青峰と赤司が死んだ。およそ殺しても死にそうにない男たちなのに、あっけなくある日突然死んでしまったので火神はそれらを受け止めきれずにいる。赤司は青少年を狙った通り魔に、青峰はトラックに轢かれてしまって。強豪校のエース級が二人、突然ほぼ同時期に不慮の死を遂げたことは全国区のニュースにもなって、降旗たち曰くネットでも話題になっているらしい。当然学生バスケ界でも大きな事件でそんなに交友関係が広いとは言えない火神でも様子が変だというのは感じられた。ただ誠凛高校としては他校の出来事に過ぎず火神の日常レベルでは変化は少なく、少しだけ浮き足だった雰囲気があっただけだ。ただ火神の後ろの席だけが何日も空っぽになっている。
何日も何日も長い長い雨が降り続き、その間に青峰の葬儀も赤司の葬儀も終わってしまった。二人を失った嘆きが形を取ったように晴れ間も見せず降り続く雨が木々を洗い地面を水がはける間も無いほど雨は降り続いた。葬儀に呼ばれるには死んだ二人ともとなんとも言えない距離感だった火神はそのどちらの葬儀にも参列はせずに参列した残りのキセキの世代たちと斎場の外でなんとなく待ち合わせ、言葉を交わすでもなく帰路を途中まで共にしてその背中を見送った。傘のせいで距離を取らざるを得ず、雨音で会話も難しかったのがかえってありがたかったかもしれなかった。ひとまずなんとか参列できた、という様子の半死半生の相棒に言葉をかけることもできず電車に揺られていると隣の黄瀬が口を開く。
「火神っち来てくれて助かったっス」
助かったとは何がどう助かったのか、それは聞き返していい質問なのか、困惑したように返答を躊躇った様子の火神に黄瀬がしまったなという顔をした。いつもの制服を礼服として着ているために第一ボタンまでしめてネクタイもきちんとしめた黄瀬はなんだか見慣れない。
「なんか、当時のまんまのメンツだと…おかしくなっちゃいそうじゃないスか」
おかしくなるってなんか変な言い方だな、と自分で自分の言葉尻を捕まえながら黄瀬が呟いた。様子が変という意味では火神がいようが既に変であるし
「なんか連れてかれそうじゃない?あの時のオレたち、みんなでひとつ、みたいだったから」
「赤司も青峰も人を道連れにするタイプではないのだよ」
迫力はあるが静かな声で黄瀬のさらに隣から緑間の声がした。
「連れてかれるってそういう意味じゃ……あ〜〜〜…」
唸って静かになってしまった黄瀬にも何を言っていいかわからず火神はここに紫原がいたらなにか適切な言葉が出てきただろうかと想像した。紫原は秋田への新幹線へ乗るために一番最初にわかれている。全員泣き腫らした目だったが、彼だけは少し冷静に見えた。
「僕、ここで降りるので」
その言葉と黒子が立ち上がるのと電車のドアが開くのはほぼ同時で風のように乗客の間をすり抜けていった黒子を家まで送る気でいた火神は慌てて乗客をかき分ける。残る二人にも何か言おうと振り向きざま、聞き覚えがあるような声がして火神は周囲を一瞬見回した。
「火神っち、追いかけなきゃ!」
都会の電車の慌ただしさが掴みかけた何かを押し流す。ひとまず電車の外に脱出し、中からこちらの様子を見ている二人に手をあげて、階段のはるか下を早足で降りていく黒子に目を止める。階段に踏み出す一瞬もう一度、それはあり得ないことなのだな声の主を探す。
「青峰?」
雑踏にまぎれて笑い声がした気がした。