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影が長くなってきた夕暮れ時。すう、すう、という微かな寝息のリズムに合わせて、体にかかっている毛布が上下している。
その寝息はそよ風の音にも掻き消されそうなほど薄弱で、それに伴う胸の上下は空気すら動かないほどに穏やかだった。
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時は数刻前に遡る。
ボクの家でデートをスタートしたボクとダーリン。今日は高画質大画面のMETAブランド製テレビを用いた映画鑑賞会だった。
一緒に映画を観る時はいつも恋愛物を選ぶボク達だけど、毎回同じジャンルのものを観るのも味気ないということで、今日は初めてミステリーを選んでみた。亡くなった主人公の父が莫大な遺産をどこかへ隠していて、遺言状に書かれていた暗号を解き明かし、遺産を見つけ出す────という話。
謎が謎を呼ぶ展開とそれらが物語の最後に鮮やかに解き明かされる爽快感、そして遺産を求めるニンゲンたちの醜く、しかし共感性の高いリアルな心情描写。とても面白くて、隣にダーリンがいることも忘れてすっかり見入ってしまった。
そして流れるエンドロール。監督の名前を憶えて、ボクはやっと「面白かったね、ダーリン!」と横に座っているダーリンへ視線を向ける。────ソファの肘掛けに寄りかかって、すやすやと可愛らしい寝言を立てているダーリンが、そこにはいた。
どうやらダーリンには退屈な映画だったようだ。面白かったね、と感想を語り合えない残念さと、無理もないかと納得する気持ち。まず遺産相続で揉めるという展開がまだ子供のダーリンには理解できない部分だっただろうし、加えて莫大な遺産を目の前にして狂ってしまうニンゲンの気持ちも彼女は理解できるまい。
確かに大人向けの話ではあった。……そういえば途中でダーリンに話しかけられたけど、映画に集中していたボクは生返事をしてしまった気がする。映画は退屈でボクにも構ってもらえず、暇になったダーリンはそのまま寝てしまったのだろう。
それなら勝手にボクの家の中を探検してくれても良かったのだけど、いい子であるフリスクちゃんはそれも申し訳ないと思ってしまった様子。むしろ申し訳ないのはボクの方なのに……
……と考えつつ。滅多に見られないダーリンの寝顔が見られてラッキーだ、なんて思ってしまうボクもいる。
まるで線のように細い目をしたダーリンは元々起きているのか寝ているのか疑わしいことがある。だけど今は間違いなく熟睡中だ。だってボクがこんなに熱い視線を向けているのに全然リアクションがないんだもの! いつもだったら照れて顔を背けるところなのに!
「……」
エンドロールも終わり、テレビ画面がチャプターセレクトへ戻ってきている。映画のメインテーマである壮大な音楽が鳴り始めたものだから、ボクは慌ててテレビの電源を落とした。あんまりうるさくしてしまうとダーリンが起きてしまう。
テレビのリモコンを手に取る際、少しソファを揺らしてしまったけれど、それでもダーリンは目を覚まさない。そういえば最近は勉強と親善大使の仕事の両立で休日がほとんどないと言っていたから、疲れていたのかもしれないね。
そんな疲れている状態でもボクに会いに来てくれたフリスクちゃん。とても嬉しいし、いじらしい恋人の姿に愛しい気持ちがこみ上げる。
本当なら抱き締めたい。キスをしたい。────だけど寝かせておいてあげたい。ボクの隣で安心していてほしい。
────どうか、起きませんように……
心の中で念じながらソファから立ち上がる。そっと細心の注意を払ってダーリンの背中と膝の裏に腕を回し、持ち上げた。
小さく、細く、軽い体。まるで鳥の羽のよう……というのはさすがに大げさな比喩表現だけど、そのくらい緊張して抱き上げないと手折ってしまいそうなくらいの儚さを持っていた。
起こさないように、起こさないように。普段は鳴り響かせているヒールの音を殺して、そっとドアを開け、隣の寝室へ。ボクが普段使っているキングサイズのベッドにその小さな体を寝かせた。
枕も貸してあげて、優しく毛布をかける。……寝息のリズムに乱れはない。楽しい夢でも見ているのか、穏やかな寝顔を見て安心したボクはベッドの端に腰を下ろしてダーリンの顔を見つめた。
いつもみたいにカラオケでおおはしゃぎしたりお洋服屋さんでファッションショーをするデートも楽しいけれど、たまにはこういう穏やかな時間をゆったりと過ごすのも悪くないかもしれない。……そう、たまには、だけど!
