蒼の魔法士
「そこ、ヒガンバナが咲いている」
「え? うん……」
 見れば、ヒガンバナがあちらこちら、群れるように咲き、近くを小さなトンボが飛んでいる。
「囃子も聞こえてきた……」
 彼の言う通り、ユウが耳を澄ますと、どこからか笛や太鼓の音が響いてくる。
「もうすぐ字綴りを始めるからだ」
 井上坂は、ユウを見てにこりと笑う。
 彼なりに不安を和らげようとしてくれているようだ。
 それを感じて、ユウの表情から緊張がほぐれ消えていく。
「『じつづり』って、どんなふうにするんだ?」
「難しいことはない。囃子に合わせて、言葉を音にして綴る」
 彼は、繋いだ手をきゅっと自身に引き寄せる。
「君は、俺が今から言うことを真似て言ってくれればいい」
 気付くと、周りは最初に通った参道の風景になっていた。
 終わりの見えぬ石畳。
 並ぶ灯籠。
 点々と群れているヒガンバナ。
 両脇を竹林が連なり、そこへ足を踏み入れた者を異世界へと誘い込むようだ。
 竹が風に揺られ、葉と葉を擦りあい、さやめく音にのせて静かに聞こえてくる囃子の音。
 幾重もの和楽器が奏でる緩やかな、そして高く響く厳かな音色に、空気が澄んでいく。
 雰囲気が、最初の頃と違っていた。
 井上坂は、すぅ……と歯を合わせて空気を口に含み、小さく、しかしはっきりと聞こえる低い声で言葉を綴る。
「人の為に有れ」
「ひ、ひとのためにあれ」
 ユウも彼に倣って言葉を続ける。
「人と共に有れ」
「……ひとと、ともにあれ」
「人と賜て有れ」
「ひととしてあれ」
「アヤカシ災禍と非ず――」
「アヤカシさいかとあらず」
「朱音の雲を褥とす」
「あかねのくもを、しとねとす」
 言葉は、紡ぐうちに囃子にのって歌へと変化していった。
 ユウの耳は、奥の方がキィンと鳴り続けるのを感じていたが、不思議と不快ではなかった。
すみません、途中ですが、一旦終了します。
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「蒼の魔法士」ただいま執筆中2021_08_18
初公開日: 2021年08月18日
最終更新日: 2021年08月18日
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コメント
「蒼の魔法士」を執筆してます。
誤字脱字、変な文字、文章多々出現するかと思いますが、ご容赦ください。
あと、考えつつなので、遅いです。
ここで綴る文章は、ワタクシめのオリジナル小説「蒼の魔法士」にて掲載予定となっております(加筆修正あり)。
どうぞよろしくお願いいたします。
小説は下記サイトより。
http://keita.obunko.com/
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