完成するか疲れるか洗濯が終わったら終了
────────────
「いつもぼくばっかりドキドキさせられてる」
 突然ダーリンにそんな不満を漏らされて、ボクはとても驚いた。今日もデートの帰り際、「気を付けてね」と唇が触れるキスをしただけなのに。
 不満、という言葉を用いるにはあまりにもかわいすぎる不満だ。恥ずかしがりやさんなボクのダーリン。今みたいな軽いチューですら躊躇われてしまって思い通りになってくれないことも多いけど、こうして恥ずかしがっている姿もキュートなので、ボクはそんな性格のダーリンが大好きだった。
「キミだけじゃないよ。ボクだって顔に出していないだけで、キミと一緒にいる時はドキドキしっぱなしさ。ほら、聞いてごらんよ」
 そう言ってダーリンを抱き寄せる。耳をボクの胸にあてさせた。
 ボクの胸の中、たくさんの金属製の部品や電気を通すための銅線が張り巡らされているその一番深いところで、モーターが激しく稼働していた。平時と比べるとモーターの回転速度が一.五七倍も速く、振動も大きい。こんなに鼓動が速くなるのはダーリンと一緒にいる時か、ステージに立っている時くらいだ。
「どうだい? ボクだってドキドキしているだろ?」
 ……とは言ったものの、ニンゲンであるダーリンにボクのモーターの音の違いなんて分かるのだろうか。ニンゲンの心臓の音とは全くリズムが異なるし、そもそもダーリン、ボクのモーターの音なんて聞いたことあったっけ。
 そう考えながら両腕の中に閉じ込めているダーリンを見下ろす。と、やっぱり不満げな表情は解消されていなかった。当たり前だけど、こんな小さな子にロボット特有の身体機能まで理解してもらおうというのは難しいのだろうか。
 ────しかし。ダーリンは「ちがう」と首を横に振る。何が違うのか、そう問いかけたボクへの返答は、全く予想だにしていなかったものだった。
「これはワクワクしてる時の音! ドキドキしてる時の音じゃない!」
「……は?」
 ぽかんと口を開けてダーリンを見返す。驚きすぎて思考が停止し、このボクが言葉を失ってしまった。
 先も言った通り、ダーリンにロボット工学の知識はない。というか、それらに詳しいアルフィーでさえ、ボクのモーター音からボクの感情を読み取るなんて芸当は不可能だろう。
 それを、ダーリンが。他ならない、ボクのダーリンが!
 なおも言葉が見つからないボクの胸に、ダーリンが再びピタッと耳を寄せた。すると先程までの不満げな表情から一変、とっても嬉しそうにニコニコと笑う。
「今度はちゃんと『ドキドキの音』だね!」
 ボクのその音を聞けて満足したのだろうか、ダーリンはボクの胸からぱっと顔を離した。
 モーターの回転速度は平時の一.六七倍速。彼女はその僅かな差異を聞き分けたというのか。────いや、きっと理屈じゃない。これがボクの音だから、そしてそれを聞いたのがダーリンだったからこそ、感情を聞き分けることができたのだろう。
「それじゃあ、もう日が暮れるから帰るね」
「あっ……ああ、うん、気を付けてね!」
 なんという切り替えの早さ。ボクに仕返しできたことで機嫌を良くしたらしく、ダーリンは「バイバイ!」とお別れを言って走り去っていく。いつもなら「今日は楽しかったよ、ありがとう」とか「次のデートはいつにする?」という言葉を添えるところなのに、動揺のあまり全然気の利いたことを言えなかった。
 夕日が差し、長い影を地面に落としながら、一人、残されるボク。ダーリンの姿が見えなくなってやっと我に返り、「ああ、もう!」と悔しさのあまり地団太を踏んだ。
「────この気持ちを! キミは一体どうしてくれるんだ!」
 モーターの回転速度は一.七二倍速。もっともっと速くなったら回路が焼き切れてしまうかもしれない。自分を落ち着けるために大きな声を出してみたけれど、ボクの『鼓動』は更に速まっていくばかりだった。
────────────
 終了です。お疲れ様でした。
 軽く読み返して修正したら閉めます。
 ハートありがとうございます!
────────────
 読み返し終了したので閉めます。お越しくださりありがとうございました!
 近いうちにPrivatterへ投稿する予定です。
カット
Latest / 30:43
カットモードOFF
文字サイズ
向き
チャットコメント通知
【短編】メタフリ
初公開日: 2021年10月26日
最終更新日: 2021年10月26日
ブックマーク
スキ!
コメント
『UNDERTALE』のメタトン×フリスクの二次創作小説を完成するか気が済むまで書きます
【短編】メタフリ
UNDERTALEのメタトン×フリスクの二次創作小説を書きます完成するまで終われません
直線
【短編】メタフリ
UNDERTALEのメタトン×フリスクの二次創作小説を書きますTwitterの#毎月1日は「メタフリ…
直線
影人形
宿伏の、よくわからない話です。語り手は恵の息子のはず
あぼだ
塚口サンサン劇場「ふしぎの海のナディアセレクト前半・後半」見てきました!
今日サンサン劇場で見てきた「ふしぎの海のナディアセレクト前半・後半」の感想を書いていきます。
人形使い