*
……といった出来事があり、現在の時刻は夕方。カーテンがオレンジ色に染まり始めた頃。
こうなると日が落ちて真っ暗になるまで時間の問題だ。晩ごはんの時間までにはダーリンをおうちへ帰さないといけないから、そろそろ起きてもらわないと困る。
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すみません5分休憩してきます(22:14~)
戻りました。再開します
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本当なら起こすべきなんだろうけど、起こしたくない。もう少しダーリンと一緒にいたい、もう少しこの珍しい寝顔を眺めていたい────とワガママな思いを持って、ボクは彼女を見守っていた。
……そういえば、以前もこんなことがあった気がする。あれは何か月前のことだったか、ダーリンが風邪をひいてしまい、彼女の母であるトリエルも仕事を休めなかったため、たまたま手が空いていたボクが(本当にたまたまだ。地底でも地上でも世界一の大人気スターであるこのメタトン様の予定なんて滅多に空かないんだから!)急遽ダーリンを看病する役を担うことになったんだ。
あの時もこうしてダーリンの寝顔を見つめて────柔らかくて、熱のある頬っぺたにキスをした。あの頃はボク達はまだただの友達でお付き合いをしていなかったからまさか唇にチューなんてできるわけがなかった。
────だけど、今なら。
ベッドを揺らさないよう、慎重に。大きな体を乗り出して────ダーリンの小さく柔らかな唇に口付けを落とす。
熱くはない。あの時と違って風邪をひいて寝込んでいるわけではない、ただお昼寝しているだけのダーリン。だけど────ダーリンじゃなくてボクの方がなんだか熱っぽい。おかしい、ダーリンとキスなんて何度もしているはずなのに。
柄にもなく照れてしまってなんだか恥ずかしい。ダーリンに見られなくて良かった、寝ていて良かった────なんて考えながら今度こそ彼女を起こそうと、一瞬背けた顔を再びダーリンの方へ戻した。
……すると。
「……」
「……」
「……ダーリン、起きてるよね?」
ほんの三秒前と比べ、明らかにダーリンの顔が真っ赤に染まっていた。
さすがの照れやさんのダーリンでも、寝ている時にチューされたからといって勝手に顔が赤くなるなんてことはないだろう。いつから起きていたのかは分からないけど、おそらくボクが口付けた時には目覚めていたはずだ。
「……バレた?」
なんて言って照れ隠しのように笑う。体にかかっていた毛布を引き寄せ、赤い顔を隠しながら目だけを出してボクを見た。
「バレバレだよ。まったく、みんなキミのこと「表情が分かりづらい」なんて言うけど、節穴だね。こんなに分かりやすい子がどこにいるのさ!」
なんて言うのはボクがダーリンをよく知っているから。ホットランド、アルフィーのラボで出会ったばかりの頃なら今ほど分からなかったことだろう。
「……さあ、もうそろそろ帰る時間だよ。ほら、送ってあげるから起きて」
毛布の上からぽんぽんと肩を叩く。けどまだ頬から赤みが引かないダーリンは、今度は頭から毛布を被って「イヤだ」と駄々を捏ねた。
「せっかくメタトンと会えたのに、全然デートらしいことできてないもん。もっと一緒にいたい」
「……おっと、熱烈な愛の告白は嬉しいんだけど、そろそろベッドと毛布を返してもらわないとボクの寝る場所がなくなっちゃうんでね!」
危うく絆されるところだった。「もっと一緒にいたい」、なんて、子供の言うことだから「あと五分だけ遊ぶ!」っていうのと同じくらいの意味で言ってるんだろうけど、恋人相手に簡単に言っていい言葉ではない。
オーバーヒートしかけた機体の温度を調整して抑え、ベッドの上のダーリンを追い回す。ダーリンもダーリンで「きゃー!」と悲鳴を上げながらも楽しそうだ。
だけどキングサイズとはいえたかがベッドの上、ボクの長い腕なら端から端まで簡単に届く。ダーリンの体を捕まえて抱き寄せた。……やっぱり小さい。こねこのようで可愛らしい。
捕まっちゃった、とけらけらと笑うダーリン。毛布をマントのように体に巻き付けたまま、頭をボクの胸に預けてくる。────そして。
「────メタトンのにおいがする」
心の底から愛しそうに呟かれた、その声によって。ボクは今度こそオーバーヒートを起こし、ほんの少し前までダーリンが寝ていたそのベッドで介抱されることになるのだった。
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