食堂のある一角がしんと静まりかえっていた。
ナイトレイブンカレッジは男子校だ。その男子校に唯一女子がいるのだが、その女生徒はオクタヴィネル寮の寮長の彼女なのだ。これは言わずもがな手を出したりなんかした日には、それを後悔するまでもなく、文字通り海の藻屑にされるだろう。ということで、二人がどれだけいちゃつこうがなにをしていようが見て見ぬふりしてきたが、こればかりは聞き耳を立ててしまうだろう。
「あなた、たったの10回でへばってたんじゃ先が思いやられますよ」
「だ、だって……お腹が苦しくて、身体も痛かったし……」
「それを越えてからなんですよ」
「そういうものなんですか?」
「そういうものです」
 ねぇこれなんの会話? なに聞かされてんの? 近くにいた思春期真っ只中の男子生徒は気が気ではなかったし、10回ってお前手足の数だけ楽しんだのか? などとツッコミを入れている生徒もいた。
 アズールと監督生はその後普通の会話を始めたが、その場にいた多くの生徒はその会話が忘れられなかった。しかし、当然これはそう言う類のものではない。ないのだが「今日も僕の部屋で続きをしますのでそのつもりで」というアズールのセリフに、その場にいたオクタヴィネル生は顔を見合わせて頷いたのだった。
アズールの寮部屋の前に数名の生徒が集合していた。どこから入手したのかというのは省くが、扉に聴診器を当てて中の会話に聞き耳を立てる。
 すると一人の生徒がうぉぉぉっとうめき、聞いてられないと赤ら顔で立ち去る。残されたアイテムを耳に嵌めて、立ち去った生徒の勇士に習うように耳を傾ける。
「ぁ、……はぁ。くっ……も、むり……むりだよぉ」
「無理じゃない。ほら後もう一回」
「くるし、……だめ、っ」
 また一人と脱落者が増えていく。そしてついに最後の一人となった時「騒がしいな」と小さな声で不快感を露わにしたアズールの言葉が聞こえた。なので、その場に残っていた生徒も脱兎の如く逃げ出した。床に残されたのは、使い古された聴診器だけ。
「うちの寮にも馬鹿な真似をする寮生がいたとは驚いた」
 聴診器を回収して、アズールは自室に戻ってくる。ベッドの上でぐったりとしている監督生の足を掴み「休憩終わりですよ」と声をかけると、監督生は首を横に振ってやだやだと駄々をこねていた。
 アズールは監督生の膝に顎を乗せ「後一回頑張って見てください」と言う。
 監督生はひとしきり悩んで、そしてお腹にぐっと力を入れて起き上がる。
 寮生及び複数の生徒に大いに誤解されたが、これはただの運動。しかもこれ、監督生自らがお願いしたのだ。なんでも痩せてからじゃないとそういうことをしたくないとのことで、目標体重まで落とすのを手伝ってくれと言われているのだ。なのでアズールは献身的に彼女のダイエットに協力しているだけに過ぎない。
 起き上がってきた監督生の頬をつかまえて、ちゅっとキスをする。驚いている監督生の顔にとびきりいい笑顔を向けて「ご褒美です」と顔から手を離す。
 ぱたん。と後ろに倒れこんだ監督生が、自分の顔を覆い隠し「ず、ずるいっ」となにがずるいのかいまいちわからないが、彼女的には腑に落ちないところがあったらしく、バタバタと両腕を振り回して暴れ出した。
「ほら続きしましょう? 頑張ったらちゃんとご褒美あげますから」
「いつくれるかわからないんでしょ?ずるいっ」
「よくわかりましたね」
「ほらー!」
 アズールは楽しそうにカラカラと笑って、ぐっと足を持つ手に力を込めて、膝の上に頬を乗せ「だって」と甘い声を出した。
「あなたの方がずるいんだから、これくらいの意地悪は許されたいくらいです」
 監督生はきゅっと胸をつままれたように息を詰まらせ、顔を赤くしてしまう。
「我慢くらべですね」
 アズールは意地悪な顔で、何度か目に起き上がってきた監督生にご褒美のキスをあげるのだった。
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我慢 2
初公開日: 2021年05月22日
最終更新日: 2021年05月22日
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コメント
ワンライ我慢アズ監2本目
未定
冗談が冗談に聞こえなくて喧嘩するマレ監
糸屑
30分ほど推敲作業をしてみる
初めて使ってみるので、オールキャラ二次小説の推敲作業に30分程度チャレンジしてみようと思います。ジャ…
ざぶとん
リプ来たからルクハンの顔を血濡れにする。
タイトルのまま。字数短めで行こうと思っております。
すいぶん
書く
べつにまったくえろくはない(はず)
秋海棠