松萩ワンドロワンライ
4月3日(土)22時〜23時
お題「お花見」
遅刻OK
すけべはワンクッション
#松萩ワンドロワンライ
と、いうわけでね、めちゃくちゃ遅刻しておりますが、お花見をね、してもらおうと思います。
現在時刻は4月5日の20時59分ですね。
何も考えてないんですが
まあ 地元ではもう桜散ってますし、うちの松萩もそういう感じだろう
「花見に行くぞ!!」
萩原は力強く宣言した。しとしとと雨の降る四月の昼下がりである。先週は暖かい日が続いたからと薄着でいれば、何となく肌寒くて憂鬱になる。そんな日だ。
花を愛でるにはまったく向いていない日だ。それは分かっているが、ようやく重なった休日なのだ。萩原は返事もしない恋人の背にのしかかり、猫撫で声で言い募った。
「陣平ちゃーん? 花見行こうぜー?」
「もう散ってんだろ」
「山の上ならまだ咲いてるって!」
「雨降ってんだろ」
ドライバー三本を器用に指のあいだに挟み、黙々と機械いじりに勤しむ松田の返事はつれない。確かに近場の桜はとっくに散っているし雨も降っているが、萩原は花見に行きたいのだ。どうしても。
山の上だろうが何だろうが、せっかく桜が咲いているうちに休みが重なったのだ。見られるうちに見ておくべきだと思う。それが一年に一回のことならば。
松田の首に腕を回し、耳元に唇を寄せる。睦言もかくやという声で囁いた。
「この先、何回見られるか分かったもんじゃねえだろ」
「…………」
松田の手が止まる。機動隊爆発物処理班に配属されて一年が経った。配属早々、肝が冷えるような事件に遭遇し、一歩間違えれば死んでもおかしくはなかった。そういう仕事を、松田とともに選んだことを後悔なんて微塵もしないが、代わりに覚悟は必要だと思う。
いつ死んでもおかしくないなら、その分、あらゆる時間を、季節を、光景を、ともに過ごしていたいと思う。最後になるかもしれない時間を、季節を、光景を、きちんとそのつもりで覚えておきたい。
松田が顔を上げた。ため息を吐いて、不機嫌そうな目で萩原を見た。
「桜なんて毎年勝手に咲くだろうが」
「最後に俺と花見したのいつか覚えてるか?」
「毎日巡回中に見てるだろ」
「そうじゃなくてよ」
唇を尖らせて睨むと、不意に顔が近付いた。やわらかい。愚図る子どもをあやすように、触れるだけ触れてすぐに離れた松田は、あのな、と億劫そうに言った。
「花見なんて、こんな雨の日にわざわざ二人きりで行くこたねぇだろ。晴れの日に満開の桜を、大勢で眺めて、飲んで騒いだほうが楽しいに決まってんだろ」
「それは、でも」
「お前はいつもそうしてんだろ。今年はタイミングが合わなかったけど、また来年、人を集めてそういう花見を企画しろよ」
視線が外れる。ドライバーを握り、作業を再開する。何事もなかったように雨の日の休日に戻る。
小さな声がした。
「仮に最後だとしても俺は、お前と雨の日に花見なんざしたくねぇ。する理由がねぇ」
「…………そうだな」
首に巻き付けた腕に力を込める。その気になればこのまま絞め殺せるな、なんて物騒なことをふと思う。いつ死んでもおかしくはない。誰だってそうだ。等しく。同じ季節がまた巡ってくる保障なんかない。
散ってしまった桜がどうかまた来年も咲きますように……そんな当たり前のことを願ってしまうのだ。どうしても。
鬱々とした気持ちのままじっと凭れ掛かる萩原の髪を、松田の指先がそっと撫でた。