これより前の話しは先に以下サンプル👇をご覧ください!
https://poipiku.com/2619599/12145971.html
poipiku.com
(本当は前半もここに載せてまとめて見れるようにしたかったんですが、3万字までらしくて。。。良かったら👆先に見てきてください)(赤ブのイベントで無配を持っている方は、そちらと同じ内容です!)
◾️◾️★
蔵内達はそのまま、病室の患者達をベッドに寝かしつけ、青年――王子のベッドの横に移動する。そして改めて、彼の話を聞くことにした。
王子曰く、彼は孤児で修道院で育ったらしい。幼い頃に蔵内と共に過ごした前世の記憶を取り戻し、それ以降は『王子一彰』を名乗っているそうだ。
「もちろんこの病院も探したけれど、なかなか辿り着けなくてね……それで研究のための旅に出たところ、どうやら病を発症してしまったみたいで」
蔵内はその言葉に、一瞬顔を歪めた。顔を伏せていた王子が「でも……」と呟き、顔を上げて立ったままの蔵内を見上げる。
「おかげでこうして、ここに来れた。……君に会えた」
「っ……そうか……」
『王子』と呼びそうになって、一瞬で口を噤んだ。彼が『王子』であって良いはずがない。そんなことあってはならないと、蔵内の中の何かが彼の存在を拒絶する。
「研究のための旅って? 修道士って、修道院で修行してるんじゃないの?」
蔵内の後ろにいた犬飼が、ヒョイと顔を覗かせながらそう言った。王子は笑顔を崩さず、「一般的にはそうだね」と話す。
「ただぼくの場合は修道士ではなくて……あ、修道士だったんだけどね。今は神学校に通っていて、司祭の許可の元ある修行に出たってわけさ」
王子の説明を訝しげな顔で聞いた犬飼が、そのまま「なんの研究?」と問いかける。
「良い質問だね、スミくん」
「スミッ!?」
不意打ちの渾名に驚く犬飼を無視して、王子は意味深に、ニヤリと口角を上げた。弓のように弧を描く唇にそっと人差し指を当てる。それを蔵内は茫然と見ていた。
「それはね……対魔の浄化方法」
そう王子ははっきりと告げた。その視線の鋭さに、纏う妖しさに、聞いていた三人の空気はピリリと張り詰める。けれど王子はそれを気にすることなく、人好きのする笑顔に切り替えた。
緊張した空気の中、犬飼は質問を続ける。
「それって……おまえは祓魔師ってこと……?」
祓魔師は、吸血鬼とは敵対関係にある存在だ。各々に身構え、王子をしっかりと見た。けれど王子は、動揺することなく肩をすくめて首を横に振る。
「いや、正確には、その修行中ってことだよ。だからそう警戒しないでほしいな」
王子が薄ら笑いする中で、ふと腕を組みボソリと続ける。
「修行の内容については、そうだな……君の役にもしかしたら立てるんじゃないかって思ってるんだけど……どうかな? クラウチ」
空色の目と真っ直ぐかち合って、蔵内はたじろぐ。
「対魔の浄化が……俺に?」
「そう。だって君は……青空に、憧れていただろう?」
見上げてくる王子の目は、何でもお見通しだと言わんばかりに自信に満ち溢れていた。動じることなく、蔵内をじっと見つめ続ける。蔵内はそれに唾をごくりと飲み込んだ。背中には、冷や汗が流れる。
「お前は……どこまで、覚えているんだ」
顔を引き攣らせる蔵内とは対照的に、王子は笑顔で口を噤んだまま蔵内を見ていた。そのまま数分沈黙が流れ、はぁと観念したように蔵内が溜息を吐く。
「場所を……変えよう。少し二人で話しがしたい」
「もちろん」
顔を顰める蔵内と、嬉しそうな王子。二人の様子を見ながら、犬飼と辻は心配そうに顔を見合わせた。
病室から出た蔵内は、少し悩んで人気のない処置室に王子を案内した。ほぼ蔵内の自室と化している研究室に連れて行くのが一番安全だとは思ったが、王子の容態をまだ知らない蔵内にとって、万が一のリスクは避けたかった。ドアを閉め、丁寧に鍵も掛ける。ガチャンと音がすると、蔵内はふーっと大きく息を吐いた。ゆっくり目を開けて、目の前の王子をしっかりと捉える。否、まだ蔵内は、これを『王子』とは認めていないが。
「それで、その……おまえは本当に、『王子』……なのか?」
