久しぶりにデュースと被った休日。朝から外で待ち合わせて思う存分デートを楽しんでから、デュースの家で二人きりのピザパーティーを開いた。Lサイズを二枚ぺろりとたいらげ、ローテーブルに潰した空き箱が重ねてある。
腹がくちくなったところで、何となく付けっぱなしにしていたテレビを眺めていた。SNSでバズった動画を集めたバラエティ番組。デュースの肩に頭を乗せて、犬猫の愛らしい姿をぼんやり見つめる。
猫じゃらしを追いかけてころんと仰向けになってしまった猫の次に映されたのは、ベビーベッドに収まっている赤ん坊。フライドチキンを目の前に持ってくると何故か笑うらしい。ナレーションの通り、号泣していたはずの赤ん坊にチキンを見せるときゃらきゃら笑った。
「かわいいな」
デュースがぽつりと呟く。エースに話しかけたわけではなく、ただ思ったことが溢れただけのようだ。エースは体勢をそのままに、デュースのソファに置かれた手を握る。
「結婚する?」
「……寝ぼけてるのか?」
「こんなこと、冗談で言うわけないじゃん」
前々から『子供が欲しくなったら結婚しよう』とは伝えていたし、特に突飛なことを言ったわけではない。それでもデュースが握りこぶしを作ったので、エースは身体を起こした。
「……まだふたりでいたい、から、子供はもうちょっと後で……」
「かわいーの」
「うるせぇ」
じわりじわりと耳を赤くしたデュースは、コップに半分ほど残ったコーラを呷った。
「あと苗字変更の手続きしたくない」
「お前そっちが本音じゃねーだろうな」
照れ隠しなのは分かっていたけど仕方なく乗っかってやる。ほ、と肩の力を抜いたデュースが頬を膨らませてみせた。
「印鑑変えたり、結構面倒臭いんだぞ」
「いい加減サインに変えろよ魔法執行官」
公務員の手続きが面倒臭いのは、一応公務員の端くれであるエースにも分かる。本当に面倒臭い。マジで面倒臭い。教師になった初日、職員室の机の上に大量の書類を積まれた恐怖が蘇った。
エースが遠い目をしていると、デュースがこてんと甘えるように頭を預けてくる。
「……でも、指輪は買いたい」
「指輪?」
「その、この前、エースのマジカメの通知が見えて」
「え」
デュースが言った『マジカメの通知』にはすぐに思い至る。前に会ったとき、エースが風呂に入っている間にユニバーシティの同級生から連絡が入っていた。同窓会の出席確認という業務連絡だったのだが、あからさまにエースに好意があるように見えたのでキッパリ突き放してある。
「あれは、」
「別にお前を疑っているわけじゃなくて」
弁明しようと口を開いたエースを、早口のデュースが遮った。
「カレッジの先生は知り合いばかりだから油断していたけど、そういうのもあるのか、と思って、だから、」
む、虫除け、って言うんだろ? それがしたい。
エースの鎖骨に顔を埋めながらぎこちなく言うデュースに、思わず頭を抱える。
「お前さあ〜〜〜〜」
「……なんだ」
「ほんとかわいい」
衝動に任せて腰を抱き寄せ、艶やかな髪にキスを落とした。エースからの愛情を疑われないのが嬉しい。それでもちょっぴり嫉妬して、ささやかな我儘を申し訳なさそうに言うのが愛おしい。
ぐりぐりとネイビーに頬を擦り付けるとデュースが呻いた。
「わかった。指輪つけるから、オレにも何か買わせて」
デュースの左手を取って、ぐるりと薬指の付け根をなぞる。
「仕事中に指輪はムリっぽいけど、腕時計ならできる?」
「できる、けど」
壊すかもしれない。しょんぼりと落ちる声音に笑って、指を絡めて繋いだ。
「そんなの、何回でも買ってやるよ」