アラームが鳴るよりも前に目が覚め、体を起こして伸びをする。視界がクリアになったところでベッドから抜け出すとキースのスペースへと顔を向ける。まだキースが起きるにしては早い時間だから寝ているのは当たり前で、気持ちよさそうな寝息が聞こえてくることが不思議と嬉しくなっては顔を緩めた。
部屋から出るとまだ誰も起き出していないリビングは壁にかかっている時計の針が動く音だけが響いていた。ここで生活し始めた時にはなかったそれが一体いつからあったのかは覚えてない。誰かの、何も言わないその優しさが嬉しくて、静かな空間は苦手だというのにこの空間に一人でいるのは案外好きだったりする。顔を洗ってからキッチンでミネラルウォーターを飲んで軽い朝食を作っていると、俺たちの向かい側の部屋の扉が開いて眠たそうな顔をしたジュニアが出てきた。
「おはようジュニア」
「ディノおはよ」
「サンドイッチ作ってるけど食べるか?」
「食べる!」
一瞬で明るい表情を浮かべたジュニアが洗面台に一度向かって戻って来ると、一緒にカウンターに座って朝食をとる。朝から元気で眩しい姿に何かおすそ分けをしてもらえる気がして、楽しくて、まるで弟が出来たみたいだと思えてくる。楽しく会話を弾ませているとフェイスも起き出してきて、ジュニアと並んで食事をとることにして。二人の仲の良さにはすぐに気が付いていたけど、こう並んで会話をしているところを見るとまるで弟と兄のようにも見えた。これを口にすると多分二人から猛反発をくらうだろうし、二人の本当のお兄ちゃんからは良い顔をされなさそうだから心の内に残しておく。
「ごちそうさまでした! あー、美味しかった!」
「ピザは良かったのかよ?」
「ん? 朝のピザはトレーニングのお楽しみにしておくよ」
「まだ食べるつもりなんだな……」
「あ、ディノ。食器は俺たちが洗っておくよ。朝食を用意してくれたお礼ってことで」
「ありがとなフェイス。じゃあ俺はそろそろキースを起こしてこようかな」
何だか今日は朝から嬉しいことが沢山だな。二人の好意に甘えて食器を流し台に移動だけすると自室へと向かう。中に入ると出た時と変わらない室内にどこか呆れて、ほっとして。お構いなしにキースのスペースに入り込むと山が出来ているベッドに近づいた。
「キース、そろそろ起きろ~」
反応は何も返ってこない。まだ夢の中に居るようで、気持ちよさそうに寝ている姿が少しだけ羨ましいが心を鬼にして毛布をはぎ取って何度も名前を呼ぶ。ルーキーたちの話からするとキースの酒癖は大分マシになったようで、時々見せる二日酔いをしている姿も前ほど酷いものではなくなったという。それなのに朝起きてこないのは相変わらずだと言われるなんて甘えているように思えて仕方がない。
「おわっ、ちょっと、キース!?」
「るせ~……あと五分……」
体をゆすっても眉間に皺を寄せるだけの姿に、今度は頬を軽く叩いてみようかと伸ばした手が捉えられて、ひっぱられた。バランスを崩して倒れこんだ先はベッドの上で、キースの腕の中。至近距離で煩わしそうな表情と声が向けられてカッと全身が熱くなる。何回同じことをされてもなかなか慣れてくれなさそうな体は鼓動が早くなっていくというのに耳元で聞こえるキースの呼吸音は相変わらずでなんだか脱力してしまう。
「しょうがないなぁ……」
もう何度目になるか分からないこのやり取りを毎日期待して、温かいキースの体温に、すぐそばで聞こえてくる心地好い心臓の音を全身で感じる。朝のゆっくりとした時間も、ピザを食べる時も大好きだけどこの毎朝の五分は俺の心を満たしてくれるものになっていた。キースは俺のことを「ピザ中毒のラブアンドピース星人」なんて言うけれど、この時間を過ごすのも中毒症状みたいなものだよなと思う。甘えている姿に甘え返してるなんて恥ずかしくてキースにも、ルーキー達にも言えないけれど。
毎日少しずつ増えていく嬉しい出来事に楽しく過ごす時間に生まれてくる幸せは俺にとってかけがえのない甘い毒。これなしではもう生きていけないことが分かっているし、それがキースも感じてくれていたら嬉しいと、何度も考えては願ってしまう。キースの胸に頭を押し付けていると俺のスペースでアラームが鳴り響いた。
カット
Latest / 42:29
カットモードOFF
文字サイズ
向き
チャットコメント通知
20210605キスディノワンライ
初公開日: 2021年06月06日
最終更新日: 2021年06月06日
ブックマーク
スキ!
コメント
第14回「中毒/イタリア」
20210801キスディノドロライ
【お題:1周年/過去イベント/過去衣装/西】
みつき
FCミラーリングデイズ 下書き配信3
※アーカイブは4倍速以上の再生推奨。新作の下書き配信です。(音声なし) ただ延々とテキスト打ってるだ…
みすてー
BLEACH鬼滅二次創作 77話【連載】
BLEACH鬼滅の二次創作を書きます。77話です。 瀞霊廷突入編が無事終わり、少し肩の荷が降りたよう…
ぬー(旧名:菊の花の様に)