第一回、松※萩ワンドロワンライ
日にち:9月11日(土)
時間:21:00~22:00
お題:非番の日の朝
現在時刻21:05 です。
朝…
勤務明けかな
こう~ 寝起きの二人は別の機会でも書きそうな気がするしな
新しい朝が来た。希望の朝だ。
なんて健康的なことを考えられるのは心身ともに健康で規則正しい生活を送れている人間の特権である。深夜に突然の爆発騒ぎ、緊急出動、交通規制に検問に避難誘導に犯人追跡、脳が焼き切れるような壮絶なカーチェイスの末に犯人の車を大破……もとい、確保し、引きずり出して身柄を引き渡したころには松田も萩原もすっかりくたびれ果てていた。
青く光る東の空から突き刺す朝日が目に染みる。交通規制の影響で誰もいない高速道路の路側帯に立ち、大欠伸をした松田の隣で、萩原が忍び笑いを漏らした。
「おねむか? 陣平ちゃん」
「うるせぇな……犯人引き渡したしもういいだろ、帰らせろっての」
「まぁそろそろ交代の連中が来るっしょ。せっかくだからカフェでモーニングでもしてから帰ろうぜ」
言いながら、萩原はゆったりとした動作でタバコを取り出し、火を点けた。松田は乾燥した目を何度か瞬き、その唇を何となく眺める。タバコを咥え、息を吸い、微かに開いて紫煙を吐き出す。再びタバコに吸い付く薄い表皮を、舐めたい、と思っていると、不意にその線が弧を描いた。
タバコを離し、空いた隙間から低く掠れた声がする。
「見すぎ」
「減るもんじゃねぇだろ」
「恥ずかしいからやめろっつってんの」
「ほー?」
「こら」
からかうような声。顔を近づけると逃げられた。じっと見つめる紫色は、やはり少し眠いのか普段より目じりが下がって見える。
くすぐったそうに笑う顔を追い、さらに顔を近づけると迷うように紫色が揺れた。
「松田?」
「眠気覚まし」
「……もうちょっと我慢しろよ」
「メシ食いに行くんだろ」
「……そのくらい我慢しろよ」
「嫌だ」
我ながらガキっぽい声が出た。馴染んだ匂いがする。もう少し追い詰めれば触れられる。だが松田は、その最後の距離を自分で詰めるつもりはなかった。夜明けの空気が徐々に薄れ、昇る太陽が二人の影を短く変えていく。
瞬きをしたと同時に空気が揺れて、馴染んだ温度が柔らかく触れた。
目を開けた時にはもう離れていったそれを目で追い、なぜか余計に恋しく思う。
「おかわり」
「だーめ。帰ってからな」
「ケチくせえ……」
「お前な」
文句を言うと呆れ顔をされた。まあいい。貰えないなら仕方がない。松田は油断しきっている男の顎を掴み、固定し、驚きに緩んだ唇を勝手に奪って舐め上げた。
すぐに強めに胸を押されて引きはがされる。思ったより強い剣幕で怒られた。
「っ、松田!!」
「減るもんじゃねぇだろ」
「減るっての!」
「何が」
純粋に疑問で尋ねた松田に、萩原は表情を変えて意味ありげな顔をした。人差し指を立てて唇に当て、わざとらしく言う。
「帰ってからの『お楽しみ』が」
「…………やっぱ朝メシ抜きにして帰ろうぜ」
「それはなし」
提案は即答で却下され、しかしそれはそれで仕方がない、と。些細な譲歩をして離れた松田に萩原が安心したように顔を緩ませた。甘い。もう一回奪ってやろうかと思う。
そうして待機している二人の無線に帰宅許可の連絡が入ったのは、それから三十分後のことだった。