首輪がつけられてから3日が経過した。
ちなみに現在の日にちも教えてくれた。
今日は8月20日らしい。
どうやら俺は連れ去られてから丸二日寝ていたらしく、そんな意識は俺にはない。
そしてこの3日間、俺は最高に
「充実している……」
超充実した生活を送っていた。
「どうしたんだ、源氏、今日はもう終わるぞ」
「あ、東仙さん!
ありがとうございました!」
「はは、そんなお礼を言わないでくれ。
こちらも飲み込みが早くて助かっているんだ」
今は夜。
虚圏では常に夜であるため、基本的には時間の感覚がないのだが、東仙さんは時計を所持しているらしく、俺の体内時計を調整するためにも規則正しい生活を心がけてくれる。
「いえ、東仙さんの教え方がうまいだけですよ」
「君のその圧倒的なまでの戦闘経験は、知識というものをつけるだけで化ける。
こうやって目の前で成長していくのを見るのは心地良いものだよ」
「いや、それほどでも……」
東仙さんはめっちゃ優しい。
今まで罵倒と無言の暴力だった今までに比べると、間違っているところは間違っている、あっているところはあっていると話してくれる東仙さんは、仏だった。
しかも、教え方と戦闘スタイルがとても似ていて、学べる所も多い。
最初は怪我が全快していないから、という理由で軽い立会とか座学が中心だったが、俺が息抜きを始めるとみるみると怪我が回復していき、今では普通に戦うことができる。
それと同時に、東仙さんが今まで俺が知らなかったけどなんとなくやっていたことを言語化して教えてくれるから、戦闘に対する理解が深まった。
「源氏はどうも前に出ることで死の危険を回避する節がある。
確かに、前に出ることも大事だが、時として半歩下がることも大事だ」
「隙は作るものというのはたしかに正解だが、君のスタイルだと隙とさえ言えない部分を突くことができる。
直感的な回避と、理性的な回避。
これによる二手先の回避は、おいそれと乗り越えられるものはいない」
「不意打ち、暗殺、それらが得意だからこそ、正面の戦闘を極めることが死なないための近道だ」
もう首を縦に振りすぎてもげる、ほんとに。
あと、この人の太刀筋、ほんとに殺気がない。
ほんとに教えられてるなぁ、って感じの太刀筋で、戦闘中に考える癖がついてきた。
そして、虚圏の城に帰ろうとしたその瞬間、
「なんだテメェ等、ママゴトでもしてんのかァ?」
突如、殺気の塊が、現れた。
「……グリムジョー」
「最近なにか連れ回してるって話があってよ。
統括官様が何してんのかと見てみれば、なんだその雑魚は」
「藍染様からのご命令だ」
「ハッ、その雑魚の面倒を見ることが、か?」
俺は殺気が、大きく分けて2つの種類に分類されると考えている。
一つは、動きのないもの。
もっと簡潔に述べるなら、静の殺気ということだろうか。
大概、馬鹿みたいに強いやつはこれを持ちがちだ。
ただ、殺すという気が存在するそれは、人によっては苦手な人も多いだろう。
ちなみにこれの最大限は未だにジジイが最高。
本気でやるときのあの動かない殺気はマジで人が倒れるくらいだ。
「霊圧も感じねぇ、覇気もねぇ。
おまけに俺を目の前にしてビビってやがる。
吹けば死にそうな野郎だぜ?」
「……お前には、そう見えるのか?」
「は?」
そしてもう一つが、この眼の前の殺気。
殺気事態が生き物、というか意思に応じて殺気が動いている。
こいつの殺気は、獣だ。
まるで、豹。
眼の前のすべてのものが戦うべき対象で、戦うために生きている。
正直、ここまでのレベルは見たことないが、俺はこの最高潮と一週間前に戦っていた。
そう、総隊長。
あの人は巧妙に隠していたが、そのうちに秘めている炎のような殺気は、人生ベストワンだった。
それを考えると、この目の前の殺気は、
「ちょ、やめましょう東仙さん」
「お前には、彼が怯えているだけの人間に、見えるのか?」
「そうだよ、こいつがただのビビってる雑魚じゃなきゃ何なんだよ」
「いや、俺が雑魚なのは変わりないと言うか、別に認めても……」
「彼は、強い」
「あの、東仙さん?」
いや普通に怖いけどね。
めっちゃ怖いよ、ほんとにマジでちびるって。
戦ってもないのにこれくらいの殺気出せるとか正直化け物すぎるでしょ。
しかもこの人虚? なのかな?
