろうか。
 それほどまでに早く、速く、黒崎一護の鋒は白哉の喉元を指した。
 似たような感覚を、白哉は知っている。
 それこそ、あのときだ。
 なんてことない旅禍が、白哉に恐怖を抱かせた。
 それと似たようなものを、この小僧にも、抱かされた。
「どうもその、「我々の誇り」ってのが、ルキアを殺すことに繋がっているみたいだな」
 鋒は、まるでお前をいつでも殺すことができるんだぞ、と言わんばかりに、こちらの喉元に、存在している。
「だったら、あんたのいう通り、俺はそいつを踏み躙るぜ」
 そして、刀を引いた。
 せっかくの好機を、チャンスを、奇跡を。
「そのために、手に入れた力だ」
 しかし目の前の男は、まるでそんなもの要らないとばかりに、捨て去った。
「何故、私の喉元から鋒を引いた」
 問うた。
「余裕のつもりか」
 その男に、聞きたくなった。
 いや、語りかけたくなった。
「驕りは、勝利の足元を突き崩すぞ」
 いや、これを言わねばならぬと、思った。
「……今一度、言おう」
「貴様のそれは、卍解ではない。
 そんな矮小な卍解などありはしない。
 旅禍風情が、卍解に至ることなどありはしない」
 それは、常識だ。
 今、朽木白哉は、常識を話している。
 当たり前を、普通を、いつものことを、話すまでもないことを、話している。
 確かめるように、確認するように、言い聞かせるように、話している。
「悔いるがいい。
 今の一撃で、私の喉を裂かなかったことをな」
 油断、気の迷い、隙。
 様々な言い方のそれを、朽木白哉は、
「軌跡は一度だ。
 二度目は無いぞ、小僧!」
 荒れる千本桜。
 波を形造るそれは、一護に襲いかかる。
 一護はその軽やかな身のこなしで、波を避け、空を蹴り、白哉に迫る。
 白哉はそれに対応するかのように、千本桜を追わせる。
 避けた先に、先に、先に。
 しかし先読みをどれだけ行おうとも、後出しジャンケンのように一護はそれを躱していく。
 一撃。
 一護の一撃が、白哉に迫る。
 当然、それを千本桜で防御する。
 しかし、千本桜を集中させたがゆえに発生した背後の空白を狙うかのように、一護は移動する。
(追いきれないっ)
 そう結論づけた白哉は、考えを変える。
 一護を観察する。
 一護は白哉の様子に、撹乱に作戦を変更し、残像が出るほどの速さで白哉の周りを移動している。
「まだもうちょい、速くできるんだけどな」
「あまりずに乗るなよ、小僧!」
 語りかけたその瞬間、白哉は手掌を振るう。
 手掌で操れば、速度は二倍。
 それは相手に先読みをさせやすくなる代わりに、得るメリット。
 一護は白哉の手掌よりも先に、千本桜の速力の上昇に驚く。
(捉えた)
 白哉は確信する。
 勝利を、見た。
 けれど、そんな勝利は、
 ガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!
 無数の音に、かき消された。
 図らずもその姿に、またしても、あの少年が重なる。
 不格好ながらも、千本桜を叩き伏せたあの少年が。
 「奇跡は一度、だったよな」
 そこで生まれるのは、隙。
 命をかけた戦闘で、そんなものが生まれれば当然、
「じゃあ二度目はなんだ」
 勝利は敗北へと姿を変えて、襲いかかる。
 刺突。
 それは腹を狙って穿たれたものだ。
 体を捻り刃を己の手で握りしめ、そらす。
 貴族とは思えぬ、泥臭い戦い方。
 いつもの白哉なら、もっと違った方法で回避をしようとしただろう。
 だが、体が先に動いた。
 体が、生きようと、そう思った。
 気づけば、黒崎一護が目の前にいる。
「そうか。
 卍解としての能力の全てを、その小さな形に凝縮することによって、卍解最大戦力での長足戦闘を可能にした。
 それこそが貴様の卍解の、能力という訳か」
 相手の力は、理解した。
 ならば、後は、
「よかろう、ならばその力ごと」
「全て圧し潰してくれるわ!!!」
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BLEACH鬼滅二次創作 78話【連載】
初公開日: 2021年11月22日
最終更新日: 2022年08月15日
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コメント
BLEACH鬼滅の二次創作を書きます。
78話です。
お久しぶりです。
久しぶりに、筆をとってみようと思いました。
現在は動画製作に精を出しているため、頻繁に更新とまではいきませんが、どうにかして番外編までは書いてしっかりと次を書いていきたいと思います。
まだ、この作品をエタらせるには早いと、私自身感じておりますので。
前回のテキストライブ→https://txtlive.net/lr/1625903321371
次回のテキストライブ→https://txtlive.net/editor/1638971135682
作品URL→https://syosetu.org/novel/245544/
ツイッタ→https://twitter.com/kikunohananoyun