記憶の中で、スケッチを広げて、何度も思い出したあの顔。目の前の青年は確かに、あの時の『王子』をそのまま成長させたような風貌ではあった。けれど認めたくない。認められない。
蔵内の気も知らず、王子はにこやかに頷く。
「だからさっきからそう言っているだろう? ぼくは君の知っている、『王子一彰』だ。……君ももう少し……喜んでくれると、思ったのに」
そう言って、その日初めて王子が表情を曇らせた。王子からすれば、記憶を取り戻してからの十数年、ずっと蔵内との再会を夢見ていたのだ。記憶を頼りに、彼の力になれるかもしれない研究をして。
「違っ……!」
蔵内は思わず、顔を歪ませ王子の細い肩を強く握り締めた。幼い頃はあまり変わらなかった体格も、今では見上げるほど大きいんだと、蔵内の滲む赤い目を見つめながら王子は思う。
「俺だって.……もしそうなら、嬉しい……嬉しい、んだが……」
そう言いながら、蔵内は上げていた顔を徐々に伏せてしまう。王子が手を伸ばし、目の合わなくなったその頭をポンポンと撫でた。
「……ここには、来てほしくなかった?」
「ッ!…………あぁ、そうだ……」
隠しても無駄だと、蔵内は苦虫を噛み潰したような顔で素直に認める。王子は少し笑って、「ありがとう」と呟いた。
「……でもそんなこと言ったって君、ここから出られないだろう?」
「それは……」
「それなら」
今度は王子が、蔵内の肩を強く握った。細腕のどこにそんな力があるのかと思う強さで、伏せる蔵内の身体を無理矢理起こして顔を覗き込む。至近距離で目が合った蔵内は、百数年ぶりに見た空色に簡単に囚われてしまった。それをお見通しと言わんばかりに、王子は不敵に笑う。
「あんまり意味はないね」
その顔が、あまりにも綺麗だから。蔵内は言葉を失い、ごくりと唾を飲んだ。王子はポンと蔵内の胸を叩き、背筋を伸ばさせる。真正面から向き合い、長い睫毛を瞬かせながら上目遣いでじっと蔵内を見つめた。
「君のことだ。どうせぼくに『どこかで元気に過ごしていて欲しい』とか、そんなことを思っていたんだろう?」
「うっ……」
「まぁそれが一番だったけどね。……けど病気になったおかげで、早く君に会えた」
そう言って笑う王子の顔が、本当に嬉しそうだから、つられて蔵内も笑う。胸のつかえが少しとれたような気持ちになったけれど、すぐにあの時の後悔を思い出した。忘れてはいけない。彼を殺したのは――俺だ。笑顔が反転し、眉間に皺を寄せて目をきつく瞑る。目尻からは涙が溢れ、声を殺すように泣き、蔵内はまた顔を伏せて王子の肩口に顔を埋めた。
「っ……すまないっ……王子……」
「なんで君が謝るんだい?」
王子の腕は蔵内の背中へと回り、そっと彼を抱きしめた。よしよしと子どもをあやす様に優しく撫でる。蔵内は震えながら、自分の手も王子の背中へと伸ばし、薄いガウンをぎゅっと握り締めた。深い森の中は、いつのまにか雨模様だった。
一頻り泣き、蔵内は恥ずかしそうにおずおずと顔を上げた。じっと見つめてくる王子から目を逸らし、もごもごと話し始める。
「それで……その……覚えてるって言うのは、どこまでだ?」
「うーん、そうだね……君が……いや君達が、人間じゃないこととか?」
「……そうか」
もう想定内だった返事に、蔵内は諦念を込めて息を吐いた。それを察したように、王子は言う。
「あぁもちろん、他の人には言わないから安心して」
「それは……助かるよ」
そうは言っても、王子をこのままにしておくのは気が引ける。幻術を掛けることを考えたが、王子は前世でも耐性があり、今世は修行もしていることでより耐性も強化されていると考えるのが妥当だろう。ここで幻術を試みて、敵対と認識されるのも好ましくない。何より幻術に掛かってしまえば――蔵内との過去の思い出も、封印されてしまうかもしれない。それが嫌だった。私欲に走っているなと思わず自嘲したけれど、結局考えはまとまらない。
「……対魔の浄化方法を研究していると言っていたな? それが、どう俺に役立つと?」
