ドアを開けると、前から左京さんが降ってきた。
「ごめん臣、左京さん潰れちゃった」
咄嗟に片方の腕を胴に入れて抱きとめると、力なく体重がかかる。
「ど、どうしたんですか」
「いや、今日ペース早いなとは思ってたんだけど、まさか左京さんがセーブ効かないとは思わなくてさ」
左京さんの体ごしに、至さんが覗く。俺が手にしていた皿を向こうから支えてくれたおかげで、チーズ類の落下が防がれた。
「サキョウ、今日はヘケヘケネ、もう使い物にならないヨ〜」
「シトロン皿パス。俺らのブースターは任せた」
「わかったヨ、自首するネ」
軽くつまめるものを、そう思って並べたオードブルは、至さん、シトロンを介してテーブルへと運ばれた。
すでに左京さんの部屋のテーブル、ガラスの天板はグラスや一升瓶、そのほか楽しんだものの後が所狭しと並んでいた。
不安定なものがなくなって、左京さんを両腕で抱え込む。肌が触れる面積が増えると、体温の高さが目立った。
秋組の打ち上げで飲む時の左京さんは、酔って饒舌になったり、頬に赤みが差すことはあるけれど、支えが必要になるなんてことはなかった。
「左、左京さん、大丈夫ですか」
「あ……?」
左京さんは、俺の肩に頭を預けてだらりと腕を下げている。小さく呻くような声が聞こえるけれど、特段言葉にはなっていない。
このままじゃ顔色が見えないので、とりあえず手近な、ロフト下のスペースへ移すことにした。
ライトのあかりがきついだろうと、左京さんの頭をベッドスペースの下へ来るように降ろす。背中を支えてゆっくりと寝かせると、首の下のあたりに柔らかなブランケットが敷かれた。
「大丈夫そう?」
「とりあえず今は半分寝ていると思うので」
東さんのショールだった。
「左京くん、ごめんね。ちょっとからかいすぎたね」
仰向けにさせてブランケットと頭の位置を固定する。額の、軽く張り付いた前髪を指で避ける。額から頬、順に手の甲を当てる。それほど熱を持っていないようだった。
でも、首が他のところより、少し、
「おやおや」
「いや、少し首を触っただけで」
「、しみ」
「はい、」
「左京さん、水飲めますか?持ってくるので、少しでも」
「左京さん、復活しました?」
「そもそも死んでねぇ」
左京さんは、そう言うと、俺の手からペットボトルを受け取った。ゆっくりとではあるものの、重心を崩すこともなく、真っ直ぐ立ち上がり、ボトルのキャップを捻る。
「左京くん、一度寝ると早いよね、抜けるの」
「」
「イタル、あんまり飲んでないネ〜」
「俺はこれからイベントあるんで」
「今から?ずいぶん遅いね」
「海外のゲームなんですよね」
「オ〜、昼夜逆転ネ〜」
「そうなんだ、飲んでる時とそうでない時はやっぱり違うもの?」
「そうですね——」
「左京さん、今寸ででずらしましたね?」
「気持ちが無いネ〜、ダメダヨこれでは三文芝居ネ〜」
「あ?んだとてめぇら」
「ふふ、臣、大丈夫?」
「だ、大丈夫では、無、…っ、左京さん、待ってくださ、」
「うし、行きますか」
「ボクもそろそろお暇しようかな」
「アズマもおっぴろげネ?寂しいヨ〜」
「じゃあ王子様、ボクの部屋で最後の一杯はどう?」
「伏見、口あけろ」
「ね、寝てる…」
「た、」
「くそ、勃った」