なあ明日でかけようよ。起きられるのか。起きられるさ。
そんな会話をしたのが十二時間ほど前のことだ。俺はもちろん起きられなかったし正午を過ぎて部屋からのそのそと現れた俺を叱りつけもせずヴィンセントは洗濯物を出せとだけ言っていなくなった。いなくなったのは俺の前からだけであって家の中にはいた。洗濯機を回しに行ったらしい。ごうんごうんと音を立てる年代物の洗濯機は俺が触るといつも止まってしまう。なんだよヴィンセントにだけ媚を売りやがって。あいつが機械音痴だって家中の機械が情報共有していてそれでみんな(機械のことだ)があんただけに優しくしてくれるんだ。ずるい。
とは言え俺は自分で洗濯機を回さないので(なぜなら洗剤の量がわからないから)さしたる不都合もなく俺たちの家は問題なく素晴らしくスムーズに回っている。俺は着ていた寝間着を脱ぎ捨てて脱衣所のかごに放り投げた。ヴィンセントが空にしたかごをいっぱいにするのは悪くない気分だ。
さて正午を一時間も過ぎるとなにをして良いものやらわからなくなってしまう。一日の半分が終わっているものなとぼんやりとトーストをかじりながら考える。俺は午後になると夜まであっという間だなと思うけれどヴィンセントはそうでもないらしい。二時過ぎ頃になって出かけるぞと買い物かごを手に俺を呼びに来ることだってある。明日の飯は明日買えばいいじゃないかと言うと今日の夕飯がないんだバカと俺の鼻をつまんだりする。バカの飯を用意するのにあんたは忙しい。そうだな食べるのは俺だけど作るのはあんただ。俺はめったに作らない。卵焼きを焦がして泣きながらゴミ箱に捨てるとかひとつきに一度で十分だ。
そうこうしている内に出かける準備が出来たヴィンセントが俺を呼びに来た。俺はまだ寝間着を脱いでタンクトップとハーフパンツの姿でごろごろしていた。呆れもせずヴィンセントは俺の服をタンスから見繕って着せかえ人形みたいに俺を着替えさせた。ばっちり。ばっちりじゃないと日焼け防止の麦わら帽子を被せられた。あんたは黒い服をやめた方がいいんじゃないかと喉まで出かけたがあいにく俺の言うことなどあんたの賢い頭じゃとっくに弾き出されているのだ。白いシャツ意外と似合うな、ヴィンセント。