王子の記憶への懸念は念頭に入れつつ、ここに来た本題について切り込むことにした。王子は少し浮かれたように目を輝かせ、「見た方が早いね!」と嬉しそうに言う。そのまま親指のリングに仕込まれていた刃物で自身の指先を迷うことなくザックリ切った。驚いて声も出ない蔵内を気にすることなく、王子はしゃがみ床に手を伸ばす。そのまま徐にガリガリと、床に魔法陣を書き出した。それにハッとした蔵内は、自分もしゃがみこみ慌てて王子の手を掴んだ。王子はその手を一瞥し、ふっと笑う。
「大丈夫。まぁ見てなよ」
こちらの心配を見透かしたように見てくる空色に、蔵内は観念してそっと手を離す。魔法陣を完成させた王子は、手をもう一度強く握り、血をその上に垂らした。部屋中に血の匂いがして、蔵内は顔を顰めて、口元を抑えた。気を抜けばすぐにでもむしゃぶりつきたくなるその匂いに、蔵内は奥歯を噛み締めながら耐えた。
やがて王子のモヤが立ち、ギギィッと嫌な音がした。王子の血を贄に、確かに小さな低級悪魔が召喚されている。
「ギッ、ギィッ……」
低級悪魔は言語を介した意思疎通はできない。王子は慣れた様子で、悪魔に宣言する。
「やぁ。ぼくの願いは、君を浄化することだよ。悪いね、呼び出しておいて」
そう言って、王子はガウンの中に隠していた十字架を取り出した。空気がピリとひりつき、魔法陣の上、悪魔を囲うように差し出された王子の手は、そのままほんのりと白く光り、辺りを覆った。蔵内は目を細め、その光の中心を追う。
「『汝に光あれ。さすれば清き御魂は、天に召されるであろう』」
聞き慣れない言葉を放つ王子の声は、何処となく優しい。王子が神の巫子に相応しい雰囲気を放つ中、手中の悪魔は酷い断末魔を上げながら分離していった。蔵内はその姿に目を凝らす。
「ギィア゛――――ッ! グゥッ! エ゛ヴァル゛ギィア゛――……」
悪魔の気配が消えたと同時に、王子が放つ光も消えていく。そして王子は顔を上げ、「ねぇ見た!?」と楽しそうに声を弾ませた。
「見……たが、一体なにが……」
「あぁそうだよね、ちゃんと説明しなきゃね」
王子はそう言いながら、足元の魔法陣を靴で掻き消す。血痕ばかりが伸びる様子に、蔵内が「すぐに雑巾を持ってくるから」とそれを止めた。
「眩しくて見えなかったかもしれないけど……今ぼくは悪魔の芯の部分と邪の部分を分離させたんだ」
「芯と邪……? 確かに二つに裂けたようには見えたが……」
初めて聞く事象に、蔵内は手を顎に当て首を捻る。王子はその様子に、嬉しそうに頷いた。
「そう。……絵にした方が早いんだけど、生憎今紙がないな……このまま床に書いたらダメかい?」
「ダメに決まってるだろ」
蔵内は王子の手を取って、切れた指先から溢れる血を一瞥する。その赤い雫にごくりと唾を飲んでから、手持ちのガーゼでそこをきつく縛った。
「飲まなくていいの?」
「馬鹿言うな」
暗がりで見えづらいが、王子の指先にはたくさんの痕が見え、蔵内は目を細める。それに気付いたのか、王子は「相変わらず心配性だなぁ」と笑った。
「……というか、昔のおまえはもっとこう……もう少し粗暴な感じがなかったか?」
蔵内の記憶の中の王子は、綺麗な顔の割に堂々とした少年だった。言葉遣いも少し荒く、一人称だって『オレ』だったはずだ。それが目の前の王子はどうだ。品があり言葉遣いも丁寧だ。一人称だって、『ぼく』と言っている。王子はそれに「そうかなぁ」と首を傾げ、ジトと睨む蔵内をかわそうとするが、すぐに諦めて「いやね」と笑う。
「それこそ……記憶の中の君が、とても上品だったから。会いに行くなら、君みたいになりたいなと思ったんだよね」
「俺みたいに……」
王子の言葉を微かな声で復唱して、蔵内は固まってしまう。だってそれは、俺もだから。あの奔放で強い姿に憧れて、少しでも王子に近付きたくて――。
「あーあ……泣き虫なのは、変わらないね」
そう言って、懐かしい青い目を細めて、王子は笑った。潤んだ視界で、蔵内はそれを見る。顔を少し下にそむけて、隠すように口元に手を添えた。王子はその様子に少しだけ手を広げて、蔵内の前に立つ。
「…………なんだ」
「抱きしめても?」
