眠りながらあんたの手のひらを探していた。俺は夢の中でひとりだった。夢の中で。そうじゃない。俺は昔からずっとひとりだったから寂しさには慣れていた。そのはずだ。寂しくなんてないさと自分自身を偽るのが上手で母さんはそんな俺を心配していたと思う。けれどそんな心配をさせている自分が嫌で嫌で俺は本当に嫌だったから母さんの視線から目を逸してなんともないよ大丈夫寂しくなんてない俺はひとりで大丈夫だからと小さな背中を向けていた。俺が最後に母さんの手を握ったのはいつだったのか俺は覚えていなかった。
 俺の寂しい手のひらが夢の中で誰かを探している。あんたがどこにいるのかわからなくて泣いている。泣いているのは小さな俺だったかもしれない。鏡でもあれば見分けがついたかもしれないけれどあいにく俺の夢は俺の視点でしか見られないから本当はどちらの俺なのかなんてわからないんだ。
 このところ俺は泣きながら目を覚ます。起きて一番に目にするものがあんたの顔じゃなくて真っ白の枕だから。俺を包む温もりがあんたの腕でなくしわくちゃになった布団だから。俺を起こす声があんたの声でなく無機質なアラームだから。そんな些細なことで俺は泣く。泣く他に寂しさを外に出す方法を知らないから。言葉にするには俺は言葉を知らないしなにより俺自身が俺のことを知らなさすぎたから。だからそっちから探してくれだなんて欲深いことを考えてしまうんだ。俺は眠りながらあんたの手のひらを探しているけれど本当は眠る俺の手を握ってほしい。俺の夢の中にまで出てきてほしい。俺を俺の夢から救ってほしい。ひとりで悪夢を見るのはもうたくさんなんだ。そうでなければあんたがもしも俺とは別の悪夢を見ているなら教えてほしい。それがあんたの罪を暴くことになってもひとりで見るよりもずっとましだから。ヴィンセント、俺はこんなにも欲深い。
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初公開日: 2021年06月20日
最終更新日: 2021年06月20日
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ヴィンクラ