フラッシュバックする。
間抜けに諦めて座り込んでいると、銃口を突きつけられる。
破裂音と同時に頭部が破壊されてパーツが飛び散っていく。
そしてハッとして目が覚める。パチパチと橙色の火の粉が舞う。
夜の焚き火の前で寝ていたようだ。炎をしばらく見つめる。
そうしていると、絶え間なくローブがたなびいているように見え、するすると気持ちも解けていく。
明日はみんなで塔へと向かう。そこには意味が有る。
塔に行けば新しい可能性が切り開けるはすだ。その夢を何度も見た。
けれど今は自信がない。最近見る夢が不吉だ。
今までにも夢を見ることはあった、大抵は予言に関するものか、記憶整理のためだった。
けれど今回は違う。私が先導する機械の子供たちが抱えている予測が夢に入り込んだ可能性もある。
だが、それも違うだろう。それなら、子供たちが自己申告してくれるはずだ。
それなりの信頼はある。どこから来た夢なのかが分からない。
「お頭!」
蜘蛛を横に重ねたような多足型の機械生命体が、ガタガタと身体を揺らしながら報告しにくる。
「何だい。蜘蛛助」
「明日の出陣についてお話がしたいと、1人の人間と、1流の半人が会いに来ています。」
「会おう。ここまで案内してくれ。」
「了解しました。」
しばらくすると、身体中が傷だらけの人間と、アンドロイドと言うには原型が無くなるほど身体増築を繰り返した大蛇が現れた。
大蛇は存在感があり、今にも食べられてしまうのではないかと空気が張り詰めた。
心配をしてきた戦闘に自信のあるクラゲ機が側にいると思っても立ち向かえる相手ではない。
「待ち給え、大蛇の君は距離を起き給え。」
そう言って、蛇のアンドロイドには距離を置いてもらう。
人間の方も一緒に後ずさり距離をとる。
「そのくらいで良いだろう。」
「さて、君たちは何の用で私たちのコロニーを訪ねて来たのかな。」
人間の方は話し始める。
「私の名前はコウキと言います。そして、彼女の名前はカグヤと言います。」
そういって自分と大蛇のようなアンドロイドを指す。
「私たちは、道中に出会ったドローンに導かれてここにやってきました。
ドローンの名前は八咫烏と言います。
八咫烏は喋ることは出来ませんが、簡単な意思疎通はカグヤがやってくれました。
八咫烏は旅の道中で私たちの危機を救ってくれました。
餓死しそうな時にはエネルギー取得方法を教えてくれたり、
餓鬼の群れを回避する道案内をしてくれました。そんな八咫烏が、私たちをここに案内したのです。」
そう話すと、大蛇の後ろから飛行音がして、三つのプロペラを持ったドローンが恐る恐る姿を表す。
「ふむ。そして君たちの目的は何なのかな。」
「目的は着けば自ずと分かると聞きました。何か、困っていることはありませんか?」
「困っていることか、、たしかにある。」
「……」
「……」
パチパチと火の粉が飛び散り、橙色の炎がたなびいている。
今まで何をして生きてきたのかも分からない彼らに、話して良いのだろうか。
大蛇のアンドロイドは明らかに他の機械の子供たちを食べて生き残っている。
人間の方はどうだろうか。人間はこの世界では珍しい。
空高く積み上げられた絶壁の向こうからやってくる。
向こうには人間たちの住む世界があると聞いた。
そして私たちがこれから目指し掴み取る領域でもある。
人間が絶壁を超えるのは好奇心か、追い出されたか、別の生命を愛したためにやってくると聞いたことがある。
この人間は大蛇との関係を見るに機械を愛したためだろうか。
どちらにせよ、人間はこの世界では無力だ。大抵が機械の子供たちか餓鬼たちに食べられてしまうのがオチだ。
それだって良いほうだ、最悪は生かされて保存食として残される。
人間は再生能力が高い有機物でできている。大口のナイフで切り刻まれても次の日には完治している。
そうなっていないのは隣りにいる大蛇が彼を守っているからだ。
その理由は分かり切っている。
「しかし、君には話すことはできないね。大蛇の保存食とは話す気はない。」
それを聞いた彼は驚いて口を開けていた。
「そんな訳無いじゃないですか。カグヤは私の仲間です。」
「しかし、私から見れば大蛇が君を守る理由が分からないね。
ソイツは今まで何体もの機械の子どもたちを食べて成長している。
君も同様に食べられるのがオチだろう。」
「……たしかに、カグヤは私とあった時に食べようとしました。
けれど、彼女は記憶に触れて目的を得て変わりました。
美しいあり方を見つけたのです。」
人間は悲しそうに訴えかけてくる。
「哀れだね君は、そうやってエネルギー源として死ねないように絞り尽くされるのがオチだよ。
カグヤ姫は君の死を置いておいて君を虜とした。
けれど、彼女は果たして君のことを思っているのだろうか。」
「信じてる。本当の宝物を共有したのだから私たちは仲間だ。」
「私にはそうは思えないね。」
パチパチと火の粉が飛んでいく。
「いいでしょう。あなたに証明して見せます。」
「」
「あなたは、この炎を見て心の安定を図っている。
普通なら、機械であるあなた達にとっては炎は避けるべき障害であるはずだ。
精密な計算を行うための脳内チップには熱は厳禁だ。
別に炎の光がなくても、視覚モジュールの調整によって夜道でも歩くことは可能だ。
それなのに、炎を炊き上げる。
理由はなぜか。それは心が安らぐからだ。
炎の揺れと共に思考は収束していき、決心をつけることができる。
だから、あなたは火の番であると共に、この機械たちのリーダーを務めることができる。」
「いいだろう。その話は興味深い。だとして、そこの彼女はなぜ君を信じていると言えるのだ。」
「それは私の存在が彼女の揺らぎになれると信じているからです。」
「それは君の感想だ。」
「事実、彼女は選択を変えている。
彼女は元々、常に身体を増大させていく欲望に身体をうねらせていた。
捕食し、身体を巨大化させる。それを何度も繰り返してきた。
それが今では増大させる欲を制御している。
機械の虫に出会っても、それを捕食し自らの一部にすることはなくなった。」
「それはなぜだ。愚かだ。何か思惑があるに違いない。」
ガラガラ、、、ガラガラ、、、ガラガラ、、、
カグヤの身体がバラバラと崩れていく。
身体につけられたモジュールは地面に叩きつけられていく。
金属片、合成プラスチック、回路、、パーツは重なり合って、整合性をなくしていく。
身体の隅から出てきた分解機械虫は、ゴキブリのように辺りへと散り、闇へと姿を消す。
ガラガラ、、、ガラガラ、、、ガラガラ、、
「何をしている。クラゲ!!!」
傍で控えていた、クラゲ機械たちがカグヤを取り囲み襲撃に備える。
そうしていると、バラバラになった金属の破片の家から一体のアンドロイドが出てくる。
身軽になったのか手を組んで伸びをしている。
「どういうことだ、、、、なぜ、命と等しい装甲を脱いだのか、、、」
「これで証明してもらえるかしら。」
そう言ってカグヤは残骸に視線を促す。
「」