書き終わるまで終われません。
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 黒い空間に青い光が差す。ある者はその光を遮るように走り抜け、ある者は流れに身を任せて光の中を漂っている。
 どことなく現実離れした空間の中、これが現実だと知らしめるのは周囲の喧騒。家族、友人、恋人と戯れる多くの人々の声が、非現実的世界へ引き込まれそうになる意識を現実世界へ押し留めている。
 ────ここは、海辺に建つ大きな水族館の中だった。
        *
「さすが、地上の水族館は地底と比べて規模が違うね!」
 巨大な建造物の中に設置されている数々の水槽。大きさも形も様々なそれらの中では、これまた大きさも形も違うたくさんの魚達が生き生きと泳いでいた。
 地底のニューホームにも水族館はあった。しかし土地が狭く、かつ水辺がスノーフルとウォーターフェルの池くらいしかない地底では水族館に展示できる生き物の種類も数も限られていたため、都の水族館といえどもそれはそれは狭苦しい場所だったんだ。
 でも地上には星の表面積の七割を占める、『広大』という言葉では到底表現できないほど大きな海があり、残り三割の陸地の中にもたくさんの川や湖がある。その中で暮らす生き物の種類、数は地底のそれとは到底比較にはならず、更には今もなお新種が発見され続けているっていうじゃないか!
「ガラス越しに魚を見るだけなんて何が面白いんだろうと思っていたけど、なかなか興味深いね」
 正直、表情も分からない魚達を眺めるくらいなら直ちにおうちへ帰って表情豊かなボクをテレビで見た方がよっぽど有意義だと思っていた。だけど実際に自分で足を運んでみて分かる、それとこれとは比べるようなものじゃないってこと。
「ねぇ、あっちの水槽も見たい!」
 そうして一つ一つの水槽にいちいち張り付き、悠々と泳ぐ魚達を見ていたボク。そんなボクの手を引いたのは一緒にデートをしにきたダーリンだ。
 ダーリンは一つの水槽、一匹の魚をじっと観察するよりも、どんどん先に進んで新しいものをたくさん見たいようだ。それにしても少しせっかちじゃないかな、と思いつつそんな彼女の気持ちも分かるから、ボクは「はいはい、すぐ行くよ」と返事をしながらその小さな背中を追いかけた。
 小魚が群れを作っている水槽、巨大魚が悠々と泳いでいる水槽、ウミガメが来館者達に見せつけるように泳ぎを披露している水槽……たくさんのイカが泳いでいる水槽を見たダーリンがぽつりと口から零した「おいしそう」という呟きは聞こえなかったふりをして、ボク達はどんどん奥を目指す。
 もっと暗く、冷たい────この星のいちばん深い世界へ。
        *
 アザラシへのエサやり体験を終え、とても怖い顔をしたサメが泳いでいる大水槽も堪能し、次の目的地へ向かうボク達。大水槽の横、暗がりの中に分かりづらいけど次のコーナーへの道がある。今までの展示スペースに比べるととてもこじんまりとした、人と人がすれ違える程度の幅しかない道。
『深海コーナー』
 そんなシンプルな説明書きがされた入口。暗闇がぽっかりと口を開けてボク達が足を踏み入れるのを待っていた。
 正直、今度こそボクは気乗りしない。ここに至るまでは綺麗な熱帯魚や可愛いお魚さん達をたくさん見られてとても楽しかったけど……深海魚って、どれもこれもグロテスクなものばっかりだから。
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 ↑ここまで昨日書いた文章
 ↓今から書く文章
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 どうしてあんな醜悪な造形をしているんだろう。深海という世界で生き延びるために必要な能力を有した姿である……ということは知っているものの、ボクにはあれが、カミサマが地上の生物を創造した後、使わなかったパーツを継ぎ接ぎして生み出した結果出来上がったモノのように見えるんだ。
 ……と、乗り気でないボクを置き去りに、ダーリンは深海コーナーへ飛び込んでいく。一滴の雫ほどの迷いもなく。
 ────まるで獲物が自ら飛び込んでくるのを待っている深海魚の如く、大きく口を開けている暗闇。
 軽やかな足取りのダーリンが、その暗黒の中に吸い込まれていく。
 青と紫の横縞の服が、海の底へ溶けていく────
「────ダーリンッ!」
 思っていた以上の大声が出た。それなりに大きな喧騒の中にも響き渡り、水槽の中の魚たちをも驚かせてしまいそうなほど。
 ダーリンはもちろん、周囲の人々全員の目が水槽から逸れてボクを見た。目立つのは大好きだけど、この目立ち方は歓迎できないな……とばつの悪さを感じながら、つかつかとダーリンに歩み寄る。
 簡単に見失ってしまえるほど小さな体。それがまるで、泡のように消えてしまうのではないかという恐怖心と焦燥感に煽られて────
「────走ったら危ないよ、ダーリン」
 適当な理由をつけて、彼女の手を取った。
 根拠のない焦りを誤魔化すためのボクの言葉。それを叱られたと感じてしまったのだろう、ダーリンは眉を八の字にして「ごめんなさい」と謝った。
 ちくりと胸に刺さる罪悪感。確かに館内を走るのはマナー違反だけど、大声を出したボクの方がもっと悪いのに、という罪の意識が滲み出る。
 だけど、いきなり「キミが消えてしまいそうで怖かった」なんて言ったらダーリンが困惑するのは明白。だから怒鳴りつけた理由だけは伏せて「ボクの方こそ、大声出してごめんね」と謝罪の言葉を口にした。
「お互い、次から気を付けようね」
 そう言って、改めて深海コーナーの入口へ向き直る。────先程ボクが感じた恐怖と不安は消えていた。あれほど恐ろしく感じられた真っ暗な入口が、今はただ順路通りに進むための通路にしか見えない。
 暗く、冷たく、静寂に満ちた濃紺の世界。二人、手を繋いで海の底を歩く。
 水槽の底でじっとうずくまっている深海生物、そして通路に展示されている奇妙な造形の標本を見て、ダーリンは目を輝かせていた。
 ……だけど。
 ボクの大事なフリスクちゃんを連れていこうとするなんて。ボクはやっぱり、この『深海』というものを好きになれそうにない。
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 あっという間でしたが終了です! 御覧いただきありがとうございました!
 今から軽く読み直してから閉めます。
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 読み直し終わったので終了します。お越しいただきありがとうございました!
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【短編】メタフリ
初公開日: 2021年09月21日
最終更新日: 2021年09月21日
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なしひとへのお題は『君のことが好きなんだ・泣けない死神・解けないように絡める指』です。
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