朝。その日の目覚めは、絵に描いたような清々しいものだった。そして、なんだかいつもと違っていた。
まず、目の前の天井に見覚えが無い。とても白くて無機質な天井だった。その他にも目を配ってみる。横たわっているベッドはその上のシーツや布団はどれも白く清潔であり、自分の家のものではないのが明らかだった。右にある窓からは、木々がざわめく音と鳥たちが囀る声が聞こえ、それから一点の曇りもない青空が広がっていた。自分の部屋ではベッドの右に窓は存在していない。そして、ここはなんだか消毒液臭い。
そこでようやく、ここが病院で、そして自分が入院病棟に入っているということに気が付いた。驚いて上体を起こしてみると、頭がガンガンと揺らされたように痛んだ。気持ち悪い。俺は、いったいどうしてしまったんだろうか。そう思い、昨日のことを思い出そうとするが、鈍い頭痛と気持ち悪さではっきりと思い出せない。さらにそこで、ズキリとした痛みが右足から走ってくる。布団をおそるおそるめくってみると、そこには白い包帯とギプスでぐるぐる巻きにされ通常より二倍以上の太さになった右足が現れた。どうやら俺は足に大ケガを負ってここに入院しているらしい。それでも、なぜこんなケガをしてしまったのか、まったく経緯が思い出せない。
確か昨日は……、親友の結婚式に参加して……、それから友人挨拶を任されていたから初めから緊張していて……、それで……。
そこまで考えて、あっ、と声をあげそうになった。まさか俺は……!!
それと同時にガラガラと部屋のドアがスライドして開く音が聞こえた。昨日結婚式を挙げたばかりの親友とそれについてくるように入ってきたカワイイ奥さん。それから、昨日俺と一緒のテーブルについていた幼馴染。三人が俺の病室に入ってくる。見舞いに来てくれたようだった。そして、みんな呆れたように笑っていた。
親友が、ため息をついてから口を開く。
「おはよう、元気そうで何よりだ。ところで……、昨日のことは覚えているか?」
「……テーブルについて、緊張を紛らわすために酒に手をつけたところまでは思い出した……」
俺以外のみんなが静かに笑い声をあげた。俺は今、混乱と恥ずかしさのなかにあった。どうやら『まさか』の予想は当たっていたらしい。
「お前な、酒弱いくせにあんなに飲むんじゃねぇよ。それでも挨拶ができたお前はすげぇけどな」
「べろべろに酔っぱらった挙句に――」
三人が顔を見合わせる。そして、それから俺の方へ改めて向いた。
「式場から出る階段で派手にコケて頭をうって昏倒、さらに足まで折るってどういうことなの?」
「……」
俺は文字通り頭を抱えた。
他にはないくらいのすがすがしい朝。俺は二日酔いの中、とっても小さな情けない声で三人に謝罪した。恥ずかしすぎて、溶けてなくなりそうだったが、それと同時に足の痛みがそれを拒むように痛んだ。