キラキラ、ピカピカ。そんな言葉がしっくりとくる空間の隅で一番上のボタンまで閉めた襟元に指を入れて隙間を作る。一瞬でも息が通りやすくなったことに安堵しては自然と上がっていた肩の力が抜けていく。
 入所してから随分と経って、今日はエリオスのスポンサーが集まっているパーティーが催されていた。普段はだらしのない格好で研究室に引きこもっている博士ですら顔を出しているからそれは重要な催しなのだろうという事は察することが出来た。それにしてもヒーローは新人と言えど全員参加とは。面倒だ、というよりも場違いじゃねぇのか、と頭の中で思う。家柄的にもこういった場に慣れているであろうブラッドは、パトロール中に応援してくれるファンへ向ける表情とはまた別の笑みを作っている。ジェイも有名なヒーローとしてパーティーへの参加は珍しくないのだろう。テレビの中でよく見るような顔触れに囲まれている姿を見ても、オレにはどれだけの時間がかかってもうあぁやって愛想笑いを浮かべることは出来ないのだろうと思う。
 適当に会場内で出された食事を口にして、声をかけられたら短く言葉を返しての繰り返し。酒を飲めたらもう少し違うだろうが、生憎飲みたいとは思わないから近くにあったソフトドリンクを手に取って喉を潤した。早く終わらねぇかな、なんて考えながら会場を見渡していると見慣れた後ろ姿が向かい側の壁の近くからテラスに出るのが視界に入った。思えば普段から一人で騒がしい存在でこういった場は好きな部類だろうに、珍しく大人しい。どこか調子悪いのだろうか。そんな誰に育てられたかは分からないお節介心が掻き立てられてディノが消えた方へと足が向く。
「……ディノ?」
「あれ、キースこんな所でどうしたんだ?」
「いやこっちの台詞だっつーの」
 ディノは、肘をついてぼうっと空を眺めていた。まるでそこだけ見るとドラマや映画に出てくるようなシーンだったが、声をかければいつも通りのディノがそこにいた。きょとんとした表情はすぐに何かを察したのか眉を八の字にさせて笑う。誰も見ていないことを理由にしてはネクタイを軽く緩めて一番上のボタンを外し、ディノの隣まで行くと柵に体を預けて空を見た。微かに視界に映る室内の光が鬱陶しいものの、遠い空で星が瞬いてるのが見えた。
「なんだか、こういうの慣れなくってさ」
「お前がか?」
「もう。キースは俺のことなんだと思ってるのさ」
「……ま、オレもこういったのよりもディノ達とするピザパの方が楽しいとは思うけどな」
「え、」
 パーティーと名前の付くものだったら、こういった堅苦しいものでは無くて気軽にリビングで突然開催されるものの方が良い。誰も気取らず、作らず、各々の楽しいと思ったことをする。そんな些細な空間はアカデミーの頃からずっと居心地が良くて好きだった。だからこそ今日みたいな、息が詰まるような空間は苦手だ。ディノも同じような理由だろうかと顔を向けてみると普段から大きい瞳を更に丸くさせてじっとオレを見つめている。
「どうかしたのかよ」
「キース、ピザパーティーのこと楽しく思ってくれてたのか?」
 綺麗な音を奏でている生演奏を背後にしても、恋しいと思うのは映画やゲームの音楽に同じ時間を過ごしている奴等の笑い声。それが楽しいと、好きだと口にしたことはあまりなかった気がする。予想もしていなかった妙な部分を拾って驚いてるディノの反応にやけに顔が熱くなっては口を手で覆った。
「……それがどうにかしたのかよ」
「にひっ。なんでもなーい。明日は昼からピザパ―ティーでもしちゃおうかな」
「勘弁してくれ」
 一瞬見えたような気がする憂いの姿はどこに行ったのやら。嬉しそうに、楽しそうに明日のことを考えては口にしているディノを見ていると何もかもどうでもよく思えてきては肩を落とした。堅苦しい服を脱いで、息のしやすい格好で。大切な話もそうでない話もできる、笑っていられる空間が好きだ。そう理解してはブラッドが見つかるまでの時間を輝かしい空間から離れた場所でディノと二人でくだらない話を続けていた。
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20210911キスディノドロライ
初公開日: 2021年09月11日
最終更新日: 2021年09月11日
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