「それで、おめだつはどっちから来るんだ?」
「「ん?」」
俺が後ろに下がろうとすると、巨人は問うてきた。
「どっちから、ってどういうことだ?」
「いいか? おめだつ。
都会には3つのルールがあんだ。
ひどづ、外から帰ったら手ぇ洗う。
ふだつ、落ちたもんは食わね。
みっづ、決闘する時は一人ずつ」
「あぁ、そういうことか」
俺の返事に対して、巨人は指折りながら丁寧に教えてくれる。
別にそういうことを聞きたいんじゃないんだけどな、とも思いながらも一護も納得してくれたようで、
「俺でいいよな」
「もとよりその気」
一護の言葉に頷く。
見掛け倒し、とまでは行かないがこれほどの力で一護を超えられるとは思わない。
俺は安心してみんなのもとに戻ろうとすると、
「おい! 何を一人でやらせている! 加勢せぬか?!」
「え?」
「源氏くん!」
「源氏!」
夜一さんの声とともに、チャドと織姫さんがこちらに向かって進んでくる。
焦っている様子ナノが不思議で、俺は二人の目の前に立ちふさがる。
「どうしたの源氏くん!」
「いやいや、別に加勢の必要なくね?」
「大丈夫なのか?」
「大丈夫も何も、あの程度に負けるとでも?」
織姫さんとチャドは霊圧を把握する能力に長けていないのか、一護と巨人の力の差が理解できていないらしい。
「お主、あやつは尸魂界一の豪腕、兕丹坊じゃぞ。
いくら一護が強くなったとて……」
「我妻くん」
「何? 石田くん」
夜一さんの言葉ではなく、石田くんの言葉に耳を貸す。
夜一さんあは恐らく、一護の成長を確認してないからこういう反応になると思われる。
しかしまぁ、石田くんはそこらへんを理解していると思われるので、振る。
「あの静かな霊圧は、御している、と理解しても良いのかい?」
「……見てれば理解できますよ」
「みんな」
そこに聞こえる一護の声。
おそらくは巨人……兕丹坊も気を使ってか話を待ってくれているようだ。
「待っててくれ」
「終わったが?」
タイミングよく、兕丹坊は話しかけてくる。
変なやつが多いのかと思ってたけど、死神も基本いいヤツなの……、
「あの、あの人? って死神なんですか?」
「身分としては近いものではあるが、内容としては全く違う、というのが正解よの」
「……どういうことでしょうかね」
「兕丹坊は流魂街からの出身でありながらもその豪腕から門番としての役割を与えられ、死神と同等の地位を所有している。
しかし、死神に必須な能力を持っているとは言えないからこそ、死神とは言えない」
へぇ、そうなんだと言おうとした瞬間、戦いの音が鳴り響く。
振り下ろし。
上からの振り下ろし。
重力と人間の出せる最大の威力を発揮しながら放たれるその一撃は、人の放つ技の中で最強。
しかも獲物を振るうのは尸魂界一の豪腕と言われた男。
ガァァン!
上がる土煙。
衝撃波の到来。
暫しの静寂。
晴れる視界。
「ちなみにだが、我妻くん」
「ん?」
「あれは、本当に刀なのかい?」
「あー、あれね」
見えるのは、一護の姿。
一護の持つ大きな刀……以前の刀の姿からはかけ離れた、鍔も柄もない、バカでかい包丁のような刀。
あれこそが、
「一護の始解……斬魄刀の真の姿なんだとよ」
「あれが……」
「なんという強度なんじゃ……」
一護は体に沿わせるように置いた刀を、地面から引き抜く。
一護の斬魄刀に止められている兕丹坊の斧は、ビクともしない。
それはそうだ。
「黒崎は、何をやったんだい?
この10日間」
これは俺への質問なのだろうか。
一護はこちらを見る様子はない。
俺に説明しろと言うことなのだろうか。
「……一護は、死神の力を4日と少しで取り戻した。
その後は、ひたすら戦い。
マジで、戦い」
「……もしやと思うが、相手は浦原?」
「何を言ってるんですか夜一さんー。
相手はジジイ……我妻丈に決まってるじゃないですかー」
「「我妻丈?」」
俺のセリフに夜一さんと石田くんの表情が固まる。
やっぱり他の人からしてもそういう感じの評価なのね……ジジイ。
「俺の実のじいさん。
死ぬほど強い。
マジで強い。
何回も死にそうになるレベルで強い」
一護、戦いに集中しなさい。
コクコク頷かないの。
兕丹坊さん結構しっかりめの攻撃するみたいよ?
「えっと、実のおじいさんなんだよね?」
「うん」
「……死ぬってのはどういうことなんだ?」
「いや、訓練中に斬り殺されるってこと」
「丈さんのもとで何日訓練したんだ?」
「5日」
夜一さんと石田くんの表情が更に固まる。
いや、5日程度で恐怖されると俺の3年間とかどういうリアクションするの?
「そこで丈さんから戦闘の秘訣を聞いたとか「あの人がそんな物を知っているとでも?」……うん」
「でも、それなら闇雲な訓練なのでは……」
「実際そうでした。
けど、中身はすごく充実していましたよ」
一護は唐突に斬魄刀の真の姿開放させるし、それでも糞も敵わないからブチギレてたし。
俺は俺で戦闘技術が糞も向上しないから死ぬほど切れ散らかしてたし。
「死ぬほど充実していましたよ……」
「何やら色々な意味を感じる言葉じゃの……」
俺らの会話の最中に、兕丹坊さんは振り下ろしの攻撃を何回も行う。
十連撃とか言ってんのに途中から数え間違えて11回になってるし。
でもまぁ。
「ゴメンな、その斧、折るわ」
一護の敵にはならんやろ。
響く金属音とともに、斧が見るも無残な姿になってしまった。
無体……。
武器がなくなると後がないんだよなぁ、と思いながらもまだ続きがあるのかと考える。
多分一護も同じことを考えていると思うけど……。
ブワァ
兕丹坊は折れた斧を見つめ、泣き出した。
※途中&手直しあり