「はぁーあ……」
「どうしたんですか天導さま、そんな内臓がぜんぶすっぽ抜けそうなクソデカため息ついて」
「これ見てくださいよ12号くん……」
「これは……マルクト教団のtwitterアカウントですか。っていうかtwitterやってたんですねマルクト教団って」
「はぁーあ……私が日夜業務の傍らSNSをチェックしているというのに、教団員すらこのアカウントの存在を知らないなんて……」
「はあすいません、僕そういうのに疎いので……で、これがどうしたんですか?」
「どうしたもこうしたもありませんよ……このSNS全盛期、フォロワー数がすなわちそのアカウントの価値……否、存在意義であると言っても過言ではありません。それが組織や企業のものならなおさらです」
「はあ確かに。SNSでバズれば知名度も一気に向上するって話はけっこう聞きますもんね。で、マルクト教団のフォロワー数は……ええと……24……?」
「これは敗北なんですよ12号くん!!」
「うわあびっくりした。まあ、組織のアカウントだってことを考えるとこの数字はちょっと寂しいかもですね」
「フ……わざわざそんな優しいオブラートに包んだ物言いをしなくてもいいんですよ12号くん……要するにウチはSNS上では知られてないんです、存在してないも同じなんです……」
「天導さま泣かないで……。別にフォロワー数がすべてってわけじゃ」
「それが甘いんですよ12号くん!!」
「声、声抑えて天導さま。窓ガラスビリビリ言ってます」
「今どきSNSはインフラも同じ、そこで存在を認識されていないのならそれはすなわち我々マルクト教団の敗北を意味するッ!!」
「はあ……。でも、僕はよく知りませんけど、SNSでバズってるアカウントって、なにかこう話題になるようなことや注目されるようなことをしてるんですよね? それなら、うちには本物の神様がいるんですよ? 注目を集めるならいくらでも……」
「……」
「な、なんですかその『コイツなんにもわかってないな……』と言わんばかりの視線は……ちょっと傷つくからやめてくださいよ……」
「逆ですよ……止めてるんですよ……なんでもアリだから……歯止めが効かないから……」
「天導さま影。影が濃ゆいです。言いたいことは分かりましたからそのホラゲみたいな濃さの影あかかった顔で話すのやめてください本気で怖いです」
「天導ちゃん呼んだ?」
「呼んでません呼んでません呼んでないから帰ってくださいほんとに」
「創造維持神さま……またなにかやらかしたんですか?」
「なによう12号くんまで、なんにもしてないってば」
「それは私が瀬戸際で食い止めてるからですよ……」
「天導さま天導さま影が……影が濃ゆいです……」
「ほら天導ちゃん12号くんこわがってるじゃないの」
「誰のせいだと思ってるんですか……? あなたが面白半分に街なかに出てきたり教団内で無許可の自撮りしたりしてるのを平気でSNSに上げようとしてるのを私が日夜止めてるんでしょうが……いいかげんネットリテラシーというものをですね……」
「でも、なにかこうパンチの効いたことしないとフォロワー増えないんじゃないの?」
「う……それはそうなんですが……っていうか問題の元凶にそんな正論言われたくないんですが……」
「ほらぁ、なんか投稿もぜんぶ業務連絡みたいで無難な内容じゃない。こんなんじゃ話題にならないわよ?」
「じゃ、じゃあどうしろっていうんですか」
「そうねえ……上級くんは? あの子ならビジュアルだけで万バズ行けると思うんだけど」
「仮にも神様が『万バズ』なんて俗っぽい言葉を使うのやめてくださいね信仰が揺らぐので・っていうかそれは最初に考えましたよ。でも……」
「でも?」
「あの人そういうのめっっっちゃくちゃ嫌がるんですよね……」
「「ああー……」」
「納得してもらえたようでなによりですよ……」
「でも実際問題、フォロワー数増やしたいでしょ? 新規信者も増えるわよ?」
「その方法がわからないから悩んでるんじゃないですか……」
「そうねえ……12号くんなにか思いつく?」
「うーん、僕はこういうの疎いんで、あんまり……」
「そうだ! いい考えがあるわ!」
「120000%ロクでもないことだとわかったうえでいちおう聞きますね」
「天導ちゃん、あなたVtuberになりなさい」
「What?」
「あのこれ、ほんとにやるんですか? ほんとに?」
「なによう今さら。この日のために前口上からなにからいろいろ準備してきたんじゃないの。ステキな名前も用意してあげたんだし。それに告知動画の閲覧数もなかなかよ?」
「その告知動画の話、今初めて聞いたんですけど? なんで目ェそらすんですか?」
「やあねえ天導ちゃん、これからリスナーの皆さんに愛想を振りまかなきゃいけないっていうのにそんな怖い顔グランプリでぶっちぎりの優勝しそうな顔して。ねえ12号くん。……12号くん?」
「……」
「ああっ! 12号くんがヨウ素液垂らしたじゃがいもの断面みたいな顔色で小刻みに震えてる!? どうしたんですか12号くん!?」
「ふ……不安で……不安が押し寄せてきて……」
「何をそんなに不安がってるの? 準備は全部終わってあとは配信開始を待つだけなのに」
「でも……万が一、万が一アクシデントで顔バレとかしたらと思うと……」
「そのときは……」
「そ、そのときは……?」
「死……」
「「死!!!???」」
「なーんて冗談よ冗談。まあ何かあっても神様パワーでなんとでもなるわよ」
「そんなテキトーな……」
「ほらほら天導ちゃん、始まるわよ。準備して!」
「ああもうこうなったら神経塔から飛び降りる気持ちでやったりますよ……!」
「おお、天導さまが燃えている……。ところで、天導さまのVtuberとしての名前ってなんなんです?」
「ふふふ、見てればわかるわよ」
『画面の向こうの迷える子羊のみんな、はじめまして! インターネットに降臨したみんなの天使こと歪曲最かわてんしちゃ……』
「天使つながりよ」
「ダメーーーーーーーーッッッ!!!!」
※お知らせ※
平素はマルクトチャンネルを御覧いただきありがとうございます。先日の配信につきまして不適切な発言があったため、当チャンネルはアカウント削除となりました。短い間でしたがご愛顧いただきありがとうございました。