穴空いてるし。
霊圧の本質が同じなんだけど、いかんせん強すぎ。
目の前にして尸魂界にいた人たちより遥かに強いんですが。
そんな人にさ、なにやってんの東仙さん。
「なら」
瞬間、俺の体は貫かれた。
「確かめてやるよ」
眼の前の彼と同じ位置。
虚であることを象徴している穴。
彼のもつそれと同じ位置を貫かれ、俺は死んだ。
「あっぶな」
様に見えた。
「何やったんだ」
「え、えっと、スッと、動きました。
俺は右足を引き、体の向きを90度変えて、攻撃を躱した。
そのせいで、俺の胸先三寸を手刀が貫いているのだが、俺の体に怪我はない。
「それは……」
「えっと、ちょっとした小技です」
東仙さんも驚いている。
確かに、東仙さんには呼吸を一度も見せていないな。
今やったのは、もちろん遠雷。
一瞬で霊圧を高め、その後霊圧を消して躱すことで、相手に攻撃が成功したと誤認させた。
ただ、今の一瞬に呼吸をする暇はなかった。
本来、全集中の呼吸には一瞬の溜めが生じてしまう。
だからこそ、今の一瞬は本来であれば単純な回避になるはずだったが、俺はここに来て、新たなことができるようになったため、避けることができる。
「チッ」
俺が東仙さんに対して受け答えしていると、眼の前の手刀が拳の形に変わり、俺の顔面に襲いかかる。
もちろん、鼻先スレスレで躱そうと試みるが、
「死ね」
拳は俺の顔面の前に来ると、その手を開いて俺の顔を掴みに来る。
思わず、俺はその襲いかかる手首を掴み、止めようとする。
「えっ、力強」
「人間如きに止められるかよ」
「源氏!」
「危ないって」
ただし、そんなので止めれるとは思うなかれ。
俺が力を入れてもその手は俺の顔面を掴みに来ようと迫ってくる。
東仙さん、焦るんならそんな挑発的な言葉をまずかけないでほしかったなぁ、と思いながらも、俺は迫ってくる手が動かないことを利用する。
まずは足を地面から離し、地面にそのまま落ちる。
もちろん、俺が後ろに避けていることを理解したのか、手は俺に迫ってくる。
このままだと、俺は地面に叩きつけられるが、
「おら」
地面から離した足……いや、正確には地面を蹴り上げた足で、お相手虚さんの顔面を更に踏みつけて、空中一回転を披露する。
疑似バク宙だ。
いや、もうちょっと武道的に話すとするならば、合気道の空気投げをされにいった、というところだろうか。
「よっこいしょ」
そして残るのは、前のめりになったお相手虚さんと、バク宙をしたあとの俺。
「テメェ……」
流れる静寂。
俺は知っている。
この後を。
「ぶっ殺してやろうか!」
「辞めろ」
「東仙! テメェ!」
逃げる準備は万端だった。
回復しているし、超絶ダッシュを見せてやろうと思っていたが、その準備虚しく、東仙さんが抜刀していた。
あ、もちろん柄悪虚さんも抜刀しようとしてたよ?
柄悪虚さんの首元に今は東仙さんが刀を添えてるけど、俺それに安心してもいいんですか?
逃げたほうがいいですか?
「止まれ、それをすれば藍染様のお怒りを買う」
「はっ! こんな虫! いてもいなくても気にならねぇだろうがよ!」
「だが、君はそんな虫さえも、先程のやり取りで潰せなかった」
「だまってろ! 今すぐ……」
「グリムジョー!」
そのタイミングで、遠くからあんまり強くない霊圧と、声が聞こえてくる。
姿は見えないが、こちらに聞こえるということは、
「……まぁいい。
その程度の虫、いてもいなくてもいい」
柄悪虚さん……グリムジョーさんは刀を納刀して、声の聞こえる方に一足で行ってしまった。
東仙さんはその姿を目で追いながら(見えてないからその方向に顔を向けている)納刀し、
「済まなかった。
君のようなものがいわれのない暴力にさらされるのが我慢ならなくて」
「それと言うなら最初から助けてくださいよ」
「あぁ、最初ので躱せるとは思っていたからね」
「えぇ……」
「ところで、先程の技だが……」
会話を続けていく。
まぁ、これくらい充実していたらこの程度の障害はつきものだ。
あれくらいの理不尽絡みは日常茶飯事。
それくらいなら、全然大丈夫、そう思っていた。
翌日
「あ、源氏くん。
これから現世に行ってくれない?
この子たちと」
どうやら俺は現世に帰れるらしい。