良いかな? と続く言葉を発することなく、少し上目遣いでこちらを見る王子に、蔵内は観念したように「馬鹿……」と呟いて、その胸に頭を預けた。王子は、その頭を優しくなでる。そこからはやはり陽だまりのような柔らかい香りがして、夜しか知らない彼から香るには、あまりに不釣り合いだと思った。けれど彼には、その香りが似合う。夜を統べる王などではなく、陽だまりの中で笑う彼を、王子はただ見たかった。
◾️◾️
「で、何? 結局そいつは何なわけ?」
元の部屋に戻ると、犬飼は開口一番にそう言った。その顔は少し不機嫌で、少し後ろに立つ辻が、困ったような顔で見守っている。戻ってきた蔵内からはすっかり警戒心が抜け、犬飼はそれが気に食わなかった。
「いやー、その……本当に、俺の知ってる王子みたいだ……」
「そうだよ」
相変わらずにこにこと食えない顔で笑う王子に、犬飼は蔵内の代わりにと警戒心をむき出しにしている。辻は二人を放って蔵内に尋ねる。
「王子さん……というのは、もしかして今日話してくださったあの……?」
「あぁ……俺がその…………………………助けられなかった、人だ」
殺した、の言葉が、どうしても出てこず、蔵内はぽつりとそう言った。辻はそれに目を丸くしてから、「良かったですね……!」とこの場にいる誰よりも二人の再会を祝福する。
「……なーんか会長と仲良いみたいだけど、おれの方が付き合い長いから」
「それはどうかな? ぼくなんて幼少期からクラウチを知っているからね」
「長――――い空白期間があったんでしょ? それならおれの方が全然上だね」
よく分からない小競り合いをする犬飼と王子に、蔵内は「はは……」と苦笑いを浮かべた。辻はそんな犬飼をなだめるように蔵内から剥がす。
「いや……正直、犬飼さんに勝ち目はないです」
「えぇ!? 辻󠄀ちゃんおれの味方じゃないの!?」
「辻󠄀ちゃんは物事が良く見えていてえらいね」
「ちょっと!? なんで勝手に辻󠄀ちゃん呼びしてるの!?」
放っておくと一生騒いでいそうな二人を、蔵内と辻󠄀で引き離す。深夜の病院でも職員は働いているけれど、東棟の三階は相変わらず患者が少なくシンと静かだった。
「そうだ……さっきの話……」
蔵内はふと思い出し、自身の白衣のポケットに手を入れる。綺麗な紙はなかったけれど、丸め込んだメモ書きを見つけ、それをできるかぎり伸ばした。なんとか皺皺の紙に戻ったそれを王子に渡し、先ほどの説明を求める。
◾️◾️
カット
Latest / 75:51
カットモードOFF
18:53
いさな
来てくれてありがとうございますー。初めてで勝手わからず、何かうまくいってないところがあれば教えてください!
33:25
ななし@a7e610
いさなさん!しき。です!遊びにきました!!テキストライブめっちゃすごいですね!!あのお話の続きが読めて興奮しております🥹💕 もっと眺めていたいんですが本日はここまで…😭 頑張ってください!!応援してます✨✨
34:02
いさな
しきさん!来てくれてありがとうございました!!嬉しい~~~!!!がんばって続き書きます!
チャットコメント
文字サイズ
向き
チャットコメント通知
中世吸血鬼パロ🧛サンプルの続き
初公開日: 2026年07月31日
最終更新日: 2026年08月01日
ブックマーク
スキ!
コメント
今回はいつか出したい本の進捗をテキストライブにて公開します。
告知等はX(https://x.com/isknwtr)にて行います!
途中まではサンプルで公開しているもの、その下に新規作成分が追加されているイメージです。
⚠️今回のライブ内で完成する予定はありません
【注意事項】
■吸血鬼パロ・吸血鬼の知識は雰囲気です
■名前は漢字ですが、時代は中世ヨーロッパくらいの雰囲気だと思ってください
■モブ・犬辻󠄀がガッツリ登場して話します
■Pixivに掲載している犬辻󠄀吸血鬼パロと同じ世界線です
 https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=16323041
■↑を読んでいなくても問題ないですが、辻󠄀ちゃんが元人間・元医療従事者の設定を引き継いでいます
■死ネタ・流血を含む
■その他なんでも許せる方向け
以上、ご理解いただける方のみお進みください