完成するか疲れたら終了
まだ付き合ってない両片想いのメタフリです
────
「────ダーリン、どうしたの? ぼーっとしちゃって」
某日。忙しい仕事の合間を縫って愛しのダーリンとデートをしていたボクは、肝心のダーリンが心ここにあらずな状態になっていることに気が付いた。
この世界一の大スターであるボクを一人占めしているというのに考え事をするなど、なんという大物なのだろう。いや、実際この子は歴史の教科書に名前が残りそうなくらいの大物なんだけどね。だって史上初めての、モンスターとニンゲンの間を繋ぐ親善大使になったんだから!
地底から解放されて数か月。だけどまだまだ地上のことについて知らないことが多いボクは、今日みたいにほんの僅かな時間があれば誰かしらを誘ってあちこちへ出掛けていた。大体はブルっちをはじめとしたバンドメンバー、もしくは一番の友達であるアルフィーを連れていくことが多かったけど、今日は珍しくダーリンと予定が合ったから、この子と遊びに来たんだ。
場所はとあるホテルに併設されているカフェ。ボクが経営するMETAホテルではなく、ニンゲンが運営している老舗のホテルだ。
今後のボクのホテル運営に生かせるインスピレーションが湧いたらいいなと思ってきてみたけど、正直ちょっとガッカリしている。だって店内の壁はブラウン一色、テーブルとイスは同じ形・同じサイズのものばかりで見栄えしない。メニューもコーヒーか、お子様向けのオレンジジュースくらいしかない。もしもボクがカフェを経営するとしたら店内は蛍光色のペンキでギラギラに輝かせ、テーブルとイスはボクの箱の形に作ったりボクの色に染めたりしてもっとワクワクドキドキするような空間に仕上げるね。
……そういうわけで、ボクはちょっと退屈していたし、ダーリンもボクと同じで刺激が足りなかったのかもしれない。だけどボクが大好きなダーリンの正面に座って心をときめかせているように、ダーリンにもボクと一緒にいるこの時間を楽しんでほしかったんだ。だからぼーっとしてボクの話を聞き流しているダーリンのことは見逃せない。
「えっ……な、何でもないよ」
ぼーっとしているけどどうかしたのか、というボクの問いで我に返った様子のダーリン。慌ててそんなことはないと否定してきたけど、動揺が顔に表れている。このボクを騙そうなんて、そうはいかないよ!
「本当に?」
「ほ、本当だよ」
「……本当に?」
「ほ、本当だってば」
「……ほ・ん・と・う・に?」
「………」
問い詰めると、ダーリンは気まずそうに視線を逸らした。まったく、誤魔化すのが下手すぎる。まだ人生経験の浅い子供だからしょうがないことだけれど。
「……今日、学校でね」
ボクの圧力に負けたダーリンが観念して口を開いた。だけどやっぱり緊張しているのか、丁寧に言葉を選んで喋っている様子で、その口調はいつもに比べて軽くはない。
「友達が占いをしてくれたんだけど……」
「占い?」
「うん。その……恋占い」
『恋占い』。その単語を聞いてボクの心にも少しだけ緊張が芽生えた。
ただの占いだったらきっと聞き流していたと思う。ひたすらに努力・努力・努力でこれまでの道を切り開いてきたボクは、占いに縋るヒトの気持ちなんて全然分からなかったから(あえて言うなら、META放送の番組を見ている視聴者のラッキーアイテムはボクのグッズ、ラッキーカラーは喜びのメタトン色!)。
だけど『恋』。想い人であるダーリンの口からその話題が出ると、ボクは耳を傾けざるを得なかった。間違いなくダーリンの口から異性のタイプに関する情報が聞ける。そう確信したからだ。
「それで? ダーリンの未来のお婿さんは、一体どんなステキなヒトだったんだい?」
今すぐ身を乗り出して問い詰めたい気持ちを抑え、ボクは余裕な大人を気取る。ダーリンと違ってボクは誤魔化すのが得意だからね。
「……まず、イニシャルが『M』で」
「……へぇ」
ダーリンの口から零れ出た一音を聞いて、ボクは頬を緩ませる。だけどダーリンはまだ恥ずかしがってボクと目を合わせないから、意味ありげに笑うボクの表情には気付いていなかった。
「もう既にぼくと会ってるひとで」
「うんうん」
大丈夫、ここまでは条件を満たしている。それでもダーリンは顔が広いし、その中には名前が『M』で始まるモンスターもニンゲンもたくさんいるだろうけど、絞り込まれるのはここからだ。
「誰からも好かれる人気者で」
「……うん」
三つ目の条件。ボクはここで少しだけ首を傾げた。
ボクのことだと思えなくもない。だけどもしもこの占いが当たっていて、ダーリンの運命の相手がボクで間違いないとしたら────誰からも『好かれる』ではなく、誰からも『愛される』と表現されるはずだし、更に言えばボクは『人気者』の枠には収まらない。言うなれば……そう、『ファンが心酔している』とか『崇拝されている』とか、そういった言い方の方がしっくりくる。
「だけど好きな子のことをいじめたくなる性格だから少しだけ注意、とか」
「……」
四つ目。それを聞いたボクはとうとう押し黙ってしまった。この占いの結果、絶対にボクのことじゃない。
気持ちは分からないこともない。ボクだってダーリンの反応見たさにちょっと意地悪を言ってしまったり、微かな言葉尻を捉えてちょっといじってしまうことはある。だけど、ボクのこれは絶対にいじめじゃなくて……ちょっとからかってるだけだ。
「────ダーリン!」
長考するまでもなかった。イスを蹴りつけて立ち上がったボクに店内中の視線が集まる。ダーリンも驚き、固まっていた。────だけどそんなダーリンのリアクションなんて気にしている暇はない。一刻も早く、この子の誤った考えを正さなくてはならない!
「────そんな男、最低だから! 仮にその占いの結果にピッタリな男がいたとしても、ダーリンにはもっと良いヒトがいるから、絶対にやめておくんだよ!」
『もっと良いヒト』。もちろんボクのことだ。正確に言うとボク以上に良い男なんているわけがないし、絶対にダーリンを振り向かせてみせると決めている。けれど、ダーリンがその占いを信じてボクのことを眼中から追い出してしまう展開にさせるわけにはいかなかった。
戸惑っているダーリンに「いいね!?」と念を押す。その勢いに呑まれたダーリンは「う、うん……?」と一応は頷いてくれた。
思っていた展開とは違ったけど、とりあえずその占い結果に合致する男とは付き合わないという約束は取り付けられた。もしそんな男に靡くことがあったら「あの時約束したよね!?」と問い詰めて別れさせてやることにしよう。
ひとまず安心し、再びイスに腰を下ろすボク。話しているうちにすっかり冷えてしまったコーヒーを啜り、「ボクがカフェを作るなら、このコーヒーにたくさんのラメをまぶしてキラキラにするのに」と、思考をもしものカフェ経営に戻し始めた。
「……まさかこんなに鈍いと思わなかった」
小さく呟かれたダーリンの一言。だけどボクの耳に、その言葉はまだ届かなかった。
────
書き終えたので推敲タイムに入ります
────
推敲終わったので終了します
見守ってくださりありがとうございました!