「そういえばこれってどこに向かってるんですか?」
「着いてからのお楽しみじゃ」
「教えてくれてもいいじゃないですか」
「こういうはサプライズが良いんじゃないのかの?」
「えぇ……」
先程の死神との邂逅から、他に誰かと遭遇する、なんてことはなかった。
それこそひと目のつかないように歩んでいる、というのもあるけど、それ以上に新たな侵入者である一護たちの存在が大きかった。
死神たちは一護たちをつかまえるために東奔西走している、という感じなのだ。
……というか一護ってこういうときにコソコソできないの普通に困るよなぁ。
そもそもオレンジ髪ってだけで目立つ要素はかなりあるのに。
「当然じゃが、一護のやつは目立っておるようじゃの」
「まぁアイツですから」
「なんだか諦めた様な口ぶりじゃの」
「別に諦めた、という感じはないんですけど」
そういうやつで、俺みたいにコソコソするようなやつではない。
それだけだ。
「今更一護に隠密教えるよりだったら、俺が協力しますって」
「なかなかお主もお人好しじゃの」
「別に俺はお人好しじゃないですって」
「そうかの? 死ぬかもしれないこんな場所に来てしまう時点で、
「うまく行っているようで良かった、という顔じゃな」
「まぁ、目的を達成するためにここに来たんで」
「それにしては一護のほうがかなりはっちゃけているように見えるが?」
「まぁ、ジジイより強い人はそうそういないので、全員倒す、位の気概なんじゃないですかね?」
隊長の強さはかなり高い。
それこそ俺が数回か挑まないと生き残れないレベルには強い。
しかし、ジジイと比べるとどうだろうか、という感じだ。
それこそ、ジジイが訓練をしたから、こうして一護は短期間ながらもいろいろな成長をしている。
「多分、いい線までは行くと思うんですよね」
「まぁ、それは結果を見てのお楽しみ、ということじゃな」
夜一さんは歩みを進める。
そろそろ、死神たちの隊舎がある地域に入る。
ここらへんはどの隊なのかは知らないが、なんでこんなところに来たのだろうか……
「ここで一つ、お主に頼み事がある」
「はぁ」
「後ろのやつを任せた」
「はぁ」
次の瞬間、夜一さんは何かを下に投げつける。
地面と接触すると、それは破裂し、モクモクと白い煙を上げていく。
煙幕。
俺がその道具について理解したときにはもう遅かった。
周囲に感じる気配。
小さな、というか消そうとした気配。
周囲を取り囲まれえている以上、避ける先は上。
視界を確保する意味合いも込めて、少し高めに跳躍する。
煙から抜け、体が浮遊感を味わったその時。
「はぁ!」
「なんだよッ?!」
思わず悪態を突きながらも、空中で体を捻って躱す。
掌底。
結構強めの打撃だったから、食らってたらダメージだったな。
適当な城壁に着地。
「まさか、姿を消したと思ったらここまで来ていたのか」
「……またか……」
「当初は例の極刑囚人のところに行くと思っていたが……まぁいい。
今ここで貴様を捉え、拷問でもすれば良い」
ばれないようにため息を吐き、状況を確認する。
周囲には前と同じ様に黒装束の人間が十数人。
俺の目の前にはそれを取りまとめる隊長が一人。
無理では?
逃げる……でも……
「今度は逃さない!」
そんなことを許してくれる感じではなさそうだなぁ……。
目の前に少女隊長。
速い。
速度と走り出しと動き出しの全部が速い。
見習いたいとは思いつつも、こんなタイミングで何を学べと?
速さでは敵わんなぁ、とは思いつつも、躱すのは間に合う。
それこそ本能で避けてる分思考というプロセスが入らないためだ。
この半分ズルのような手段で俺は基本格上でも生きてられるという感じだ。
「小癪なッ!」
掌底、足刀、殴打、足払い。
華奢な体から出るとは思えない殺意マシマシの攻撃で狙ってくる。
正直結構危ない。
数発あたってるけど、上手いこと衝撃を流しているので、特段ダメージにはならない。
「フッ!」
というか、隠密行動は上手いくせして攻撃は単調なのね。
……まぁ、普通はこうやって戦わないか。
ってか、周りの黒ずくめの人は参加しないの?
参加されて連携取られたらかなり危ういんだけど、良いの?
……なんかしてる?
戦いながら周りを確認すると、周囲に薄っすらと膜のようなものが存在しているのが見える。
結界的な?
「……何をよそ見をしている!」
「あ、はい」
拳を躱しながら、相手をしっかりと見る。
先程までは本能に赴くまま躱していた。
しかしまぁ、それだとそこそこ攻撃も食らう。
痛い。
でも、致命傷にならない攻撃だけ受けたし、攻撃を流せたしでなんとかなっている。
「貴様には本気でいかねばならないようだな……」
「あ、はい」
「その余裕そうな面、いつまでも続くと思うな!」
速くなった。
そろそろ息抜きでの反応はきついかな。
朝日が登る。
光が俺を照らす。
夜、結構暗かったから光が眩しい。
目をつぶって、一瞬。
トンッ
繰り出された拳を流す。
先程までは迂闊に流せば手にダメージを負う可能性があって避けていたけど、今はできる。
少女隊長の体制が崩れる。
よもや相手も先程までやっていない行動をいきなり取るとは、思っていなかっただろう。
ましてや、いきなり俺の|霊圧が上昇する(・・・・・・・)とは思ってなかっただろう。
「がっ?!」
がら空きの腹にブロー。
避けるしかなかったから、刀を抜いてなかった。
抜いてれば勝てたかも(慢心)
少女隊長の体が浮く。
容赦はしない。
空中に浮いている髪を掴み、地面に振り下ろす。
「グッ!?」
ちょっと酷い光景だけど、許してくれ。
「隊長!?」
「バカモノ! 結界を解くなと……」
そうそう、そういうこと。
シィィィィィ
雷の呼吸。
壱の型
霹靂一閃:無手
近場の黒装束に接近し、居合。
狙いは顎。
顎を揺らせば、頭が震える。
頭が震えれば、脳が震える。
脳が震えれば、
「あっ」
ドサッ
人は倒れる。
恐らく意識があったとしても、しばらくは使い物にならない。
これで