つけっぱなしのテレビ画面に映っているのは、昼のワイドショー。大々的に取り上げられているのは、婚約発表をした芸能人のニュースだ。
「指輪って憧れるよねー」
怠惰に眺めながら、なんとなしに呟く。同じく暇そうにしていた小竜景光は、ニュースにも私の言葉にも興味なさげに「ふーん」と返した。
「人間の女の子はやっぱり憧れるものなんだ」
「一般的には?」
知らないけどね。そういうものなんじゃない。
そんな会話をしたなぁ。なんてことも忘れかけてきたころ。
「あげるよ」
はい、と軽いノリで小竜から手渡されたのは――指輪。シンプルなデザインながら輝きを放つそれは、私が理想としている指輪そのものだった。
ケースに入っていないし、おもちゃなんだろうけれど。最近のおもちゃはやたらとクオリティが高いらしい。
驚きの声を上げる間もなく、私を放って小竜はスタスタとどこかへ歩いて行ってしまった。
あげる、と言っていたくらいだから試着するくらい良いだろう。試しに左手の薬指に嵌めてみたところ、驚くほどピッタリだった。
光に翳すように左手を持ち上げると、一層輝きは増す。そのあまりの美しさに一欠片の疑問が。
――これ本当におもちゃ?
小竜の軽いノリにつられておもちゃだと思い込んでしまったけれど、いくらなんでもクオリティが高すぎるというかなんというか。
確かめるために指から引き抜こうとするも、抜けない。どれだけ引っ張っても全く抜ける気配がない。
さあっと血の気が引いていくのが自分でよくわかる。
どうしよう、石鹸? ハンドクリーム? 最悪、消防署に行くしかない?
落ち着けと言い聞かせながら、ひとまず小竜を探すことにした。もしかしたら、タチの悪いイタズラか何かかもしれないし。
「小竜ー!」
本丸の廊下を足早に歩きながら小竜の名を呼ぶ。本丸内は広いが、刀剣男士の耳ならどこにいても私の声を拾うことができるだろう。予想通り、小竜はすぐに「なんの用だい」と顔を覗かせた。
「なんの用じゃないよ! これ!」
そう言って左手の薬指がよく見えるよう小竜の眼前に突き出す。
「よく似合っていると思うけどねえ」
「えっ、あ、ありがとう……ってそうじゃなくて! 抜けないんだけど!?」
一体なんのイタズラのつもりだと問い詰めると、小竜はきょとんと少年のような顔をして――それから楽しげに唇を歪めた。
その笑みに胸騒ぎを覚え、再度指輪を引き抜こうとする右手に小竜の手が重ねられる。
弾かれたように顔を上げ
「ははっ! もう抜けるわけないよ」
唇の端には龍の牙が覗いていた。
薬指では相変わらず指輪が重たく煌めいていた。