オフの前日にだけ、お酒を飲むようになったキースは今日も良い感じに酔っていた。昔では見ることのなかった姿はもう両手では数えきれない程目にした姿になっている。
「ディノ~お前ももっと飲め~」
「もう、キースはそろそろ止めておかないと明日一日潰れることになるぞ?」
 顔を赤くして上機嫌な様子で、俺のグラスにお酒が注がれる。もう何杯目になるか分からないそれを口に運んでも美味しいジュースのようにしか思えない。アルコールが間違いなく入っていることは目の前の姿で一目瞭然。昔から薬といったものは効きにくい傾向があったけど、お酒にさえ強いとなると本来の楽しみが出来ないように思えるのは少し寂しくも思う。肩を落として、キースが注いでくれたお酒で喉を潤していると、お酒でどこか熱を帯びて蕩けた瞳にじぃっと見つめられていた。
「……どうかしたのか、キース?」
「ほんっと、ディノは全然酔わねぇよな。顔もいつも通りって感じだし」
「キースは真っ赤だし、なんだか緩くなってる気がするからもう終わり!」
「あっ、オレの酒が……!」
 あまり力の入っていない手の中にあったボトルは簡単に取ることが出来た。気にしていることを言われたのを誤魔化す為、というのが主な理由ではあるがどちらにせよ、飲みすぎているのは確かな事。日付が変わって暫く経っていて、呆れるような視線を向けていたジュニアとフェイスは随分と前に部屋で眠っている。扉で遮られているとはいえリビングでいつまでも飲んでいるわけにはいかないだろう。玩具を取られて悲しんでいる子供みたいな表情のキースは正直可愛いと思う。時にはちゃんと心を鬼にしなければいけないというのは分かっているから、視線から逃れるように顔を逸らした。
「……ディノぉ」
「そんな声でお願いしてきても――っ」
 まだ意識のある内にキースをちゃんとベッドへ移動してもらおう、なんて考えていると纏るような声にすぐ振り返ってしまう。しまった、と思う時にはもう既に遅くて。俺の手の中にあるグラスがキースに奪われては、まだ残っていた中身はキースが口に含んでしまう。言葉を発しながら眉間に皺が寄るのは分かったが、最後までは声にならなくて。唇にキースのそれが触れたかと思うと、開いたままの俺の口内へとアルコールと舌が入り込んできた。突然のことに目を見開くとじぃっと俺を見ているキースの瞳がすぐそばにあって。子供のようなものではなく大人の、獣のようだとも言える色をした瞳にくらりと頭の中で何かが揺れた。水音を立てながら口の中で動いているキースの熱に俺の舌も絡めとられて、口の端からは注がれたお酒が溢れていくのが分かっては全身の血が沸騰するように熱くなっていく。
「っは、やっとディノも酔えたか?」
「キースには敵わないけどね」
「オレはまだ全然酔ってねぇよ」
「……部屋、行こうよキース」
 目の前のキースは顔を真っ赤にした酔っ払いだけど、きっと俺も同じように顔を赤くしているのだと鏡を見なくても分かる。ようやく離れた熱に物足りなさを感じて、意地悪な言い方をするキースに今できる精いっぱいの力で睨んでみてもご機嫌な様子で笑みを浮かべられた。明日が一日休みだからって、羽目を外しすぎじゃないのか。そんな言葉も飲み込んでキースへと抱き着くと軽々と持ち上げられて部屋へと向かった。
カット
Latest / 59:56
カットモードOFF
文字サイズ
向き
チャットコメント通知
20210807キスディノドロライ
初公開日: 2021年08月07日
最終更新日: 2021年08月07日
ブックマーク
スキ!
コメント
第21回「キャッチボール/口移し」